2020年12月に読んだ本まとめ
2020年12月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。
谷川流「涼宮ハルヒの直観」
いや〜〜〜俺の好きなハルヒが返ってきましたね!
久しぶりの新刊となる今回は短編集で、SOS団のちょっとした日常を覗き見できるエピソードばかりでとても楽しかったです。
「あてずっぽナンバーズ」はみんなの可愛らしい着物姿が堪能できて良かったです。
「鶴屋さんの挑戦」は鶴屋さんから送られた怪文書の謎を解く中編で、ミステリ好きならたまらない要素がたくさん盛り込まれていて楽しく読めました。
直観全編通して古泉くんが楽しげだったり、長門がチャーミングだったりと、久しぶりに会えたSOS団のみんながとても愛おしく思えました。
もちろんみくるちゃんはずっとかわいかったですよ!
退屈で居眠りしてしまうみくるちゃん、すごくかわいい!
またここから新たなハルヒの物語が楽しめるようになると嬉しいなあ。
鴨志田一「さくら荘のペットな彼女」
いや〜これは、ぶっ刺さりましたね……。
学校の問題児たちの集まるさくら荘を舞台にしたラブコメでしたが、想像以上の作品でした。
ヒロインであるましろは世界的に有名な天才画家で、自分でぱんつも選べない社会不適合者のため、世話係となった主人公の空太を振り回すことになります。
けれどその才能や作品に向き合う姿勢は確かに天才と言っていいそれで、凡人に過ぎない空太は間近からその才能を見てしまったことで焦りや不安を覚え、苦悩することとなります。
そのあたりの心理は自分にも覚えがあり、読んでいて自分も息苦しさを覚えるほどでした。
ラブコメとしてはましろと空太の程よい距離感がとても心地よく、楽しく読める作品です。
続刊も今後読んでいきたいですが、まだまだここからいくつも波乱がありそうですね。
岬鷺宮「日和ちゃんのお願いは絶対2」
壊れゆく世界を舞台に描かれる、普通の男子高校生と、普通ではない女子高生の物語第2巻。
今回は日和ちゃんと深春の恋人同士の関係だけでなく、深春の幼馴染の卜部を交えた三角関係が描かれていました。
セカイ系的な側面はやや控えめで、恋愛や人間関係でのエピソードが多めだったように思います。
そのぶん、関係を深めていく日和と深春を見守ることができたのは楽しかったです。
初登場の志保さんはどこか掴みどころがなくまだ裏がありそうな女性で、敵役かなと思えばそうでもなく、次巻以降での活躍が楽しみなキャラクターでした。
長岡マキ子「経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。」
要するにタイトルそのままのストーリーなんですけど、そのぶんタイトルの要素を期待して読む人には十分楽しい作品でした。
「経験済み」のあたりがどう描かれるかが不安ではありましたが、元カレの存在を明確にしながらも、交際が長続きしない背景の方が物語のポイントになっていて、あまり引っかからず読めたのが良かったです。
月愛がギャルにしては良い娘すぎて、めちゃくちゃ可愛かったです。
心を一歩一歩通わせていくラブコメとして良質なので、これからふたりが好き合っていくところを見守っていきたい作品でした。
岬鷺宮「三角の距離は限りないゼロ6」
高校2年生の終わりに、クラスの『解散会』を企画するお話。
二重人格の女の子、秋玻と春珂のどちらに恋をしているのか答えを出すために、矢野がいろいろな知り合いに相談する様子が描かれています。
二重人格も終わりが近いということで物語もラストスパートに突入してきましたが、明確に終わりが見えていながらも矢野の中に新たなる謎が生まれるなど、最後の展開がとても気になるエピソードでした。
自分もこの作品をここまで追いかけてきただけに、解散会のエピソードで振り返る1年間と、最後の秋玻/春珂の言葉には感じ入るものがありましたね……。
五箇野人「つかれたときに読む海外旅日記」
ツイッターでちょいちょい流れてくる、海外を旅した先で出会った素敵ないかつい紳士淑女たちとの交遊録。
読んでてほっこりするエピソードが多数で、気楽に楽しく読めるのが素晴らしいです。
海外の人たちってすげー(たぶん向こうも日本の人たちすげーって思うんだろうけど)っていう作者の体験を味わえるのが、日本からほとんど出ない身として嬉しいです。
ゆるい絵柄がけっこう好みなのと、女の子が可愛らしく描かれているのが好きです。
コロナが落ち着いてまた旅に出られるようになったら、こんな感じのエピソードをたくさん描いてほしいですね。
上山道郎「悪役令嬢転生おじさん 第1巻」
50代の公務員のおじさんが悪役令嬢に転生する話。
元々ツイッター版が好きで読んでたんですが、連載版もかなり良いですね。
悪役令嬢でありながら子を持つおじさん目線でアンナ(ゲームの主人公)と接した結果、めちゃくちゃ懐かれる辺りは「おじさんだからこそ」の転生モノに仕上がっていてかなり楽しいです。
あとシンプルにこのおじさん(屯田林憲三郎)がかなりいい人。
いい人の立ち居振る舞いは見ていて気持ちいいので、それを悪役令嬢がやれば威力も倍増です。
アンナたちのリアクション芸も大ゴマで迫力あっておもしろい。
次巻も期待です。
駱駝「俺を好きなのはお前だけかよ15」
いやこれは凄すぎますよ。
クライマックス突入で激動のクリスマス・イヴ
。ジョーロの前に現れた謎のヒロインにして最後のヒロイン、ビオラとの物語が描かれています。
一体どこから始まっていたのか、シリーズを渡って仕掛けられたあまりにも壮大な真相には、愕然としてしまいました。
「ここぞの場面」でホームランを決めてくれるあいつが、今巻でも価千金の大活躍で、読んでいて大興奮でした。
ラブコメというジャンルの中にあって、ここまで熱さを感じる物語はなかなかありません。
すべての真実が明かされたとき、ジョーロは一体何をするのか。
彼の活躍がとても楽しみです。
いよいよ次回最終巻。心して待ちたいと思います。
宮澤伊織「裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル」
みんなでラブボ女子会をしたり、それをきっかけに空魚と鳥子が気まずくなったりします。
これまでは鳥子のほうがへたれる場面が多かったですが、今巻では鳥子がグイグイ攻めてきて、それに空魚がうろたえる場面が多かったですね。
空魚が鳥子の気持ちを正しく理解する場面は、ホラーを扱ったこの作品だからこその演出で気付かされて、とても綺麗でした。
ホラー的な面でいいますと、今回は不可解なままで終わる謎や、「あれはなんだったんだろう?」というぼんやりとした恐ろしさだけが残るエピソードが多かったように思います。
特にマヨイガのエピソードは、物語の中で怖いシーンが無かっただけに、最後の引きで描かれた描写が際立って怖かったです。
比嘉智康「あの夏、僕らに降った雪」
比嘉智康さんの最新作にして初の一般レーベル作品は、屈指の切ない恋物語でした。
高校2年生の夏休み、主人公の湊は、日々無関心なことが増える“無関心病”に侵された莉子と出会います。
莉子の余命は残りひと夏限り。
両親にも友人にも無関心になってしまった莉子から唯一関心を向けられている湊は、その夏、彼女とともにいろんなところへ遊びに行くこととなります。
明日には湊への関心が失われているかもしれない不安定さの中で描かれるふたりのやりとりは、時にコミカルで、時に強く胸を打ちます。
冗談めかしたやり取りは莉子のことをとても魅力的に描いていて、それでもふとした瞬間に彼女が確かに病に侵されている描写が突きつけられるのです。
湊が莉子のことを深く想っているのが伝わり、いずれ失われる莉子の命や関心が尊い。
恋物語としてはあまりに切なくて、深く胸に刺さる作品でした。
比嘉さんの作品はずっと追いかけていますが、最初からシリーズではなく単巻作品として描いているためか、1冊の中で非常に綺麗にまとめられていいるように感じました。
とてもおもしろい作品で、比嘉さんの新作がこうして読むことができたことを嬉しく思います。