#1 テイラーの科学的管理法
こんにちは。Kazumiです。
本コラムでは経営学、特に経営管理についてそれぞれのテーマに従って書いていきます。
今回は「テイラーの科学的管理法」です。
経営学という学問をはじめて作ったのは誰でしょうか。この経営学という学問を話すにあたって欠かせないのがフレデリック=テイラーという人物です。彼は経営学という学問を作り上げ、今日の皆さんの職場なり仕事なりの基礎を作り上げました。
もちろん、経営学が確立するまでには数多くの苦労や困難、失敗がたくさんありました。それでは見ていきましょう!
テイラーの科学的管理法ができるまで①
まず、フレデリック=テイラーとはどんな人なのかを紹介しましょう。1856年に生まれ、「マネジメントという概念を確立する」という偉業を成し遂げたハーバード大卒の技師です。
しかし、テイラーより前に多くの人々が「労働者」の管理という問題に悩まされてきました。というのも、こういった問題が明確になったのは、18世紀の第一産業革命(イギリス)がきっかけです。これは1760年代ごろ、といわれています。
産業革命と社会問題の発生
具体的には、上の図に代表される彼らによって、わずか1世紀の間に急速に発展していったのです。1867年、日本では徳川慶喜将軍が大政奉還を行い、明治政府が樹立されました。そののち明治維新として19世紀初めまでに数多くの目覚ましい発展がされましたが、それらもこのような産業革命から生まれています。
しかしながら、このような目覚ましい発展とともに労働問題が数多く発生しました。簡単に言えば、経営者が裁量で労働者を酷使したり、それに怒った労働者が怠業をしたり・・・それによって多くの取引相手が頭を痛めたりしたのです。なぜでしょうか?
具体的には、写真のようなことがおきたわけです。機会があれば、チャップリンの『モダン・タイムズ』をご覧になってください(笑)
産業革命と歴史
産業革命はいくつかのものをもたらしました。
一つ目は経済社会の発展です。封建社会・重商主義を壊し、フランス革命・アメリカ独立革命などをとおして絶対王政が崩壊しました。これら革命は主に重税が発端で産業革命と因果関係はありませんが、重商主義と呼ばれるものを崩壊させるに至りました。それと相まって、商業社会から産業社会へ移っていきました。
二つ目は自由放任主義です。アダム=スミスが提唱した資本主義のメカニズムと市場経済ですが、これも産業革命以前から経済学の文脈でいくつかの研究が行われていました。これらは経営学につながっていきますが、当時は経済学の中で経営について語られていました。
三つ目は資本の急速な肥大化です。これらはやがて世界恐慌を生み出すのですが、科学的管理法の文脈で言えば「成り行き経営」が問題視されたのです。ここから科学的な管理方法が探され始めます。
経営学とは何か?
経営学って、どう定義すればいいのでしょうか?
現在だと、企業内部の改善・能率向上を狙う学問ということができます。
しかし、当時は「生産現場の改善・能率向上を狙う」学問として誕生しました。
というのも、「どのように生産現場を管理するか」が当時の課題となっていたからです。現在では「生産管理」や「人的資源管理」など、様々な領域まで広げられ複雑化していっています。
テイラーの提案
当時、経営では2つの社会問題が発生していました。
1つ目は賃率引き下げ、2つ目は組織的怠業です。同時に労働組合や労働争議が発生し経営者を悩ませていました。
当然、工場を成り立たせていくためには労働者と資本家との間で合意がされなければいけません。その合意が紛糾し、時には賄賂で有力者を買収したり、外道な方法で労働者を脅したり・・などと枚挙にいとまがありませんでした。
そこに対する解決方法としてテイラーは「基準を作ること」を提案したのです。それが科学的管理法と呼ばれるものとなります。
テイラーの科学的管理法ができるまで②
テイラーが直面した経営の問題
科学的管理法を理解するためにも、「成り行き経営」についてお話していきます。そもそも「成り行き経営」とは現場の経験や勘、あるいは習慣を優先する経営をいいます。現代の企業でも「成り行き経営」は数多くあり、思いあたったら即座に是正することを勧めます。
現在の工場でもいたるところで起きているのですが、効率が上がって作業者全体の賃金水準が上がると監督者が「高すぎた」と判断して賃率を下げる傾向にあり、それによって労働環境が崩壊しています。現在は転職なり辞めるなりして工場全体の能率がかえって悪化し、長期的には工場の方が苦しくなるため、なかなかテイラーが直面した環境には至りません。似た環境があったとすれば、日本では矢部社長が赴任する前のTESSEIのような企業くらいでしょう。
どんな問題が成り行き経営から導かれたのかといいますと、賃率の恣意的な切り下げにより、生産能率が上がると労働者の生活が行き着かなくなるため、積極的に組織的に怠けるようになり、経営者が新しい労働者を採用するとさらに能率が下がる・・という悪循環が起きたのです。
注)この積極的に組織的に怠けることを組織的怠業としましたが、実際にはニュアンスが異なります。正確には「労働組合に加入していない大多数の未熟練労働者も含めて、小さな集団である現場単位で非公式に生産に非協力的な態度をとっていた」ことを指しています。
テイラーの目の付け所
①内部請負制度による人事権、およびラインスピードの管理
②公正な賃率と公正なラインスピードの基準無し
の2点が相互の労働者の不信を招き、双方のトラブルを拡大していたとテイラーは話しています。それらが科学的管理法につながっています。
科学的管理法の中身と功績・批判
科学的管理法の中身
どんな取り組みをしたのでしょうか。細かくは上の画像を見てほしいのですが、大きく分けて5つのことに取り組みました。これらは現在の生産管理の骨格の源となっています。
科学的管理法の功績・批判
テイラーは科学的管理法で知られていますが、私たちの今日の経営に残した教訓として大切なものは3つあります。一つ目は客観的であること、二つ目は実証的であること、三つ目は経営者と労働者が協調するための「基準」づくりであることです。
ここを一つでも取り違えると科学的管理法は成り立たず、それゆえにあくまでも「科学的」でしかないのです。それゆえに、人間関係の部分についてはメイヨーらによって発展していきます。
おわりに
科学的管理法は、あくまでも基本的な合意を労働者と経営者の間でとりつけるためのものです。今日の人的資源管理では、様々な賃金制度や賃金体系、成果体系などが考え出されたり作り出されたりしていますが、あくまでも合意をつくるための「基準作り」であることに注意が必要です。
この基本的な合意の「基準」からかけ離れていくと、現在では「労働者」がいなくなっていくということを心掛けてほしいと思います。
科学的管理法は「最低限の基準作り」です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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