2022年7月に読んだ本まとめ

2022年7月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


山形石雄「六花の勇者 archive1 Don’t pray to the flower」

六花の勇者たちが、六花の勇者に選ばれる前の日常を描いた短編集。
普段の雰囲気が殺伐としているだけに、まだ平穏な日常の中にいる六花の面々を見るのは楽しかったです。
個人的に好きだったのは万天神殿を舞台にモーラ・ロロニア・チャモを描いたお話。
もともとモーラは好きだったのですが、今回彼女の意外な一面が見られてかなり良かったです。
意外な一面という意味では、「策謀と恋の日々」にてゴルドフに彼女を作らせようと画策するナッシェタニアもかわいかったですね。
短編とは別に断章があるのも、意味深で良かったですね。


碧野圭「凜として弓を引く」

この春から高校生となる矢口楓が、神社の中にある弓道場を見つけたことをきっかけに、弓道を始めるお話。
まず弓道に関する基礎的な説明が豊富に描かれていて、弓に興味があって読み始めた人ならかなり楽しめると思います。
そのうえで、弓道をやる意味だとか、古き文化を継承する大切さとかを丁寧に描いている印象です。
ひとつひとつの事件や出来事は大きくありませんが、それらが積み重なって弓道にのめり込む楓を演出していて、素敵な作品でした。
楓が所作のことで叱られていると、読んでいるこちらも背筋がピンとしてしまいます。


竹宮ゆゆこ「あれは閃光、ぼくらの心中」

凄まじい作品でした……。
15歳で家出をした嶋と、彼を拾ったホストの弥勒。
そんなふたりの奇妙な同居生活を描いているのですが……とにかく溢れかえる感情の描写が圧倒的でした。
ピアノから逃げ出した嶋が、最悪な人生をぼんやりと生きてきた弥勒が、互いに影響を受けあって悶えながら這い進んでいく臨場感が素晴らしかったです。
序盤から中盤にかけてはだらだらと共同生活を送り、終盤に入ってからは一気に物語が進み、そこからはもうのめり込むように読んでしまいました。
物語の構成もうまく、そこにつながってたか!と唸らされます。
嶋と弥勒の関係は不思議なもので、友情とも恋愛とも言い難い特殊なものですが、それでも互いに互いを見つけあった唯一無二の関係性が描かれていて……嶋と弥勒、ふたりだけの世界に触れたような感覚がありますね。
めちゃくちゃおもしろかったし、心が震えました。竹宮ゆゆこさん、すごすぎます……


犬塚惇平「異世界食堂 1」

日本の食堂の扉と繋がった異世界の住人たちが、あらゆる料理を食べては感動するお話。
料理を美味しそうに食べるリアクションを読むのが楽しく、グルメ作品が好きならまず間違いなく楽しめる作品だと思います。
異世界の住人と一口に言っても、老若男女から身分の高低、人種を問わず、果ては人外の存在であろうともお客さんとして来訪してくるのがこの作品の特徴といえるでしょう。
この巻では客が料理を食べて感動するパターンに終始しておりやや食傷気味になったので、次巻からは客同士がより関わり合って物語が広がっていくことに期待したいですね。


東野圭吾「禁断の魔術」

ガリレオシリーズの長編。
科学技術のあり方、使い方について、改めて考えさせられる一作でした。
湯川のかつての教え子が事件に関わっている点から、ガリレオ先生がいつになく動揺していたり困惑していたりするシーンも多かった印象です。
序盤からいろいろなシチュエーションでの事件が描かれ、それらが徐々に結びついていき、ひとつの大きな事件の流れとして浮かび上がってくる構成がとてもおもしろかったです。
伸吾と由里奈の関係性がとても好きだったので、事件解決後のその後について、いろいろと思いを馳せてしまいます。


仲邑エンジツ「おぼこい魔女はまじわりたい! 第1巻」

魔女見習いの女の子が、一人前の魔女となるためにセックスをしたがるお話。
序盤の古森さんがずっと全裸(ただしローブは羽織っている)だったのが良かったです。
まだ付き合ってないけれど周りから付き合ってる認定をされていたり、最初浮いていた古森さんがとあるきっかけでクラスに馴染むエピソードは定番ですがやはり楽しいものでした。
「そのうちできたらいいな」の破壊力たるや……。


阿賀沢紅茶「正反対な君と僕 第1巻」

めちゃくちゃおもしろかったです。
明るいギャルの鈴木さんと生真面目な谷くんという正反対なカップルのラブコメ。
その設定の時点である程度勝利が約束されてるんですが、会話の端々のギャグや演出もひとつひとつがおもしろく、漫画としての完成度がものすごく高いです。
ギャルと優等生の身分差を生かしたラブコメとしての良さもあり、そのうえで生じる悩みもストレスを感じるほどの重さではないのがありがたい。
周りを取り囲むキャラクターたちの魅力もあり、1冊まるごととても楽しい作品でした!


時雨沢恵一「レイの世界 ―Re:I― 1 Another World Tour」

さっくりと読みやすい作品でした。
歌手と女優を目指す新人アイドルのもとに、様々なお仕事が舞い込んでくるお話。
「キノの旅」にも通じるものがあるような、時雨沢恵一さんらしい作品でした。
エピソードとしては、小さな田舎町の音楽イベントで歌うことになる「初仕事の思い出」と、映画の役者として死ぬことを求められる「ロウソクは消えない」が好きです。
読みやすく含蓄があって、個人的には好きです。
レイ自身のことや、社長や因幡など、有栖川芸能事務所のメンバーに謎が多いので、そのあたりが気になるところではありますが……?


暁佳奈「春夏秋冬代行者 夏の舞 上」

春の巻も相当でしたが、この夏の巻でも相変わらず悪意と殺意に満ちていました。
あまりにも主人公格以外に悪者や裏切り者が多すぎて、読んでてちょっと落ち込むレベルですね。
そんな中で春の代行者と冬の代行者の遊園地デートは唯一ほっこりできるエピソードで良かったです。
代行者たちの共同戦線から下巻の巻き返しに向けての準備が着々と進められていき、これからの展開がとても楽しみ。
特に今回は葉桜姉妹の婚約者たちがどういった立ち回りを見せてくれるのか……そしてどんなふうに葉桜姉妹の心を解きほぐしてくれるのか。
物語的にも恋愛的にも期待。


個人的な今月のお気に入り作品トップ5

第1位/あれは閃光、ぼくらの心中

第2位/正反対な君と僕 第1巻

第3位/禁断の魔術

第4位/六花の勇者 archive1 Don’t pray to the flower

第5位/凜として弓を引く