2024年7月に読んだ本まとめ
2024年7月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。
乙一「一ノ瀬ユウナが浮いている」
めちゃくちゃ良すぎて半分読んだくらいのところから最後まで一気読みして、めちゃくちゃ泣いてしまいました。
ヒロインのユウナは亡くなっており、線香花火を灯した時にだけ現れる。
死者である彼女に未来はなく、恋愛小説として先に続く物語はない。
大地とユウナのやり取りはとても自然で楽しげで、だからこそ生者と死者というふたりを断絶する大きな壁の存在が切ない。
延ばし延ばしにしていたユウナとの別れのエピソードが不意に訪れる展開も秀逸で、話運びの上手さに脱帽する他ないです。
めちゃくちゃおもしろかったし、すごく良質な切ない恋物語でした。
東京の憧れの街並みをユウナに見せてあげるシーンがあって、そこでのはしゃぎっぷりがかわいくて、もう彼女が夢を見る機会もないことがひどく寂しかった。
けれどユウナの人生は、大地に大きな影響を与えている。
時間はかかったけれど、大地にとっても前を向くための物語になったのではないでしょうか。
原作:のりしろちゃん、漫画:魚住さかな「オタクに優しいギャルはいない!? 第7巻」
年末年始からバレンタインデーまで。
恋心を自覚した伊地知とオタクくんの関係がどうなるかと思いきや、実にオタクらしいキーワードで落ち着いたので良かったです。
恋愛関係でポンコツになる伊地知、かわいかった……。
そして珍しく頼りにされたことで気持ちよくなってしまう天音って、本当に残念美人……。
オタクくんの誕生パーティーにて「絶対泣かす」とまで言わしめた出し物、確かにこれはやられたらめちゃくちゃ感動すると思う……良いサプライズでした!
次巻は、恋愛面で一歩遅れを取る天音のターン!?
米澤穂信「黒牢城」
信長に反旗を翻し有岡城に籠城した、荒木村重という武将が主人公。
めちゃくちゃ時代小説じゃねえか〜!と普段時代小説を読まない身なので身構えるものの、読み進めていけばいくほどに米澤穂信さんらしいミステリでした。
有岡城を揺るがす怪事件が起こる度に、囚われの身の黒田官兵衛に知恵を借りに行く構図がとてもわくわくします。
そしてまた単なるミステリにも収まりきらず、終盤には大仕掛けもあり、圧巻の完成度。
武将として下々の者の命を捨て去ることのできる村重が、茶道具ひとつを惜しむ場面が印象深かったです。
長岡マキ子「経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その8」
シリーズにとって大きな転換点を迎える8巻目。
白河姉妹の姉、綺麗(きてぃ)と、その彼氏ライくんの関係を通して、龍斗も公私ともに大事なことを学んだようで。
ライくんの新曲、なかなか感動してしまいました。
学生時代のクリスマスの悲劇があっただけに、今回とんとん拍子にきれいにおさまってとても安心しました。
自分が一番気になってるニッシー笑琉のエピソードは今回少なめながら、次巻で進展が望めそう? 本当にどうなっちゃうんだ……。
各カップルの中でもここが一番複雑なので、ものすごく気になります。
前回の引き的には本来一番描かれるべきイッチーと朱璃のふたりは……なんというかすべてが勢い任せで、大丈夫かふたりとも? という感じ。
今が一番慌ただしくて大変だから仕方ないのだろうけど、このふたりにも笑って幸せになってほしいものなのですが……!
香月美夜「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 第一部 兵士の娘III」
このままマインが商売で活躍する話でもおもしろいのに、まったく違う世界の神殿入りしてしまうとは。
第一部でしてきたことの多くが神殿入りに繋がっていて、構成の素晴らしさに脱帽しました。
この巻は表紙が象徴しているように、家族愛が多く描かれていた印象です。
極刑も覚悟して家族を守るギュンターがとてもカッコよかった。
ベンノさんが色々と手を打っているし、神殿入りしてからも商売パートは続くのでしょうか?
現代知識で商売していくのは好きだったので、次巻以降もそこが続いていくと嬉しいなあと。
「それから神殿に入るまで」のパートは、それまでの緊張感が嘘のように平和な雰囲気で良かったです。
特にトゥーリたちがコリンナ様のお宅を訪問するお話は、貧民にとって夢のような展開で、すごく嬉しそうな様子が伝わってきて好きでした。
トゥーリもマインを通じて、貧民ならざる立場まで成長しそう?
桜場コハル「みなみけ 第25巻」
お気に入りのエピソードは、話が信用されないカナの「いいところ」。
やらかしてしまったカナですが、強運のオチがすごく好きでした。
たぶん藤岡は、お店がなくても楽しく過ごせただろうけども。
あとは仮装パーティーで誤解されて、愉快に踊ったことにされてしまったチアキがおもしろかったです。
アイス食べ散らかしてエアコンつけっぱで出かけたカナにキレるハルカ姉さま、地図の読めないハルカ姉さま、スケートが楽しみなハルカ姉さま、お弁当手抜きしてしまったハルカ姉さま、などかわいいハルカ姉さまが多くてよかったです。
乙一「サマーゴースト」
自殺サイトで知り合った高校生たちが、本物の死者である幽霊と出会う物語。
物語の筋としては比較的おとなしめでしたが、細部の表現がうまくて読ませます。
ゴーストになって夜の街を徘徊するシーンは、死者であることを忘れるくらいに楽しげで良かったです。
【サマーゴースト】である絢音との交流を経て、彼らの「生きる」ということへの意識の切り替わる展開の描き方が、ものすごくうまかったです。
絵を描くのが好きな友也が、勉強を強いてくる母親から絵を破くように言われるシーンが、特に強烈でした。好きなものへの心の折り方がうますぎる。
雨森たきび「負けヒロインが多すぎる! SSS」
負けイン1〜6巻の書店購入特典SSをまとめた1冊。
まず驚かされるのが、1巻からさっそく特典SSの数が多く、ものすごくたくさんの書き下ろしがあったのだなと。
負けインならではの東海地方御当地書店さん向けの特典や話題もあり、まるで現地に行って買ったような気分になれるのがお得です。
基本的には物語本編に関わらなき日常を切り取ったオマケみたいなものなのですが、キャラクターたちがかわいいので楽しく読めますね。
ファンなら買って損は無いと思います。
のんほいコラボのSSも収録されてるのはありがたい。のんほいパーク行かねば……。
雨森たきび「負けヒロインが多すぎる!7」
このあざとかわいい表紙の女の子……文芸部新入生候補の白玉リコちゃん、第一印象はとにかくかわいいの一言ですが、中身はなかなかの行動力を備えた負けヒロインでした。
彼女の未練を払拭するために、文芸部を巻き込む大作戦へと発展していきます。
結婚式場を舞台に、変装や秘密兵器を大量投入して臨むその様子は、さながらミッション:インポッシブル。
凄まじい諜報能力を持つ朝雲さんを交えた準備期間から、トラブル満載の本番当日までめちゃくちゃおもしろかったです。
それはそうと、八奈見さんの腹ペコ芸が、一層ハチャメチャになってて笑いました。
竜騎士07「ひぐらしのなく頃に解 第二話 罪滅し編(上)」
レナの一世一代のがんばり物語。
ここまで明かされていなかったレナの家庭環境が、物語の主軸。
これまではレナが良識派の立場になることが多かった中で、ついに彼女も狂気に蝕まれてしまいました。
赤文字を駆使するなどして、視覚的にもレナが正気でない様子が演出されていて、読み物としておもしろかったです。
ゴミ山でレナと相対する圭一が周りに発破をかけて成長を見せるシーンは、やはり印象的。
あの諦めムードの梨花ちゃんを再び奮起させているのは、相当な演説だったと思いますよ。
そして直後に不穏な営林署便りが……。
個人的な今月のお気に入り作品トップ5
第1位/一ノ瀬ユウナが浮いている
第2位/負けヒロインが多すぎる!7
第3位/黒牢城
第4位/本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 第一部 兵士の娘III
第5位/経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その8