追う追われる、ただ漂う
大学受験に追われていた高校生の頃
受験の先の人生に確かな希望をもっていたわけでもなく、かといって、今まで乗って来た軌道を外れて新しい道を開拓する器量をもちあわせているわけでもない
それでも毎日、毎週、毎月、模試と判定と評価がやってくる
本当に望んでるのかもわからないようなものから追いかけられ続ける
こんな毎日、早く抜け出したい
あの頃はそんなことばかり考えていた
周りの価値観に寄せて抱いた安直な夢をだいじに握りしめて
代わる道を探ろうともしてなかった
それでいて
自分が心から望む「なにか」を追いかける人生を切望していた
進学し、就職してもその「なにか」は見つからなかったけれど
とりあえず追われることはなくなった
けれど、そんな日々が幸せかというとそうではなくて
心から追いかけたいことを探す旅が始まる
よくある話
探せば見つかる、というものでものなくて、
渦中にいるときは地獄でしかないような経験とか、
不完全燃焼でくすぶって、
うまく息ができないような体験とか、
いいこともそうでないこともすべて
これまでずっと積み上げてきた体験が一つ残らず燃料となって
ある日とつぜん臨界点に達するように
それと出会い、そこから20年近く、ずっと探求を続けている
あの頃、切に願っていた「心から望むなにかを追いかけ続ける」人生を生きている
たしかに、夢中になれること、追いかけ続けられるものがあるのは楽しい
ありがたいことに、それが仕事になった
ワクワクとやりがいと達成感
生きている感覚に心震え心燃やす
そんな、追いかけ続ける日々を20年続けてみて、
ふと、
なんにもしない、ただ在るだけ
の豊かさにもようやく気づくことができた
ほんのつい最近のことだけれど・・・
限りなく透明でやさしい海のなかで
波に身をまかせて海藻といっしょに揺れる心地よさ
サンゴに群れる熱帯魚を見つけて興奮したのもつかの間
自分もこの海のいちぶだと、
もっというと、
この美しい自然が形成する世界と自分のあいだに
分け隔てなどなく、もともと一体なんだと、
ただ漂いながら
静かで穏やかな確信と安らぎが満ちていく
ああ、追うも追われるも
そして「なにかを成す」も「ただ在る」も
どちらも自分で、
どちらもこの地球のかけがえのない一部なんだと
からだまるごと感じた
10月最後の週末、沖縄の離島にて