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歴史に名を残す脚本家から学べる事 vol.9  クエンティン・タランティーノ&ポール・シュレイダー

17. クエンティン・タランティーノ

過去30年間で映画の言語を再定義するのに最も貢献した人物は、クエンティン・タランティーノでしょう。彼の特徴的な、ポップカルチャーを引用した機知に富んだ対話は、1990年代から2000年代初頭にかけて、多くの模倣者を生み出すほどの影響力を持ちました。

タランティーノは卓越した脚本家で、特に彼の初期の2作品『レザボア・ドッグス』(1992年)『パルプ・フィクション』(1994年)でその才能が際立っています。

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タランティーノ以降、「タランティーノ的」という表現に匹敵するほどの言葉を生み出した作家や作家兼監督は非常に少ないです。この形容詞は、独自の完全な世界観と、それに見合った対話とプロット構築の技量を持つ作家を示唆するものとなりました。

非時系列な物語構造
タランティーノは脚本に非時系列的な構造を取り入れつつ、伝統的な三幕構成に挑戦しています。『パルプ・フィクション』に見られるように、彼は時間軸を入り混ぜ、観客が自ら組み立てるべき相互に関連したストーリーを提示します。このストーリーテリングへの型破りなアプローチが、彼の独特のスタイルを形成しています。

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リアルな対話
タランティーノの対話は、そのリアルさで高く評価されています。彼の登場人物たちは、常に洗練されているわけではない自然な言葉を使い、まるで実在の人物のように会話します。彼は日常で耳にした会話からインスピレーションを得て、登場人物に言葉を押し付けるのではなく、彼らに「語りかけてもらう」ようにしています。

キャラクターの境界線のぼかし
タランティーノの主人公と敵役は、しばしば明確な定義を拒みます。彼の登場人物たちは道徳的に曖昧な領域に存在し、ヒーローと悪役の境界線をぼかしています。この曖昧さと深い人間性の感覚が組み合わさり、主流の映画の枠を超えた、生き生きとした複雑なキャラクターを生み出しています。

サブテキストとサスペンス
タランティーノは対話におけるサブテキストの達人で、明示的に述べるのではなく、含意によって緊張感とサスペンスを生み出します。彼はしばしば、重要な出来事が起こりそうだと観客が感じる中で、登場人物たちに一見些細な会話をさせることで、期待感を高めます。

有機的で即興的な執筆
タランティーノは、脚本執筆に対して有機的で即興的なアプローチを取ります。思考の流れに身を任せ、アイデアが予想外の方向へ導くのを許容します。また、執筆の前に視覚的な物語を明確にイメージすることの重要性も強調しています。

文学的技法の取り入れ
タランティーノは小説からインスピレーションを得て、非時系列的な構造やモノローグなどの技法を脚本に取り入れています。各ページを文学作品の一部として扱うことで創造的自由を得て、執筆プロセス自体に集中し続けることができます。

これらの要素を巧みに組み合わせることで、タランティーノは数多くの映画製作者に影響を与え、世界中の観客を魅了し続けるユニークな脚本執筆スタイルを確立しました。

  • タランティーノは、6年間の俳優としての学びを脚本執筆に応用したと述べています。

  • 俳優のレッスンは作家にも役立つと指摘し、自分自身や経験を作品に取り入れることの重要性を強調しています。

  • 「知っていることを書け」というアドバイスは、個人的な物語だけを書くべきだという意味ではありません。むしろ、自分の人生で知った感情、経験、視点、信念を、選んだ物語に注入することが大切だと説明しています。

  • タランティーノは、自分の映画は非常に個人的なものだと語り、友人や元恋人が彼の作品を見て個人的な経験を認識することがあると述べています。

  • 脚本を現実的で真実味のあるものにするために、「真実を語れ」という内なる声に従うべきだとアドバイスしています。

18. ポール・シュレイダー

厳格なカルビン派の家庭で育ったポール・シュレイダーは、子供の頃ほとんど映画を観る機会がありませんでした。しかし、大学進学のために家を離れると、彼は映画の世界に没頭していきました。特に、彼の厳格な育ちと共鳴する作品に強く惹かれていったのです。

フランスのヌーヴェルヴァーグの多くの作家や監督たちと同じように、シュレイダーも「評論家から創作者へ」という典型的な道をたどりました。映画評論を書くことから始まり、やがて脚本家としての道を歩み始めたのです。彼の代表作として、『ヤクザ』(1974年)、『タクシードライバー』(1976年)、『レイジング・ブル』(1980年)などの脚本が挙げられます。

個人的な療法としての執筆
シュレイダーは脚本執筆を一種の療法と捉え、自身の感情や経験を処理する手段として用いています。彼が人生の激動の時期に『タクシードライバー』を執筆したことは有名で、トラビス・ビックルという人物を通じて自身の孤独感や疎外感に向き合いました。シュレイダーは作家たちに、自分自身の内なる悪魔を探求し、それを脚本に反映させることを奨励しています。個人的な問題が強力な物語のメタファーになりうると提案しています。

メタファー的フレームワーク
シュレイダーの中心的な信条の一つに、物語におけるメタファーの重要性があります。作家たちに個人的な問題を特定し、それを中心にメタファー的な物語を作り上げることを勧めています。この方法により、テーマや感情をより深く探求でき、物語に共感を呼ぶ力を与えます。例えば、ある問題が別の状況とどう関連するかを考えるのではなく、その問題の代わりに何が立っているかを考えるべきだと提案しています。

徹底的な準備
執筆を始める前に、シュレイダーはアイデアの発展に相当な時間を費やします。脚本を書く前に、アウトラインを作成し、物語を徹底的に把握する必要性を強調しています。この準備には、法律用紙に物語の展開を詳細に記し、聴衆の反応を見るために物語を口頭で発表する練習も含まれます。彼は、物語を語ることは書かれたテキストよりも口承伝統に近く、観客の反応が作品に影響を与えるスタンドアップコメディに似ていると考えています。

執筆の規律
シュレイダーは規律ある執筆スケジュールを維持し、しばしば夜遅くまで仕事をします。執筆に適した環境を作ることが重要だと考え、作家それぞれに合った習慣を見つけることを提案しています。それが深夜であっても早朝であっても構いません。また、言葉が画面上でどのように映像に変換されるかを視覚化することの重要性も指摘し、脚本が映画的な性質を持つことを確認しています。

自己認識と省察
シュレイダーの執筆プロセスにおいて、自己認識は極めて重要です。物語がどのように解釈され、観客にどのような影響を与えるかを理解することの重要性を強調しています。この省察的な実践は、物語が明確な主張を持ち、観客の心に響くことを確実にするのに役立ちます。

シュレイダーの手法は、個人的な省察、メタファー的な物語作り、徹底的な準備、そして規律ある取り組みを組み合わせたものであり、その結果、深く個人的でありながら普遍的に共感できる脚本が生まれるのです。

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