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動く被写体を撮る!想定線④



この動画は人類初にして最も有名な映画の1つであるリュミエール兄弟の『列車の到着』です。

この映画がなぜここまで有名なのか?

その理由の1つに構図があります。
この一見なんの変哲も無い列車を撮っただけの動画は、
いま現在も踏襲されている完璧な列車到着の構図として知られています。

さて、長々書きましたが別に歴史の話しでも構図の話しをしたい訳ではありません。【180-degree rule】の説明の続きをしたいのです。

今回、この動画のように動いている被写体の撮影方法を解説します。

注目すべき点は前回までと違い、被写体が列車1つしか無い事です。
今まではAとBを線で結んで想定線としていましたね。

例のごとく上から見てみましょう。

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これが『列車の到着』を真上から見た図になります。
青色は列車、水色は列車の進行方向となります。

さて、どこに想定線があるか分かりますか?

実は列車の軌道が想定線となります。

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この赤い線が想定線となります。
赤の線を中心に右側にカメラを置いて撮影していきます。
赤線より右ならどの位置にカメラを置いても平気です。

では、線を超えて左にカメラを置いた場合どうなるでしょう?
当然こう見えます。

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これは単純に画像を反転させただけなので、背景の見え方は実際変わりますが列車と線路の見え方はこれと同じになります。
そうです、進行方向の見え方が変わってしまうのです。

このように被写体が1つでも想定線は現れます。
さらに、被写体が動けば、その軌跡に沿って想定線が出来上がるのです。

「列車なんか、そうそう撮らないし〜、
     撮っても1カットぐらいだし〜」
などと、なめてはいけません。これは全ての動く被写体に適応されます。

例えば、追いかけっこやカーチェイスシーン。
映画にはたくさん軌道を元に出来る想定線があります。

カーチェイスを例にとって説明していきます。

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まずはこのように単体での走行の場合。
被写体の軌道上に沿った赤線が想定線になります。
図を見て頂いてわかるように、想定線は必ずしもまっすぐとは限りません。
しかし、上から見れば分かるように、蛇行していたとしても、きっちり左右に分ける事が出来ます。

さて、今度は2台の車の場合。

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青の車の想定線は相変わらず赤色になります。
そして、軌道上の法則に則れば緑色の想定線は水色の線になってしまいます。
そう、想定線が2本出来てしまうのです。
もし、この2台の距離が離れていた場合、それぞれの想定線に則って撮影します。
しかし、2台の距離が近づいてお互いがワンショットで2台が見える距離になると法則が変化します。

こういう時どうすれば良いのかあなたはもう知っているはずです。

まずは2台の車に印をつけます。

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これを見たらピンと来る方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そう、この赤色の印を元にして想定線を引きます。

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被写体が2つになった時点で、想定線は【リバースショット】の時に使う法則に戻るのです。当然、2つの被写体は常に動きますが、赤点を常に結んで伸びた線がこの場合の想定線になるのです。ですので、カメラは常にこの線の片側から被写体を撮影する事になります。

ここで、覚えておいて欲しいのは想定線は常に存在する事。
また、想定線の引き方は【リバース・ショット】の法則と軌道上の法則の2通りがあること。そして、常にどちらで引くべきかを意識し判断するという事。

これで、想定線は完璧なはずです。

次回は応用編として想定線の超え方を解説します。

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