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俳優演出【入門】:【動詞指示】②

さて、動詞指示はシナリオに沿っていくらでも細分化することができます。
シナリオに書かれた、各セリフ、動作ごとに細かく指定してつけることができます。

⚪️Aの家 玄関/午後10時頃/内
 鍵を開けてAが入って来る。手にはカップラーメの入ったコンビニの袋。
 (一刻でも早く休みたい)
 うっすら開いたキッチンの扉から灯りが漏れている。驚くA。
(状況を確認する)
 驚て静かに様子を探る。(身の安全の確保する)
B「お帰りなさい!(喜ばせる)
 キッチンの扉が開き駆け寄ってくるB。
 (A:相手を観察する)(B:歓迎する)
A「びっくりした…。(責める)
  今週は仕事で忙しいんじゃなかったの?(追求する)
B「ちょっと手が空いたから。(なだめる)
(Aの荷物を引き取り(様子を伺う)、キッチンに戻りながら(かわす))どうせ、あなた、忙しさにかまけてロクな物食べてないんじゃないのかと思って、(喜ばそうとする)作りに来ちゃった。(戯ける)
⭐️
(謝罪する)A靴を脱いで、Bの後についてキッチンへと向かう。(感謝を伝えたい)

さて、このように太字で書かれた状況説明の箇所以外、それぞれに【動詞指示】を与えることができます。ご覧の通り、全ての指示が "第三者に対してどう動くか” で構成されています。
ここでは、例のために適当に動詞指示を付け加えたのですが、付け加えた後にも、【本当にこの指示で役者が動けるか?】【オブジェクトやスーパオブジェクトに沿ったものか?】などを考察していきます。
もし、どこかしっくりいかない部分が出てくれば、それは指示に問題があるか、シナリオ自体に問題があることになります。 その都度、修正しましょう。

また、これらの作業は監督の仕事として必須ですが、役者にとってこの指示が全てが必要かは別です。
役者の様子を見ながら情報量を調節しいきましょう。

本来、映画の撮影はこのような流れで俳優演出を行います。

①リハーサルで画角も含めたテクニカル、演技の方向性の確認。
②コレクト作業(演技を完璧に持っていくための修正作業)

詳細な動詞指示はこのコレクト作業といわれるもので必要になってきます。
コレクト作業は場合によって何度も繰り返されます。
これがテイクになっていきます。

これらの撮影の詳しい流れば後ほど解説するとして、動詞指示に話を戻しましょう。

この動詞指示、実は訓練しないと相当難しいです。
かくゆう私も、未だに手探りしながら訓練している最中です。
動詞指示は常に有効な訳ではありません。しかし、正しい指示を与えさえすれば俳優に対して有効な手段の一つであることは確かです。

また、日本語は曖昧を主とする言語ですから、まず初めに、どの動詞が第三者に対して明確な意思、又は行動を示す言葉であるか認識を持つ必要があります。
いろいろな動詞を思い浮かべながら
①動作動詞(立ち上がる、振り返る、ため息をつく等)
②自己完結型動詞(考える、悲しむ等)
③対外的動詞(動詞指示となりえる動詞)
と分けて行ってみてください。

皆さんの考えるヒントとして、ここに動詞指示の一例を箇条書きにして記しておきます。
参考にしてみてください。

避難する  恥をかかせる  しかる  戒める   いじめる  脅す  強要する  破滅させる 気を重くさせる  警告する  みくびる  
湿っぽくさせる 抗議する  試す  命令する  教える  
ハッタリをかます  懇願する 納得させる  説得する  丸め込む  うまく操る  不平を言う  すねる けしかける  怒らせる  
ほのめかす  覗き見る  分析する  診断する 勇気付ける  
栄誉を与える  評価する  断言する  お世辞を言う  
挨拶を言う  降伏する  治療する  救う  打ち明ける  任せる
愛撫する  手をつなぐ  甘やかす  守る  はねつける 駆り立てる
大目に見る  自己弁護する  真価を認める  うるさく言う  
嫌味を言う 誘惑する  せがむ  服を脱がせる  セックスをする  追憶に耽る  夢見る

ここで【服を脱がせる、セックスをする】等の動詞が出てきますが、これはオブジェクティブ指示ですね。それを目的としてシーンを演じていきます。このようにオブジェクティブ指示と動詞指示は表裏一体。

また、一見、自己完結動詞に見える【真価を認める、追憶に耽る】等の動詞ですが、前者は相手に対して認めたことを表すことが重要であり、後者は指示として完結しています。

指示として完結とは、【考える】という動詞ですと結論を必要とする上に、その過程までどのように演じなければいけないのか?と、不明な点が様々出てきます。しかし、ここでの指示は明確な追憶に耽るための材料がシナリオ上に書かれております。そのため、具体的な想像を俳優は巡らすことができます。このように、動詞指示の最も大事なことは、その動詞一つで指示が完結できるか?というところにあります。
以前にも言いましたが人間は一度に一つのことしかできません。"迷いながら真意を求める”などという事はできないのです。

まだまだ、様々な動詞があります。いろいろな動詞で指示を考えてみましょう。

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