2022年のおもしろかったライトノベル
2022年に読んだ中で、おもしろかったライトノベルのベストテンです。
今年読んだ作品の中から、なので必ずしも今年発行の作品とは限りません。
なお、一般文芸のベストテンは別で記事を立てますので、こちらはライトノベルのみとなります。
1冊単位で順位に載っていますが、同一のシリーズからは基本的に1冊のみが入選しています。
第10位
雨森たきび「負けヒロインが多すぎる!3」
いよいよ部長たち3年生の引退が近づく文化祭編。
表紙からも分かるとおり、今回は新部長に任命された小鞠がひとり立ちするために頑張る物語です。
読んでいて小鞠ちゃんの魅力に完全にやられたというか、めちゃくちゃ可愛いのでは……となりました。
温水くんが活躍しているようで活躍していない、でも彼がいなければうまくおさまっていなかったという絶妙な立ち位置がとても良いなと思います。
八奈見さんが今回特にキレッキレで、飲食シーンはマシマシ、ギャグもシリアスもレベルの高い立ち回りでとても良かったです。
挿絵で志喜屋さんのおっぱいの谷間が堂々と描かれていましたけど、いくら屍系とはいえこれはエロすぎる……。
本当に読み物としてかなりレベルが高い作品なので、次代のニューウェーブを現在進行形で追いかけてる感じがしますね。
第9位
鴨志田一「青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない」
今回はかえでがメインのエピソード。
途中まではおうち大好き妹の微笑ましいがんばり物語かと思いきや、いきなり衝撃的な事実が明かされてから一気にかえでの見方が変わりました。
果たしてどのような結果となるのかハラハラしながら読んでいたのですが、かえでも咲太も救われるラストとなって本当に良かったです。
かえでがとてもいい妹で、すごくお兄ちゃん想いで、かわいかったのでよかったです。
咲太とかえでのことを心配して寄り添ってくれる麻衣さんも、ほんと素敵な女性ですよ!
その一方で、未だ謎が深まるばかりの翔子さんとは……。
第8位
風見鶏「さよなら異世界、またきて明日II 旅する轍と希望の箱」
めちゃくちゃ好きなお話でした……。
今回ニトとケースケが訪れたのはとある廃村で、そこに暮らす数少ない人々との交流の物語になります。
それぞれ別々の人生を歩んでいるかに見えた住人たちは、実は少しずつ繋がりがあって、1冊の物語の中で全員が関わっているきれいな物語構成でした……。
ゆっくりと進んでいく物語は滅び行く世界だからこそのペースで、その寂しさに胸を打たれると同時、希望を抱くことのできるやさしい物語にも感動しました。
派手さの無い異世界モノですが、丁寧に紡がれるやさしい物語はとても好きです。
第7位
暁佳奈「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝」
上下巻に描ききれなかった、ふたつの依頼人のお話と、ベネディクトとカトレアのお話、ギルベルトとホッジンズのお話、そしてヴァイオレットのお話。
お気に入りのエピソードは「王女と自動手記人形」でした。
政略結婚をする王族の娘が、伝統行事に則り公開恋文を贈り合うお話です。
政略結婚ながらも描かれる恋模様は甘くて愛おしく、ヴァイオレットの働きも含めてとても好きな作品でした。
ギルベルトとホッジンズの不思議な友情の物語も、グッとくるものがありました。
お互いに不器用ながら、互いに深い友情を感じているのがとても良いですね。
第6位
渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6」
学園ラブコメの陰の部分を煮しめたような八幡にしては珍しく、文化祭実行委員に就任とイベントのど真ん中へ。
しかしながら八幡は八幡でしかなく、陽のイベントにありながら俺ガイルらしさを存分に味わえる巻でもありました。
雪ノ下にとっては非常に大きな成長を感じさせるエピソードでもあり、シリーズの中でも特に重要な1冊になっていると思います。
個人的には川崎さんがたどたどしくもクラスでの立ち位置を得たり、海老名さんが劇監督に就任して絶好調なのが良かったです。
最後の最後、平塚先生がめちゃめちゃ良い先生で、ちょっと泣けました……。
第5位
安里アサト「86―エイティシックス―」
いやこれは凄いですね。
人間ではないと烙印を押された「エイティシックス」の少年少女が命をかけて戦場を駆ける話で、まず物語設定がラノベの域を超えるくらい救いが無くハード。
その上で、戦場の彼らに向き合おうとする、指揮官のレーナの高潔さが美しい。
決して対等ではないけれど、彼らのために考えて行動し続けるレーナの姿は、とても感動的でした。
いくら高潔であろうとしていてもどこかで折れてしまいそうになるもので、それでも最後まで意地を貫き通したレーナが本当にものすごくかっこよかったです。
ハードSFがお好きな方なら、ぜひ。
第4位
八目迷「琥珀の秋、0秒の旅」
まず俺はヤンキーヒロインが好きです。
プリンみたいな金髪にスタジャン羽織った乱暴な口調のヒロイン井熊がかわいい時点で大勝利。
そんな不良かわいい井熊と、なぜか時間の止まってしまった世界で、北海道の函館から東京まで徒歩で旅をする。楽しくないわけがないですね。
最初は堅実に東京を目指していたふたりが、だんだんと時間の止まった世界に慣れていって寄り道したり遊んだりしてイチャついてる様子がとても楽しいです。
誰にも邪魔されないこの旅が終わらなければいいのに、と強く思いました。
結末はあっけなく訪れるけれど、そのあっけなさもまた人生らしくて、最後までずっと好きな作品でした。
本当に……物語が終わってもこれからもずっと井熊と旅をしてほしい……。
第3位
白鳥士郎「りゅうおうのおしごと!16」
マジで……どこまでおもしろくなるんだこの作品は!?
いよいよ始まるあいと釈迦堂女流名跡によるタイトル戦。
棋界の裏から暗躍し、女流棋士の道を切り拓いてきた釈迦堂さんはもはや生ける伝説。
女流名跡戦が進んでいくにつれて明かされる釈迦堂さんの過去には、将棋界における女流棋士の立場の問題も深く関わっていて、非常におもしろく読ませてもらいました。
その上で歩のプロポーズによる恋愛作品としても、目頭をジンとさせる熱い展開でした。
棋士である以前に友人同士だった小学生名人戦の同期たちが、明確にこれからの別れを意識する場面がかなり印象的です。
供御飯さんと月夜見坂さんのふたりの存在がこの作品でいかに大きかったのかを、痛感しました。
仲良しではいられない、現代の本気の殺し合いの一端を垣間見た気がします。
本当に将棋の戦いってめちゃくちゃ熱いですね……。
そして次巻は満を持して天衣のターン。本当にゾクリとさせられる引きでした。これ以上この作品を読むのが、本当に怖すぎる。
第2位
杉井光「楽園ノイズ4」
今の巻のテーマは、「人が音楽を続けることと、やめること」でしょうか。
スタジオのオーナー黒川さん、そして『けものみち交響楽団』という確かな腕を持つ者たちであっても、音楽をやめるときが来る。それは一体なぜなのか。
今巻では真琴がオーケストラの指揮者を務めることとなります。これまで女装したり裏方に回ったりといったことが多かった中で、紛れもなく表舞台で輝く姿がかっこよかったです。
時節的にはバレンタインのお話で、チョコレートを渡されるシーンがとても微笑ましかったです。改めて、PNOのヒロインたちのレベルって高いよね。
自分は音楽は分からないですが、それでも打ち込めるものを持っている人間ではあります。
この巻で音楽を使って喧嘩を売りに行った真琴の姿を見て、熱のようなものをもらえた気がしました。
こんなふうに熱が伝わって広がっていくとしたら、それはとても凄いことだと思います。音楽祭編、とてもおもしろかったです。
第1位
四季大雅「わたしはあなたの涙になりたい」
気がつけば、何度も何度も泣かされていました。とんでもない作品です。
八雲と揺月の恋物語であると同時、大切なものを失った人が前に進むための物語でもありました。
物語のあちこちに人を想う優しさが満ちていて、ちょっと凄すぎて圧倒されてしまいました。
個人的には、みんなから愛されている清水が、八雲のことを気に入っている理由が大好きです。そしてその清水の言葉で、八雲もまた救われているのが最高でした。
八雲の父親が揺月と対面するシーンや、揺月が両親に怒るシーンも、どれもこれもが胸に迫る場面で……泣きながら読みました。
本当にすごい作品で、今年の一番であるのは当然として、人生の中でも指折りの傑作になりました。
まとめ
第1位/わたしはあなたの涙になりたい
第2位/楽園ノイズ4
第3位/りゅうおうのおしごと!16
第4位/琥珀の秋、0秒の旅
第5位/86ーエイティシックスー
第6位/やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6
第7位/ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝
第8位/さよなら異世界、またきて明日II 旅する轍と希望の箱
第9位/青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない
第10位/負けヒロインが多すぎる!3
今年もたくさんの素敵な作品をありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。