2024年2月に読んだ本まとめ

2024年2月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


中村颯希「ふつつかな悪女ではございますが7 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~」

雛宮を飛び出し、いつものメンバーや意外な組み合わせでお忍びで城下町へと降りる、日常パートのような短編集っぽいエピソード。
と言いつつも各エピソード自体はひとつの物語として繋がっているので、読み応えはたっぷり。
個人的に好きだったのは、やはり慧月・景彰コンビ。
ギャンギャンわがままに騒いでしまう慧月を、愛おしくいなして包み込む景彰という構図がベストカップルで最高でした。方や雛女ではあるのですが……。
あと今回は意外な組み合わせとして、冬雪と景行のじゃれあいもあり、これもまたかわいくてよかったです!


八目迷「ミモザの告白4」

表紙の通り、汐の妹、操の物語。
前半パートでは汐と操がどう生きてきたのか、これまでの槻ノ木家家の物語がじっくりと描かれています。
操が、女の子として生きている今の汐を受け入れられない理由、それに至る道筋が丁寧に描かれていて良かったです。
そして継母である雪さんのことを受け入れられない理由も。
後半では操の家出から端を発して、流れるように物語が動き出します。
なんというかこのシリーズは思わぬところから解決への流れが生まれていき、それに身を預けて読み進めるのがとても気持ちいいです。
今回も、なんてことないシーンの連続だったのに、気づけば泣かされていました。
本当に劇的なことなど何も起こっていないのに、なんとなく受け入れようとする心の変化を生じさせる話運びが、とても素晴らしかったです。
あと、絶対的女王様の西園がとても反省していて変わっているの伝わってきてとても良かったですね。


秋桜ヒロロ「悪役令嬢、セシリア・シルビィは死にたくないので男装することにした。3」

ここまで出番のなかった、双子キャラ・マキアス兄弟の攻略を進めるお話。
降神祭のクライマックスできな臭い存在が現れるも、まずは顔見せ程度といった感じでしょうか。
事態解決がやや予定調和的だったかも。
恋愛面ではオスカー、ギルバートそれぞれセシリアへの好意をストレートに伝えてきて、果たしてどうなる……!?というところ。
ヒロインが料理下手という設定はよく見かけますが、その下手さ加減が群を抜いてひどくておもしろかったです。


池田明季哉「オーバーライト ――ブリストルのゴースト」

かのバンクシーを生んだ地である、ブリストルを舞台にした「グラフィティ」の物語。
反社会的な行為でありながら、街まるごとを巻き込んでしまうパワフルなアートとしてのグラフィティの魅力を、ふんだんに盛り込んだ作品でした。
ライター同士の熱量がぶつかり合う異質なアートの世界は、熱くておもしろかったです。
自由気ままな猫みたいなブーディシアがかわいく、彼女が笑ってグラフィティと向き合えるラストで本当に良かったですね。
イギリスが舞台ということもあってか会話の端々にスラングが飛び交い、なんともシャレていて読みやすい作品でした。


貫井徳郎「慟哭」

連続誘拐事件を追う警察の捜査線を描いた物語。
ふたつの並行して描かれる物語がどのように交わるのか楽しみにしていましたが、読み進めるにつれてどんどん不穏な雰囲気が増していく恐ろしい作品でした。
文章は読みやすく、ボリュームに反してすぐに読み終えた感じです。
個人的にはミステリというよりも、「慟哭」のタイトルの通りの嘆きや悲しみを主題に描いている作品なのかなと感じました。
人間の心が叫びを上げ救いを求める悶えるさまを、まざまざと描いているような作品です。
そして最後の一文が悲痛で、印象的でした。


個人的な今月のお気に入り作品トップ5

第1位/ミモザの告白4

第2位/ふつつかな悪女ではございますが7 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~

第3位/オーバーライト ――ブリストルのゴースト

第4位/慟哭

第5位/悪役令嬢、セシリア・シルビィは死にたくないので男装することにした。3