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俳優演出-日本人はハンデを背負っている?①

【俳優の定義】

俳優になりたいと思ったらどうしますか?

オーディションを受ける?
俳優養成学校に入る??
劇団に所属する????

では次の質問です。

じゃあ、どんなオーディションを受ける?
どの俳優養成学校に入る??
どの劇団に所属する?????

正直、私には分かりません。
そう、明確な指針がない、それが日本の現状です。

そもそも、俳優とは何なのでしょうか?

ポーランドを含む欧米では明確な基準があります。
それは“高等教育機関を卒業していること”です。
これが俳優になる為の基本条件なのです。

もちろん子役は例外ですが(それでも、成長過程で俳優、ドラマスクール等に通う人は多いです)、そもそも俳優養成学校が国立または大学などの高等教育機関の一部として存在しています。

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ポーランドならば国立ウッチ映画大学俳優科を始め、ワルシャワ、クラクフと国立の俳優学校があります。イギリスならば王立演劇学校やロンドン芸術大学、アメリカの大学は基本、どこでも演技が学べ単位も修得できます。ハーバード、イェール、UCLA等の有名大学のドラマスクール等は有名俳優の出身校として知っている方も多いでしょう。

その為、日本と欧米では俳優になるプロセスも全く違います。
有名無名は別にして、肩書きも卒業しているかどうかで変わります。
有名になれば”俳優“と名乗れるのは何処の国でも同じかもしれません。
しかし、無名でも俳優(Actor)と名乗れるのは上記の“高等教育機関を卒業している者”だけです。それでも、テレビや映画に出ている人達が居ます。その人達はActor(役者)ではなくbit player(端役)と呼ばれます。

学校はあくまで効率よく、スキルを学ぶ場です。
卒業したからと言って、良い役者になれる訳ではないのは映画監督と同じ。
しかし、教育によって得る物があります。
それは『脚本の読解力』『共通言語の取得』です。
俳優学校を卒業すると言う事は、俳優である最低条件である、その能力を有している証明となります。制作側からすると、その能力を有していない人達は "会話も出来ない" と思われ、問題外となるのです。

日本では認識している人が少ないですが映画は再現芸術です。
何かを再現する為には、再現すべき事柄をより詳しく、正確に知る事が大切なのです。

その為、映画教育の基本は分析から始まります
テキストを分析し、演技を分析し、映像を分析し、編集を分析します。
その分析によって観客に伝える為の共通言語を学ぶのです。
創造性や独創性はしっかりとした分析の後に来るものです。

ポーランドの役者と話していて思う事は “ああ、この人達、頭良いんだな” と言う事です。
これは、テキストの読解がきちんと出来ている、という意味です。
読解力と演技力はまた別物なのですが、テキストを正しく読解できなければ、良い演技への可能性はありません。

この正しい読解の元に、正しい意思疎通(共通言語)が生まれます

監督が役者にするのはシーンの詳しい状況説明、そのシーンに至るバックグラウンド、役を理解できるようないくつかの "ファクト"。これらを元に、微調整し、役に必要な具体的な感情を役者が引き出せるように手伝う事です。この工程は、読解と共通言語が無ければ成立しません。

俳優も、映画監督やカメラマン、編集、音声さんと共に大変高等な能力を有する“技術職です”

だからこそ監督は“プロ”として高度な要求が出来るのです。

そういう意味においては、日本では役者も制作側もその最低基準が無いことでハンデを負っていると言えるのです。

*素晴らしい役者さんも沢山いらっしゃるのは大前提ですので、悪しからず。

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