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犯罪学者が分析する映画の中の連続殺人者:物語と現実の境界線 vol.4

コピーキャット(1995)

この映画は、他の連続殺人犯の手法をコピーする連続殺人犯を描いています。犯罪学者は、作品をお気に入りだと述べている。それば自身が語ったような連続殺人犯に関する正確な情報が作品の中で提供されているからである。しかし、誇張された部分もある。例えばFBIによると米国においてアクティブな連続殺人犯は25〜50人と言われている。この正確な情報から登場人物は彼らが常に大量の犠牲者を出しているかのように伝えているが、連続殺人犯の犠牲者は米国の犯罪被害者の1%である。また、連続殺人犯が殺人を犯した後の心理も的確に述べていると。しかし、物語の殺人犯の描写はイマイチの様です。
評価:★★★☆☆

もう一歩解説

有名殺人者の模倣
「コピーキャット」の模倣犯は、悪名高い連続殺人犯の手法を特に模倣し、その模倣を通じて名声や悪名を求めます。これは多くの実際の連続殺人犯と対照的で、実際の殺人犯は通常、名声のために他人を模倣するのではなく、権力、性的満足、心理的強迫観念などの個人的な理由で殺人を行います。

メディアの影響
模倣犯の概念は、しばしば過去の犯罪に関するセンセーショナルなメディア報道と結びつけられ、そのような報道への接触が模倣を促す可能性が示唆されます。メディアの影響が実際のケースで役割を果たすこともありますが、すべての連続殺人犯がメディアの描写や公衆の注目に動機づけられているわけではありません。多くは、そのような影響とは無関係に行動します。

既存の暴力的傾向
「コピーキャット」では、キャラクターは既に暴力的傾向を持っており、連続殺人のメディア表現によってさらに影響を受ける人物として描かれています。実際の模倣犯は、その行為を犯す前に暴力や犯罪行為の履歴を持っていることが多いですが、大多数の連続殺人犯は必ずしも過去の殺人に直接影響を受けるというこのモデルに当てはまるわけではありません。

実際の殺人者の複雑さ
 実際の連続殺人犯は、しばしば心理的問題、動機、背景の範囲が広いです。彼らは、物語の目的のために複雑さを単純化することがある虚構の描写に見られるような、明確な動機や哲学的正当化を持っているわけではないかもしれません。

様式化された殺人
「コピーキャット」の殺人は、映画の物語とテーマの目的を反映して、しばしば様式化され劇的に演出されています。実際の連続殺人犯は特定の方法や特徴を持つかもしれませんが、彼らの行動は通常、特定の物語を作り出したいという欲求よりも、即座の衝動に駆られてより混沌としており、それほど計画的ではありません。

名声への焦点
 映画の模倣犯の行動は、名声を得ることに強く焦点を当てており、しばしば法執行機関やメディアを挑発します。実際の殺人者の中には認知を求める者もいますが、多くは秘密裏に行動し、自身に注目を集めることを避けるため、名声の追求はそれほど一般的な動機ではありません。

「コピーキャット」のような映画における模倣犯の概念は実際の現象に基づいていますが、その描写は劇的な目的のためにしばしば誇張され単純化されています。虚構の模倣犯の動機、心理プロファイル、手法は、実際の連続殺人犯の複雑さや現実とは大きく異なります。実際の殺人者は、映画で描かれるような方法でメディアに影響されたり、模倣に動機づけられたりしないかもしれません。

マインドハンター(2017-2019)

このテレビ番組は、FBIの行動科学部門のフィクション化された物語を描いています。犯罪学者は、連続殺人犯を正確に描写していることを称賛しています。ここで犯罪学者は全ての連続殺人者の唯一の共通点は根底に性的ファンタジーを秘めているということ。そして、この作品は犯罪ときに者側だけではなく、それらを聴者する側をも正確に描写しているとのこと。

評価:★★★★★

もう一歩解説

知性と操作
「マインドハンター」では、ケンパーは非常に頭が良く、口も達者な人物として描かれており、これは彼の実際の姿(IQ145)とも一致しています。彼は自分の知性を使って周りの人々、特に彼にインタビューするFBI捜査官を操ろうとします。多くの実際の連続殺人犯も知的ですが、ケンパーのキャラクターは、その狡猾さと心理的な駆け引きをする能力が強調されており、これは他の殺人者ほど顕著ではないかもしれません。

虚無主義と無関心
ケンパーは、自分の行動に対して背筋が凍るような無関心さを示し、誇らしげに、かつ平然と自分の殺人について語ります。この描写は彼の怖さを強調し、彼の犯罪についてほとんど哲学的に見えるようにしています。実際には、確かにケンパーは後悔の念を示さなかったものの、彼の虚無主義の深さは劇的効果のために誇張されているかもしれません。

幼少期のトラウマ
ドラマは、ケンパーが殺人者になった重要な要因として、母親との虐待関係を含む彼の問題のある育ちを探っています。この側面は彼の実際の人生とも一致していますが、ドラマではこれらの要素を物語に合わせて脚色または単純化している可能性があります。実際の連続殺人犯はしばしば複雑な背景を持っていますが、全てがケンパーと同じレベルの家族の問題を抱えているわけではありません。

死体愛好症への注目
ケンパーの死体愛好行為は、ドラマと実際の犯罪の両方で中心的なテーマです。しかし、これらの行為の生々しい性質は、物語のスタイルに合わせてドラマでは往々にして控えめに表現されています。実際には、彼の死体愛好行為の程度と性質は、画面上で完全に伝えられるよりもさらにショッキングで異常なものでした。

情報提供者としての役割
「マインドハンター」では、ケンパーはFBI捜査官たちに他の殺人者の心を理解するための洞察を提供する情報源として描かれています。この側面はある程度脚色されています。彼が確かに貴重な情報を提供したものの、彼の協力の程度とFBIのプロファイリング技術への影響は、物語の目的のために誇張されているかもしれません。

インタビューの描写
ドラマで描かれるインタビューは脚色され様式化されており、ケンパーと捜査官たちの間の心理的な緊張感に焦点を当てています。実際にインタビューは行われましたが、ドラマはより魅力的な物語を作り出すために劇的な要素を強調し、実際の犯罪プロファイリングに関わる複雑さを過度に単純化している可能性があります。

さて、皆さんは幾つの作品を見たことがありますか?リサーチをもとにした正確な描写は物語にリアリティーを与え、物語に素晴らしい心理効果をもたらします。しかし、映画を名作として作り上げるには創造の要素も必要になってきます。これらの配分は作者であるあなたの作品のユニークさにも繋がります。今回は連続殺人者に焦点を当てた物でしたが、医者、教師、アルバイト店員、さまざまな人たちのリアリティーがあり、そこには物語を魅力的にするための創造のエッセンスを加えて完成させていきます。
ぜひ、今回の記事を参考に自分の作品の参考にしてみてください。

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映画のメトダ
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