2021年7月に読んだ本まとめ

2021年7月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


川原礫「アクセル・ワールド11 ‐超硬の狼‐」

《災禍の鎧》でのいざこざもやっとこさ解決……と思ったら、またしても次なる問題がいくつも振りかかってくるのがアクセル・ワールドです。
今巻ではクロウが新アビリティ《理論鏡面》を習得するための特訓と、加速世界に突如現れた最強最硬の狼《ウルフラム・サーベラス》とのバトルが描かれています。
最初期では一度ヘコんだらドン底まで沈んでいたハルユキが、今巻ではLv1の新人に破れた傷心も仲間たちからのエールでわずか1日で復活しリベンジを挑むなど、彼の成長を実感しました。
サーベラスはまだまだ底が見えず恐ろしい存在ですね……。
表立っての動きは見えずとも加速研究会の影はずっとチラついているのが、いつ爆発するのか不安でもあります。
青のレギオンの側近、ブレード姉妹がかわいくて良かったです。
しかしまあ改めて思い起こすと、謡が初登場した浄化の神子編の6巻がわずか一週間前に相当するエピソードとは……。


松山剛「君死にたもう流星群2」

1巻以上にきな臭い展開になってきました。
8年後の世界で星乃を襲った人工衛星テロや、1巻の『第二のエウロパ事件』の他にも、星乃の命を狙っていると思しき人物の存在が明らかになっていきます。
あまりにも現実離れした実力行使を行う様に、相手の本気さと恐ろしさを感じて背筋が凍るようでした。
その一方で日常生活を送る大地のほうもまた、過去を変えてしまったことで留学を希望する伊万里や高校中退を決めた涼介とのエピソードも描かれていました。
最初の一歩を勇気出して踏み出す大切さが語られており、読んでいて感じ入るものがありました。


S・S・ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」

ミステリ史に残る、マザー・グース見立て殺人の物語。
警察官には手も足も出ないような連続殺人事件の謎に、ハラハラしながら読める作品でした。
クライマックスに差し掛かると驚かされる場面も多く、楽しむことができました。
事件の犯人として明かされた人物が、なぜこのような凶行に及んだのかという点にも、丁寧な分析が描かれていたのが良かったです。
込み行った連続殺人のひとつひとつを丁寧に描いていた印紙です。
後世に影響を与えた見立て殺人の先駆け作品と思うと、その完成度の高さに唸らされました。


桜井のりお「僕の心のヤバイやつ 第5巻」

右手を骨折して始まった新学期。
山田のうちに行ったり、バレンタインチョコを作りに行ったり。
ここにきて中学生という未来の可能性が開けている立場だからこその悩みが出てきたりと、存分に青春をしている印象です。
山田家のパパもママも魅力的なので、もっと家族ぐるみでお付き合いするエピソードあったら楽しそうですね。パパと市川は仲良くなりそうな……。
バレンタイン回、いいやつだけど遊びだす萌子と、そういうのよくないってちゃんという芹那がかなり良かったです。ばやしこはばやしこ。


桜庭一樹「GOSICK RED」

2度目の嵐を超え、新大陸へと渡ってきた久城とヴィクトリカの物語。
久城は新米新聞記者、ヴィクトリカは私立探偵としてニューヨークでの新生活を始めていました。
しかしヴィクトリカの元にギャングからの依頼が舞い込んできたことで、ニューヨークをあちこち飛び交う大捜査に乗り出すことに。
大人になった久城とヴィクトリカが、ソヴュールにいた頃とまったく同じようなやり取りをしていて良かったです。
ミステリとしても、始めは小さな事件だったものが最後には新大陸を揺るがしかねない事件へと繋がっていき、ハラハラさせられました。


駱駝「俺を好きなのはお前だけかよ16」

年末も差し迫ったところでジョーロに襲いかかる、過去最大級に厄介な難題のお話。
臆病で逃げ出すことに慣れきってしまった三色院菫子と、彼女を探し求めるジョーロの奔走っぷりは、ラブコメらしい甘酸っぱさはなくとも立派にラブコメ作品でした。
最後までありとあらゆるヒロインたちが立ちふさがる豪華な1冊で、シリーズの区切りにふさわしいジョーロの悪戦苦闘が楽しめした。
ものすごく最終巻っぽく仕上がっておきながら、あらすじとかどこにも最終巻とは書かれていないので「これは……」と思いましたが、まさかの予想外が起きてしまいました……。


大黒尚人「フルメタル・パニック! アナザー9」

息つかせぬ怒涛の本編が続く中、ここで短編集です。
「夕陽のサンクチュアリ」は達哉たちがASの操縦手として映画撮影に関わるお話。
まさしくフルメタらしいドタバタコメディになっていて、殺伐とした本編を読み続けてきた中での良い清涼剤になりました。
「砂塵の国」はユースフの母国でのゴタゴタを描いており、彼とその従者たちの良いところが詰まっていました。
「山河燃える」「故郷は緑なり」はリーナの過去編。
彼女がD.O.M.S.のマオ社長と出会うお話で、過酷な幼少期を乗り越えたリーナの強さの一端が感じられました。


岬鷺宮「日和ちゃんのお願いは絶対3」

人を絶対に従わせる「お願い」の能力を持つ日和が、〈天命評議会〉を脱退するお話。
普通の女の子に戻って、深春とごく普通のカップルとしての日常を送る日和。
そんなふたりの様子は微笑ましかったです。
しかしせっかく取り戻したはずの日常のあちこちに綻びがあることで、世界が破滅へと向かって進んでいる不穏な空気も感じる結果となりました。
たったひとりで世界を動かし続けてきた日和が、もうどうしようもないくらいに〈天命評議会〉から逃れられないことを突きつけられた第3巻。
ここから深春がどうセカイに立ち向かっていくのかが見物です。


才羽楽「あなたが心置きなく死ぬための簡単なお仕事。」

いやこれめちゃくちゃすごいし、とても好きな作品でした。
人が死ぬ前にやり残したことを手伝う「やり残し請け負い屋」の日賀テルが主人公で、死期の近い依頼人たちからの不思議なお願いを解決していく様が読んでいて楽しかったです。
また、テルと風変わりな助手のすずのテンポの良いやりとりも、とても魅力的でした。
物語がクライマックスに入っていくと続きの気になる展開が続き、最後は一気に読んでしまいました。
願いを叶えた依頼人たちの反応が感動的だったエピソードも多く、とても素敵な作品でした。すごく良かったです!


八目迷「ミモザの告白」 

幼馴染の男子が、ある日突然、女子の制服を着て学校にやってきた。
ライトノベルにおいてほとんど描かれることのなかったテーマと、真摯に向き合っている作品だと思いました。
描かれている困惑や拒否反応は苛烈で、読んでいて息苦しさも感じました。
女の子になった汐の抱える葛藤や切なさ、そんな汐に寄り添おうとする咲馬の姿は、青春小説としても完成度の高いものでした。
物語のクライマックスで必死の姿でボロボロになる咲馬はとても熱くて、よく分からなくてもよく分からないなりに汐を想っているのがはっきりと伝わってきました。
ライトノベルの枠組みを超えて、若い方から大人の方までいろんな方に感じてもらいたい作品でした。
とてもおもしろかったです。あと、読み終えてから、「タイトル!」と思いました……。



個人的な今月のお気に入り作品トップ5

第1位/あなたが心置きなく死ぬための簡単なお仕事。

第2位/ミモザの告白

第3位/アクセル・ワールド11 ‐超硬の狼‐

第4位/GOSICK RED

第5位/俺を好きなのはお前だけかよ16