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モノローグってなに?優れたモノローグを書く方法 vol.10 サブテキストを使用する

表現をより深みのあるものにするには、表面に現れることと心の中の思いの違いを表現することも必要です。

サブテキストは確かに高度な技法です。だからこそ、以下のチェックリストを参考にしてチャレンジしてみてください。

サブテキスト(隠れた意味)を使用する

  • 登場人物が話していないことも重要な場合がある

  • サブテキストを使用して、モノローグに意味と複雑さを追加する

1.サブテキストの定義と重要性

  • 定義:表面上の言葉の裏に隠された意味や意図

  • 複雑性の追加:キャラクターの深層心理や真の動機を示す

  • 緊張感の創出:表面的な言葉と真の意図のギャップが生み出す緊張感

映画『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)

この映画では、二人の主人公が東京のホテルで出会い、親密になっていきます。彼らの会話は表面的には軽いものですが、その下には孤独感や人生の迷いが隠されています。

次のような対話があります:

ボブ:「結婚して25年か。それは...飛ぶように過ぎていくよ。」
シャーロット:「そう。みんなそう言うわね。」

表面的には、ボブは自分の結婚生活について語っているだけです。
しかし、サブテキストとしては:ボブの結婚生活への不満や後悔、時間の経過に対する恐れや不安、シャーロットとの関係に対する複雑な感情、これらが隠されています。

2.言葉と行動の不一致

  • 矛盾する表現:言葉と身体言語や口調の不一致を通じてサブテキストを表現

  • 皮肉やアイロニー:表面上の意味と真の意図が異なる表現を用いる

  • 嘘や隠蔽:キャラクターが真実を隠そうとする様子を通じて深層を示唆する

3. 文脈の活用

  • 状況との対比:キャラクターの言葉と置かれた状況の不一致を利用

  • 過去の出来事との関連:過去の経験や trauma が現在の発言に影響する様子を描写

  • 他のキャラクターとの関係性:特定の人物に対する隠された感情を示唆する

映画『裏窓』(1954)

ヒッチコック監督のこの作品では、主人公ジェフが隣人を覗き見る場面が多くあります。

ジェフ:「人の生活を覗き見るのは面白いね。」
リザ:「そうね。でも、そろそろ自分の人生に目を向けるべきじゃない?」

表面的には日常会話ですが、サブテキストとしては:ジェフの自身の人生に対する不満や逃避、リザとジェフの関係の不安定さ、プライバシーと voyeurism(覗き見趣味)に関する社会的コメントが含まれています。

4.比喩と象徴の使用

  • 間接的な表現:直接的な表現を避け、比喩を通じて真意を伝える

  • 象徴的な言葉遣い:特定の言葉や表現に深い意味を持たせる

  • 反復と変奏:特定のフレーズを繰り返し、微妙に変化させることで深い意味を示唆する

5.沈黙と言葉の選択

  • 意図的な省略:重要な情報や感情を意図的に言葉にしない

  • 言い淀みや躊躇:特定の話題に触れる際の躊躇を通じて隠された感情を示す

  • 強調と回避:特定の言葉を強調したり、逆に意図的に避けたりすることでサブテキストを作る

6.感情の層

  • 表面的感情と深層感情:表現される感情の裏に隠された本当の感情を示唆する

  • 感情の抑制:強い感情を抑えようとする様子を通じて真の感情の強さを表現する

  • 感情の矛盾:相反する感情が共存する状態を描写し、キャラクターの複雑さを示す

ドラマ『ブレイキング・バッド』

主人公ウォルターが家族と夕食を食べている場面:

ウォルター:「今日は特別な日だ。みんなで乾杯しよう。」
スカイラー(妻):「何かあったの?」
ウォルター:「ただ...家族と一緒にいられることさ。」

表面的には平和な家族の団欒ですが、サブテキストとしては:ウォルターの秘密の犯罪生活、家族を失う恐れ、罪悪感と自己正当化の葛藤が隠されています。

7.社会的文脈の利用

  • 社会的タブー:直接言及できない話題を遠回しに表現する

  • 権力関係:社会的地位や権力関係によって制限される本音を示唆する

  • 文化的規範:特定の文化圏での暗黙の了解や期待を利用してサブテキストを作る

8.時間軸の操作

  • 未来への示唆:将来の展開を暗示する言葉を織り込む

  • 過去の影響:過去の出来事が現在の言動にどう影響しているかを示唆する

  • 現在の不確実性:現状に対する不安や期待を間接的に表現する

映画『卒業』(1967)

ベンジャミンとミセス・ロビンソンのホテルでの会話:

ミセス・ロビンソン:「ベン、大学で何を専攻していたの?」
ベンジャミン:「ああ、専攻は...」
ミセス・ロビンソン:「そう。で、卒業後の計画は?」
ベンジャミン:「まだ...よくわかりません。」

表面的には単純な会話ですが、サブテキストとしてはベンジャミンの将来に対する不安と混乱、年上の女性との関係における罪悪感、社会の期待と個人の欲求の間の葛藤が含まれています。ミセス・ロビンソンの質問は、単なる雑談ではなく、ベンジャミンの未熟さと彼女自身の人生の停滞を強調しています。

9.多層的な意味

  • 二重の意味:一つの表現に複数の解釈が可能な言葉を使用する

  • 階層的な理解:観客の知識レベルに応じて異なる解釈ができる表現を用いる

  • 文化的参照:特定の文化や知識を持つ人にのみ理解できる隠れた意味を含める

10.心理的深度の表現

  • 内的葛藤:キャラクターの内面での対立や迷いを間接的に表現する

  • 防衛機制:心理的な防衛反応を通じて隠された感情や思考を示唆する

  • 無意識の表出:キャラクター自身も気づいていない深層心理を垣間見せる

映画『カサブランカ』(1942)

リックとイルザの再会シーン:

イルザ:「久しぶりね、リック。」
リック:「そうだな、パリ以来だ。」
イルザ:「あの時は...」
リック:「我々には常に時間があると思っていたよ。」

表面的には過去の思い出話ですが、サブテキストとしては:二人の間の未解決の感情、戦時下での個人的な欲望と義務の葛藤、リックの苦痛と怒り、イルザの罪悪感と説明したい欲求、これらが隠されています。特に「時間」への言及は、彼らの関係の儚さと、世界情勢による影響を暗示しています。

サブテキストを効果的に使用することで、モノローグは表面的な言葉以上の深さと複雑さを持つようになります。観客や読者は、言葉の裏に隠された意味を探り、キャラクターの真の姿をより深く理解することができます。これにより、モノローグはより豊かで魅力的なものとなり、作品全体の深みを増すことができるでしょう。

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映画のメトダ
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