2023年3月に読んだ本まとめ

2023年3月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


法月綸太郎「誰彼」

とある新興宗教の教祖にまつわる、首無し死体の殺人事件。
ひとつの事件の流れ、真相に対して、何重もの仕掛けやミスリード、嘘や勘違いが仕組まれており、ミステリの超大作と言っても過言ではないでしょう。
探偵役の綸太郎が真相を当てたかと思いきや、予想外のところから反証が飛び出し振り出しに戻る……を1冊かけてまるまるやり続けているような感じ。
読むのにすごく疲れる作品ですが、そのぶん重厚な謎に振り回される感覚はミステリを読んでる感じが強くて楽しかったです。
クライマックスでも尚ひっくり返してくる姿勢には、もはや脱帽の領域。


原作:青木潤太朗、作画:森山慎「鍋に弾丸を受けながら 第3巻」

単行本発売前からネットで話題となった、ホットドッグの上に揚げたてフライドポテトを乗せた「ホットドッグ・アンド・フライ」はとても食べてみたい!
ホラー回の釣り人ならではの遭遇イベント、本当なのかそれともジョークなのか……という感じではありますが、その曖昧さが恐ろしいですね。
後半では尺の都合で1本まるまるやるほどではない20点の食事ネタ。
デビッドから差し出されたクラッカーを意思消沈して食べるジュンタローがかわいかったです。
水曜どうでしょうまでもが女体化してて笑う。
次回のコロナ明け台湾編も楽しみです。


カミツキレイニー「魔女と猟犬」

ビビッドな表紙にピッタリの、刺激的なダークファンタジー。
魔術師達を従える軍事大国に対抗するべく、規格外の戦闘力を持つ“魔女”を仲間に引き入れようと画策する小国キャンパスフェロー。
7人いるという魔女の、その1人目と接触するストーリーだったのですが……。
その最初のひとりからいきなりとんでもない大事件に巻き込まれ、大国に対抗するどころかキャンパスフェローの情勢は一気に最悪化。
まさに絶望としか言いようのない状態まで追い詰められてしまいます。
魔女と猟犬だけで、ここからどう反撃の狼煙をあげていくのか……。


時雨沢恵一「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXIII ―フィフス・スクワッド・ジャム〈下〉―」

SJ5編完結。
いや今回は特殊ルール増し増しのSJで、やってる方はしんどいでしょうが見てる側としてはとても楽しかったです!
多様なギミックから、シンプルなガンアクションの枠を超えたド派手なバトルが盛りだくさん。
特にゴーストルールの発動する最終盤の大騒ぎっぷりは、意外な展開の連発もあってとても読み応えがありました。
ピトフーイを屠ったあともシャーリーが大活躍で、最高にクールで良かったです。
レンの懸賞金に関する真相は藪の中でしたが、そこは次巻以降?


西尾維新「掟上今日子の旅行記」

日本から地球を半周した裏側、パリを舞台に、今日子さんがエッフェル塔を盗む怪盗になるお話。
探偵である今日子さんが怪盗になってしまったり、厄介が積極的に今日子さんの気を散らそうとしたりと、いつもの違った「裏」の物語といった様相でした。
巨大なエッフェル塔を盗む……という不可能犯罪の物語を、どう読み手に納得させて成立させるのかと思っていたら、最後の最後で見事に騙されてしまいました。
ヒントは序盤から示されていたのに、実にあっさりとしてやられた感。
そして表紙のエッフェル塔前ではしゃぐ今日子さん、かわいい。


青季ふゆ「美少女とぶらり旅」

自殺未遂をした同級生の美少女と、ぶらり旅をするお話。
ぶらり旅と言いつつ、命を絶とうと考えているような女の子を連れての旅なので、全力で楽しむぶらり旅です。
色んな観光地を訪れては、美味しいものを食べ、美しい光景に見惚れ、現地で出会った人たちと交流するという構成は期待通りのものでした。
反面、ちまちまと雑なパロディであったり、あまりに現実的でないような要素が散見されたのは気になりました。
実際に存在する舞台を背景に描いた旅作品なのだから、もうちょっと現実に沿った作りの方が、作品世界に没入しやすかったような気がします。


長岡マキ子「経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その6」

まさかまさかの3年時代が飛んでの大学生編!
龍斗や月愛の周りは色んなことが変わっていて、大人になることの大変さが描かれています。
その慌ただしい中でも、互いに互いを信じて付き合い続けている安定感はさすがのラブラブカップル。
しかし今巻で語りたいのは、むしろサブキャラクターたちの恋愛模様。
関家さんに首ったけであれだけなびく様子ゼロだった笑琉と、それでもと隣にい続けたニッシーがカッコよすぎて感動してしまった。
本当に、このシリーズの中でいちばんしんどい想いを貫いていたのがニッシーだったと思う。
そんなニッシーとの関係に答えを出す笑琉のシーンも、成長して大人になった背景も合わせて本当に泣けるシーンだった。
一方でイッチーと朱璃の方はといえば、こちらは何から何まで勢い任せのギャグという感じ。
しかしこれもふたりらしい関係の紡ぎ方という感じで、好きでしたね。


桜井のりお「僕の心のヤバイやつ 第8巻」

体育祭と修学旅行、学生生活の特別なイベントで、忘れられない大切な思い出づくり。
僕ヤバがヤバイことなんぞとっくに分かりきってたことなんだけど、この巻はそれに輪をかけてヤバかったです。
ラブコメって、こんなにギャグと熱さと甘酸っぱさを共存させることができるものだったんだ。
劇的じゃなくてもひたすら好きの感情に突き動かされた恋愛漫画、かなり最高でした。
あとこの巻、にゃあこと吉田芹那がかわいかったですね。
私服がヤンキーすぎる。にゃあもっと活躍してくれてもいいだろ……


四季大雅「ミリは猫の瞳のなかに住んでいる」

やっぱり四季大雅さん凄いです。
読み手の感情を揺さぶるような演出の強い文章で、ものすごく惹き込まれる作品でした。
物語のテーマのひとつとなる演劇世界の凄みの描写も、鳥肌が立つほどに圧倒的でした。
ただ、ミステリ的な面でいうと、「そうはならんやろ」という難しさが多く見られてしまったかなと……。
“呪い”と表現するほど演劇に深く魅入られた彼らだからこそ、銃殺事件よりも演劇を優先して行動していたのかもしれませんが、しかしなんというかクライマックスは違和感のほうが勝ってしまったかもしれません……。警察が空気すぎるし……。
ミリの想いの尊さ、ラストシーンの切なさが胸を打つだけに、作品のもうひとつの大きな要素であるミステリの未成熟さにはもったいなさも感じてしまいました。


個人的な今月のお気に入り作品トップ5

第1位/僕の心のヤバイやつ 第8巻

第2位/経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その6

第3位/ミリは猫の瞳のなかに住んでいる

第4位/魔女と猟犬

第5位/ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXIII ―フィフス・スクワッド・ジャム〈下〉―