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物語をより深くするフレームナラティブについて vol.1
今回はこちらの動画を参考にあなたの物語をより豊かにするフレームナラティブ方をご紹介します。
フレームナラティブは「お話の中のお話」
人は生まれながらにして物語を語る生き物です。
「昔々、あるところに...」という言葉で始まる昔話のように、私たちの愛するキャラクターたちの中にも物語を読み聞かせする人がいるのは自然なことでしょう。「母はいつも、人生はチョコレートの箱のようだと言っていた」というように、彼らは大きな物語の登場人物でありながら、自分自身の物語も語っていくのです。
では、このような「物語の中の物語」は、どのように機能し、なぜ私たちが思う以上に広く使われているのでしょうか。これから、フレーム・ナラティブ(枠物語)について見ていきましょう。
主な特徴は:
外側の物語が内側の物語を「フレーム(枠)」として囲んでいる。
内側の物語は通常、外側の物語の登場人物によって語らる。
の二点が挙げられます。またパターンは大きく
パターン
物語の始まりと終わりを囲む「ブックエンド」型
例:おじいさんが孫に昔話を始め(開始)、話し終わる(終了)物語内のメディアを使用する型
例:登場人物が読む本や見る映画の内容が別の物語として展開される物語全体に織り交ぜる
例:主人公の現在の行動と、過去の回想シーンを交互に描く「入れ子」型
例:「物語の中の物語の中の物語」と複雑に展開する
このような語りの形式は、文学の歴史の中でも最も古いものの一つです。
『ギルガメッシュ叙事詩』では主人公の冒険が神々に語られ、チョーサーの『カンタベリー物語』では巡礼者たちが大聖堂への道中で物語を語り合います。
それでは例としてちょっとこの古典文学を分析してみましょう。
「カンタベリー物語」
*こちらはパゾリーニが映画化した作品
あらすじ
「カンタベリー物語」は、巡礼者たちがトマス・ベケット聖人の聖堂を訪れるためにカンタベリーへ向かう旅を描いています。旅の途中で各巡礼者が物語を語るという設定が、フレーム・ナラティブ(枠物語)を構成しています。
フレーム・ナラティブの効果
文脈の提供
巡礼という大きな枠組みが、各登場人物の語る物語に背景を与えています。それぞれの物語は語り手の個性、経歴、社会的立場を反映しており、読者はその視点をより深く理解することができます。
多様な視点の探求
騎士、粉屋、女修道院長など、様々な背景を持つ巡礼者たちが登場することで、社会、道徳、人生経験について幅広い視点が提供されます。この多様性が物語に奥行きを与え、中世イングランドの生活の複雑さを浮き彫りにしています。
重層的な意味の構築
物語同士が互いに影響し合い、意味の層を作り出しています。例えば、騎士が語る騎士道ロマンスに対し、粉屋の物語は騎士道と宮廷愛の理想を皮肉る下品な喜劇となっており、対照的な視点を提示しています。
サスペンスと興味の創出
この構造により、読者は各巡礼者がどんな物語を語るのか、それが旅全体のテーマにどう関わるのかを期待しながら読み進めることができます。フレームは異なる物語に一貫性をもたらし、読者の関心を維持します。
感情的な共感の強化
巡礼者同士のやり取りと物語の語りが、感情的なつながりを生み出します。読者は彼らの個性や関係性のダイナミクスに引き込まれ、それが物語全体に深みを加えています。
真実味の確立
物語を語るという形式により、各巡礼者が自身の経験や教訓を共有することで、より個人的で現実味のある印象を与えています。これにより、物語がより親しみやすく魅力的なものになっています。
「カンタベリー物語」は、フレーム・ナラティブを効果的に用いて、人間性と社会を探求する豊かな物語の織物を紡ぎ出しています。このフレームは読者の理解と共感を深め、この物語技法の古典的な例となっています。多様な視点や重層的な意味、そして個々の物語の魅力が相まって、時代を超えて読者を引きつける作品となっているのです。
フレームナラティブは本編となる大きな物語とリンクさせると言う、かなり高度なテクニックを要しますが、反面、上手に使えばかなり効果的に映画の物語を深くしてくれます。
次回は映画での使用例などを踏まえて詳しい使用法を解説していきます。
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