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俳優演出-俳優の仕事は大変

さて、前回よい俳優の定義を説明しました。

そもそも俳優演出は映画監督の仕事の中で最も難しい仕事です。

どんなに良い役者と言われていても、監督の指導が良くなければ俳優は良い演技などできません。逆に、特出すべきではない俳優でも監督の指導によっては信じられない程輝く場合もあります。

俳優演出は皆さんが思っている以上に高度で、大変難しい作業です。
皆さんが知っている様な有名監督でさえ “役者との仕事が苦手” という人もいます。

綺麗な映像を撮る為にはカメラの事を知って、技術を磨いて、経験を積みます。映像の場合は露出やシャッタスピード、フレーミング等法則に従って設定すればきちんと美しい絵が撮れます。
しかし、以前言及したように役者の感情表現は個人の経験に左右される事が多いです。それは、同じ感情が必要でも役者が違えば引き出し方が違うと云うことです。そしてその方法は誰にも分かりません。
俳優演出は実践を経験しなければ理解する事は不可能です

しかし、その経験をする前に、ある程度の知識や準備は必要です。

わたしは、現段階では “俳優としての技術” を持たない俳優とは仕事はしたくありません。皆さんもそうだと思います。しかし、常に俳優としての技術を持っている人とお仕事できるとは限りません。自主制作の現場ならなおさらだと思います。そんな時、どうするか。

それを知る為には、まず俳優がどんなに大変な仕事かということを知らなければなりません。

皆さんんは最近怒った事がありますか?

それは何時ですか?
その時、相手に対して怒りをぶつけましたか?

では、泣いたのは何時でしょうか?

誰かの前で泣きましたか?
それは泣こうと思って泣きましたか? それとも自然に涙が出てきましたか?

人間にとって、もっとも簡単な感情表現は “笑う” です。
【愛想笑い】という言葉があるように、人間は毎日と言って良い程笑っています。

それは何の為でしょうか?

そう、人間関係を円滑に進める為です。
“笑う” という行動は唯一、ネガティブな印象の無い感情表現です。
ですので "笑う" という感情表現のみ、相手を不快にする可能性の少ない行動なので人間は素直に "笑う" 事が出来ます。その為、人は "笑う" という行為でネガティブ感情を隠そうとします。

それ以外の感情はネガティブな意味を持ちます。

その為、親しくもない人の前で人は泣きもしないし、怒りもしないし、悩みも打明けません。

そう、人間は常に自分の感情を隠しながら生きているのです。

なぜか?

怖いからです。

素直な感情をぶちまけて、人間関係をダメにしたくないから。
誰かに嫌われたくないから。
感情をコントロールしないとという事は恐怖を伴う大変リスクのある行為なのです。

しかし、映画を観るとどうでしょう?
登場人物達は常に何かしらの問題にぶち当たり、感情を露にします。

よく【役者は感情をコントロールしている】と勘違いされがちですが、全くの逆です。

コントロールを外すことで感情を露にしているのです。

そう、一般の人が ”怖い“ と思っている事を映画の中で常にしているのです。

こう云うと、役者と言う仕事が、どれだけ高度で非凡な仕事か理解してもらえると思います。

そして、この高度で非凡な要求をする事が

人間にとって如何にハードな要求か認識して下さい。

そうする事で、自ずと俳優選びの第一歩が見えてくるでしょう。

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