歴史に名を残す脚本家から学べる事 vol.16 I.A.L. ダイアモンド&チャールズ・ブラケット
さて、今回紹介するのは既にでたビリー・ワールダーの掛け替えのない共同執筆者達です。重複する作品もありますが紹介します。
13.I.A.L. ダイアモンド
ビリー・ワイルダーは、彼の比類なき2本の喜劇映画『お熱いのがお好き』と『アパートの鍵貸します』を、2人目の名コンビとなる脚本家I.A.L.ダイアモンドと共同で執筆しました。同じ2人の男性が、同様に素晴らしくも全く異なる喜劇—1本目は最もスクリューボールな喜劇、2本目はおそらく映画史上最もドラマチックな喜劇—を書いたことは、ほとんど信じがたいほどです。
おそらく避けられないことでしたが、ワイルダーとダイアモンドはこの輝かしい2作品には及ばなかったものの、その後も長年にわたって共同執筆を続けました。彼らの次の大きな成功は、魅力的な作品『シャーロック・ホームズの秘密の生活』(1970年)だったと言えるでしょう。
キャラクター重視の物語作り
ダイアモンドは物語におけるキャラクターの重要性を強調しました。魅力的で共感できるキャラクターが観客を引き付けるために不可欠だと考えていました。彼の作品のキャラクターたちはしばしば道徳的ジレンマや個人的な葛藤に直面し、それが物語に深みを与えています。例えば、『アパートの鍵貸します』では、主人公C.C.バクスターが愛と野心の狭間で揺れ動く姿が描かれ、企業社会における平凡な人物の苦悩が浮き彫りにされています。
機知に富んだ対話
ダイアモンドは鋭く知的な対話で知られていました。彼は単に面白いだけでなく、キャラクターの特徴や動機も明らかにする台詞を生み出しました。『お熱いのがお好き』では、キャラクター間の軽妙なやり取りが絶妙なタイミングで展開され、映画のコメディ効果を高めています。対話は多くの場合、物語を進めると同時にキャラクターの個性を浮き彫りにするという二重の役割を果たしています。
予想外の展開
ダイアモンドはしばしば観客の予想を裏切り、ある方向に導いてから意外な展開を見せます。この手法は視聴者を引き込み、物語に奥行きを与えます。例えば、『アパートの鍵貸します』では、主人公の道徳的選択によってロマンティックな関係が複雑化し、典型的なロマンティックコメディの型を打ち破っています。
道徳性と結果のテーマ
ダイアモンドの多くの脚本は道徳性をテーマとしており、しばしばキャラクターの行動がもたらす結果を強調しています。『アパートの鍵貸します』では、バクスターの決断が重大な個人的・職業的影響をもたらし、観客に野心と愛の倫理的意味合いについて考えさせます。
監督との協力
ダイアモンドとビリー・ワイルダーの長年にわたるパートナーシップは、脚本執筆における協力の重要性を示しています。彼らの相互尊重と共有されたビジョンが、象徴的な映画を生み出すことを可能にしました。ダイアモンドがワイルダーの演出スタイルに適応する能力は、物語と演出の違和感のない融合に貢献しました。
構造への注目
多くの成功した脚本家と同様、ダイアモンドは構造の重要性を理解していました。彼は明確な起承転結を持つ物語を作り、各シーンがストーリーを前進させる目的を果たすようにしました。彼のペースとリズムへのこだわりは、映画全体を通して観客の関心を維持するのに役立ちました。
32. チャールズ・ブラケット
ビリー・ワイルダーの最初の名コンビとなる脚本家はチャールズ・ブラケットでした。ワイルダーとブラケットは『ニノチカ』(1939年)の共同脚本を手伝う中で出会い、個人的な友情はともかく、脚本家としてはほぼ即座に意気投合しました。独特な個性を持つ亡命者ワイルダーと極めて貴族的なブラケットは、性格的にはかなりかけ離れていました。
それにもかかわらず、彼らはワイルダーの初期の傑作をいくつか一緒に生み出しました。『失われた週末』(1945年)と『サンセット大通り』がその代表例です。
キャラクターの深み
ブラケットの脚本は、複雑な動機や葛藤を持つ綿密に描かれたキャラクターが特徴でした。彼は、魅力的な物語には強力なキャラクターの成長が不可欠だと考えていました。例えば、『サンセット大通り』(1950年)では、ノーマ・デズモンド役が過去の栄光にしがみつく没落したスターとして描かれ、ブラケットの多面的なキャラクター創造の才能が発揮されています。
機知に富んだ洗練された対話
ブラケットは、ユーモアと鋭い洞察を融合させた洗練された対話で知られていました。彼の文章には文学的な質が反映されており、『ニノチカ』(1939年)などの作品では、対話が知的かつ示唆に富み、キャラクター間の交流やテーマを際立たせています。
監督との協力
ブラケットとビリー・ワイルダーのパートナーシップは、彼の成功に不可欠でした。彼らの共同作業プロセスにはアイデアのブレインストーミングが含まれ、ブラケットはそれを「バラバラに引き裂かれ、批判され」てからワイルダーのビジョンに沿って再構築される概念を提案すると表現しています。この相互作用から生まれた創造的な相乗効果により、『失われた週末』(1945年)のような、依存症と再生のテーマを探求する時代を代表する作品がいくつか生み出されました。
道徳性と社会問題
ブラケットの脚本は、人間の行動の複雑さを反映して、道徳的ジレンマや社会問題にしばしば取り組みました。『失われた週末』では、主人公のアルコール依存症との闘いが、依存症が個人的関係や社会全体に与える影響についての考察となっています。
物語構造とペース配分
ブラケットは脚本における物語構造とペース配分の重要性を理解していました。彼は明確な起承転結を持つ物語を作り、各シーンが全体の流れに寄与するようにしました。彼のペース配分へのこだわりは、映画全体を通して観客の関心を維持するのに役立ちました。
アイロニーと風刺の活用
ブラケットはしばしばアイロニーと風刺を用いて社会規範や世間の期待を批評しました。『サンセット大通り』は、ハリウッドの高齢スターの扱いに対する辛辣な論評となっており、ダークユーモアと悲劇を巧みに融合させています。