2020年8月に読んだ本まとめ
2020年8月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。
支倉凍砂「マグダラで眠れⅣ」
グルベッティを出て、カザンの町に入植した騎士団とクースラたち。
その町に残された竜の伝説にまつわる、物語。
クースラ一行が順調に「本物の工房みたい」になってきて微笑ましいです。
が、その一方で入植したばかりの町で、またしても不穏な事態に直面してしまいます。
フェネシスの出自に関わるエピソードであると共に、クースラとフェネシスの関係性もぐっと距離が近づいた感じがしました。
姉御肌で頼れるけれど乙女なところもあるイリーネも魅力的な部分が多く見られて、良かったです。
一応お話は終わってますが、続きも気になるところです。
松山剛「君死にたもう流星群」
コスパを重視するあまり夢を持たない大地と、宇宙飛行士夫婦の娘である星乃の、「夢」と「宇宙」の物語。
大地が星乃と仲良くなり、そして失い、落ちぶれて、彼女を救おうと一歩を踏み出す。
そんな物語の出だしを、丁寧に描いている印象を受けました。
物語の主軸が「夢」と「宇宙」のふたつあり、ストーリーも込み入ってるところから、1巻だけではまだまだ全貌も見えてこないところではあります。
ですが読んでいて「夢」の話には刺激を受けますし、ここからの展開にもかなり期待できそうです。
展開的に星乃の見せ場がやや少ないため、今のところ脇を固める伊万里や葉月の方に魅力を感じてしまいますが、果たして正ヒロインはここから巻き返してくるか? といったところにも注目したいですね
海羽超史郎「STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート‐ 比翼連理のアンダーリン3」
ファンディスクのノベライズ版ということで日常パート増し増し。
前巻までで綯絡みでの不穏なエピソードがどうなることか……と冷や冷やしていましたが、この巻で描かれるエピソードはまゆりとのやり取りが主でした。
ただでさえ時系列整理の難しいシュタゲにさらに背景が加わった感じで難解ではありますが、日常パート編と考えれば楽しめる1冊でした。水着パートもあったし。
まゆり編でもあり、本編の裏側を補完を超えて大きく膨らませて行った感じは、シュタゲの世界が広がった気がして良かったです
白鳥士郎「りゅうおうのおしごと!13」
熱い、あまりにも熱い三段リーグ編を終えた今回は、8巻のときと似たような短編+書き下ろし構成のエピソード。
そしてあいたちJS組にとっての運命の一日、『最後のJS研』が描かれています。
プロ棋士や症例会員、女流棋士たちの熱い戦いは何度も描かれていますが、もちろんこの作品の中核を担う小学生組だって負けないくらいに熱い想いを抱えていて、そんなたぎるような熱さを5人の小学生たちがぶつけ合ってくれました。
次回からは最終章。
現実に追い抜かされそうと称されながらも、ここにある熱いエピソードは現実にも負けない大切なもの。
古寺谷雉「項羽と劉邦、あと田中」
「項羽と劉邦」でお馴染みの楚漢戦争の時代にタイムスリップした現代日本のサラリーマン田中さんの物語。
自分は元々「項羽と劉邦」が好きなので、かなり丁寧に史実をなぞって物語が進んでいるのは好印象です。
どのくらい丁寧かというと、反乱が起こるまでを丁寧に描きすぎて肝心の項羽と劉邦が八割方出てこないところとか……。
主人公である田中が日本人なのにかなり古代中国に馴染んでいて、時折抜けたようなやり取りをするのがコミカルで面白いです。
歴史小説として、楚漢戦争を知ってても知らなくても楽しく読めると思うので興味があればぜひ!
犬村小六「プロペラオペラ」
犬村さん渾身の、飛空士以来の恋と空戦の物語。
飛空士で描かれた空戦は一人乗りとか二人乗りの飛空機でしたが、今作は重雷装飛行駆逐艦が舞台。
小国・日之雄と超大国ガメリアの戦争と、その背景にある個人的な三角関係の恋物語が物語の主軸になっています。
空の物語ですが、どちらかというと空飛ぶ艦隊のような世界観で、大砲で撃ち合う空戦も非常に派手でおもしろかったです。
戦記物でありシリアスなストーリーながらも、時折ヒロインのイザヤやリオを中心にコミカルで平和なやり取りがあったりして、読んでいて楽しい作品でした。
クロトはツンデレ。
鴨志田一「青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない」
ちょっと待ってください、聞いてませんよ!
麻衣先輩という最強のヒロインを擁しておきながら、朋絵というさらに最強のヒロインを後追いでぶつけてくるの、良くないですよ!!!
何かのきっかけにより同じ日をループすることとなった咲太が、その原因と思われる後輩の朋絵と嘘の恋人同士を演じるというのが今巻のエピソードなのですが……
とにかく朋絵がめちゃくちゃ可愛くて、呆れるほどの人の良さには完全にやられてしまいました……。
朋絵が可愛いのは自明の理ですが、咲太も要所でカッコよさを発揮していてとても良かったです。
こんな素敵な距離感でイチャつける後輩が欲しいだけの人生だった、と悶えてしまいました。
朋絵にも幸せになってほしいのですか、どうにかなりませんかね、咲太さん……
PEYO「ボーイミーツマリア」
ボーイミーツガールともボーイミーツボーイとも言えない、ボーイミーツマリア。
ヒーローに憧れる純情少年大河が、男として生まれ女として生きた有馬と出会う物語。
男としても女としても中途半端になってしまった有馬の苦悩と、まっすぐにぶつかってくる大河の奮闘は、青春劇としてとてもおもしろいものでした。
大河のお父さんに対するイメージも、読んでいく中で変化が感じられて良かったです。
大河と有馬も純情で素直で可愛らしいので、ふたりの未来に幸あれ、ですね。
岡本タクヤ「学園者! 〜風紀委員と青春泥棒〜」
総生徒数3000余人のマンモス高校を舞台に、学園の様々なトラブルに顔を突っ込む風紀委員を主人公にした物語。
「学園」をタイトルに冠するだけあり、学園モノとしてこういうの読みたいよねっていうののど真ん中ストレートを射抜いてきた感じです。
生徒会長や執行委員、新聞部部長に不良たちといった一癖も二癖もある生徒たちが、「青春」を連呼する風紀委員の新入生に引っかき回されている感じがとても良かったです。
設定だけでなく青春泥棒との対決シーンもまさかの展開で、読み物としてとてもおもしろい作品でした。
キャラクターたちもかわいいし、やり取りもおもしろくて、青春を真っ向から描いていて、まさしく「学園モノ!」って感じの作品でした。
柊咲「裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る」
いや、めちゃくちゃエロティックハードファンタジーやないかい!
一般ラノベレーベルから出てるのを疑うくらい、ストーリーも口絵も挿絵もR-18状態でした。
めちゃくちゃ強い冒険者の主人公が奴隷の女性を競り落とすところから始まるハーレム物語ですが、1巻の時点ではまだハーレムギルドはおろかヒロインすら2名だけなのでその辺りは今後の展開に期待といったところでしょうか。
エギルの復讐、エレノアの復讐、サナとルナの謎……と物語も色々と波乱がありそうな予感はしますね。
知念実希人「神話の密室 天久鷹央の事件カルテ」
酒のない病室で泥酔する患者と、衆目監視のリングの上で死んだチャンピオンの事件。
どちらも神話に絡めたエピソードで、なるほど『神話の密室』……。
事件カルテにしては珍しく刑事さんたちがほとんど介入して来ず、統括診断部がメインになって解決したエピソードでした。
それだけ統括診断部の3人の活躍を見ることができたので、個人的には嬉しかったです。
『バッカスの病室』がどこかコミカルな解決方法だった一方で、『神のハンマー』は切ない物語の幕切れが印象的でした。