7月に読んだ本でよかったやつ
7月に読んだ本でよかったやつを、多少の備忘録とともに書き残しておくやつです。
宮澤伊織「裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト」
https://www.amazon.co.jp/dp/B077Q8RF2C/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_rScrDbPCSM7YJ
裏世界と呼ばれる、日常からはみ出たオカルト的な事象ばかり発生する世界を探検するお話。
前巻からストーリーもそのまま繋がっている造りのようで、いきなり収録作品の1話目が前巻であった「きさらぎ駅」のエピソードの解決編。
沖縄と……それと裏世界のビーチで浮かれて遊びまくるお話もあったけれど、楽しげにはしゃぐ大学生女二人組はかわいすぎるよなあ……。
新キャラ? として武闘派の後輩も登場したけれど、空魚のリアクションを見るに、メインキャラクターとしては鳥子と空魚の共犯者ふたりで突っ走るでしょうねこれは……
米澤穂信「いまさら翼といわれても」
https://www.amazon.co.jp/dp/4041081645/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_MUcrDbT8TM96Z
シリーズ最新刊。古典部のメンバー4人の過去や未来へと焦点を当てた短編集。
表題作「いまさら翼といわれても」は、読み終えると秀逸なタイトルだなと。
さらっと短編で描かれているけれど、登場人物たちのみならず、古典部シリーズとしての行く末を大きく左右する大事なエピソードだった。
「わたしたちの伝説の一冊」は摩耶花を取り巻く漫研のいざこざと、彼女の未来について。
泥をかぶっても自分の夢見る未来へ進む摩耶花がかっこよかった。
ミステリとして好きなのは「鏡には映らない」。奉太郎らしくないが、そのらしくなさが彼っぽくてとても良い。
村上春樹「1Q84 BOOK 2」
https://www.amazon.co.jp/dp/4103534230/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_QVcrDb1T4HHN9
今まで村上春樹さんの作品はいまいちピンとくるものが無かったのだけれど、この作品はめちゃくちゃおもしろいと思う。
青豆パートはクールながら可愛げもある青豆が可愛いのと、スリルがありハラハラさせられる展開の連続で特に気に入った。
天吾パートも『空気さなぎ』にまつわる重要な物語が動き抱きた感じで、2つの物語が巧妙に交わる様はとても楽しい。
20年前にほんの少しだけ接点を持っただけの2人。
そんな2人が、今になり互いを強く求めていくストーリーは、読んでいてかなり惹き込まれる。これはかなり続きが気になる……
時雨沢恵一「キノの旅XXII the Beautiful World」
https://www.amazon.co.jp/dp/404912520X/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_ZWcrDbC9RE1R5
キノの旅20周年となる今回も、キノとエルメスとシズと陸とティーと師匠と弟子とフォトとソウの物語が紡がれることにまず感謝を。
「取り替える国」は師匠と弟子が行き合ったひとりの女の子にまつわる物語。
救いはほとんど無いけれど、印象に強く残る物語でした。
「届ける話」は、読めば分かる通り、彼らの始まりの物語。
こちらも胸に迫るような切なさをはらんだ物語でした。
「来年の予定」はフォトが音楽フェスの撮影の仕事を請け負う話。
仕事の助手としてあてがわれた鈍くさい女性がメインとなるエピソードで、あたたかな優しいお話。
「二十年目のボク達」は作品としてはギャグなのだけれど、積み重ねてきた20年の歴史があるからこそできる重みのあるギャグ。
変わらないエルメスと、変わったキノの対比が印象的でしたね……
はらだ「ワンルームエンジェル」
https://www.amazon.co.jp/dp/4396784759/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_cYcrDbJ78GAP3
ヤカラっぽい男が、天使を拾う話。
伏線の張り方もうまいしギャグっぽい会話や台詞回しのセンスもすごいし、何より描かれる主人公2人の関係性とかがとても良かった。
紀ノ上晟一「となりの布里さんがとにかくコワい。 第1巻」
https://www.amazon.co.jp/dp/B07V1LQJB8/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_hZcrDbAJ7FY0C
近頃になって急増したヤンキー女子のラブコメの中でも、ひときわ可愛かったのでコミックスも購入。
ヤンキー女子ながら可愛いもの好きで家族想いでピュアな恋をしている布里さんがとにかくカワイイ。
まつげの長い三白眼もめちゃくちゃカワイイ。
布里さんが平を好きになる理由が、細かいキッカケとか一切合切切り捨てて、ひと目見て「コイツの顔好きだわ」なのも潔くて良い。
これは布里さんがとにかくカワイイのを堪能する漫画なのだから……。
西尾維新「掟上今日子の挑戦状」
https://www.amazon.co.jp/dp/4065165342/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_o0crDbPYDYNWS
眠ると記憶がリセットされる忘却探偵が、その機密保持能力の高さから警察に協力を仰がれて臨む難事件3本。
作品テーマも「アリバイ」「密室」「ダイイングメッセージ」と、ミステリの定番の3つを扱ったエピソードたち。
難事件を目の前にしながらも飄々とした語りで、総当たりで謎に挑む今日子さんには不思議な探偵としての魅力がある。
八奈川景晶「黒猫のおうて!」
https://www.amazon.co.jp/dp/B07VC2QB9W/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_c1crDbKKAQMPZ
偉大な先駆者の切り拓いた将棋ラノベの世界に、また新しい1作の逸品が登場した。
主人公は三段リーグを全勝で突破しながら将棋を引退した元天才棋士。
ヒロインは女流三段の実力を持ちながら男性棋士相手の対局では全敗という……猫耳ゴスロリ姿のコスプレ棋士。
将棋という勝負の世界がテーマであるため、この作品も熱い戦いや熱い言葉が登場する。
そして何よりも、「将棋が好きだ」「将棋が楽しい 」という想いが詰まっていて、それが何よりも読んでいて楽しかった。
ヒロインが猫耳ゴスロリで好意むき出しで、めちゃくちゃ可愛い。
将棋素人枠として現役JKのギャルが登場するのも良い。
登場人物が個性的で、読んでいてとても楽しいのも魅力。
もしも続きが出るなら迷わず手を出すくらいには、惹き込まれる将棋ラノベでした。
野崎まど「HELLO WORLD」
https://www.amazon.co.jp/dp/4087458865/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_t2crDbQR9S4SJ
記録の世界の中で暮らしていた内気な主人公が、未来の恋人を事故の運命から守ろうとする話。
めちゃくちゃおもしろかったです。
外の世界からやってきた、未来を知る将来の自分……という構造もおもしろいし、そこから繋がっていく流れるようなストーリーもおもしろい。
ヒロインの一行さんがなかなかクセのある女の子で、彼女と少しずつ距離を近づけていく様子は恋愛小説としてもかなりグッとくるものがあった。
恋愛パートをずっと読んでたいくらいだったけど、後半はSF要素が一気に追いすがってきてハラハラドキドキの連続。
直実とナオミの関係や、衝撃のクライマックスなど、読んでいて本当におもしろかったです。
『ああこれ! この造りこそが、野崎まどさんなんだよなあ!』
そして何より、映画を観るのが楽しみになりました! 絶対観に行きます!
八目迷「夏へのトンネル、さよならの出口」
https://www.amazon.co.jp/dp/4094518029/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_z3crDb3HETH39
ガガガ文庫の単巻作品は当たりが多いと個人的に思っているのだけれども、この作品もご多分に漏れず大当たり。
幼い頃に大切な妹を亡くした塔野カオルと、東京からやってきた孤高の転校生花城あんずが物語の主人公。
心に傷を抱えるカオルと、クールで我が強いあんずのやり取りだけでも青春小説としておもしろい。
そのうえでこの作品の核となるのが、入れば欲しいものがなんでも手に入るが、代わりに年をとってしまうというウラシマトンネル。
クライマックスでウラシマトンネルを絡めて物語が一気に進み出し、そこからは最後まで一気読み。
青春小説として、ファンタジー小説として、ひとつの作品として、綺麗にまとまった秀作。
個人的には、わがままギャルだったけどあんずにコテンパンにされて更生した川崎さんが可愛かった。