Badの意味を知っている?
マイケル・ジャクソンの有名な曲、Bad。
誰もが一度は聴いたことがあるかもしれません。ひょっとするとミュージックビデオも観たことがあるかもしれない。
けれども、歌詞や曲の意味が分かっている人って、どのくらいいるのだろうか。
Badを英語の辞書で引いてみましょう。
(道徳的に見て)悪い、不道徳な、不品行な、邪悪な
品性を欠く、粗野な
つまり、辞書的にいくと、
I'm Bad!と歌っているマイケルは、
「俺はワルなんだぜー!」ということを何度も何度も叫んでいることになりますね。
最終的に「世界で一番のワルはだれだ!」とも世に問いかけている。
自分が一番悪い奴なんだ!という主張。
それがBadという歌の内容。
なるほど。なるほど。
そうではないんです・・・・!
たぶん、多くの人はそういう解釈でいるのではないかと思うんですけど。
違います。
実は、この歌は「俺は悪いやつなんだ!」ということを主張したい歌ではないんです。だから翻訳も、かならずしも「ワル」という言葉があうわけではありません。
じゃあ、何が合うのか?と問われると、すごく難しくて、困ってしまうのだけど。
背景を理解している人は、「俺は最高だ!」と訳しています。とても不思議ですよね。
この歌は、悪ぶるのがクールとされていた時代に、「本当のかっこよさとはなにか」ということを問いかけた歌なんです。
かっこいいこと=悪ぶること
まじめ=ダサい
この構図に意義申し立てをしたかった。
本当のかっこよさとは、悪ぶってふるまうことではない。
僕が真のかっこよさを見せてあげよう。
つまり、これこそがBAD(かっこよさ)だ。
Badという字面はそのままに、その意味そのものを変えよう、固定観念を覆そうという試みなんです。
ライバル プリンスの存在
マイケル・ジャクソンには永遠のライバルがいます。
プリンス。
通称、殿下〜(と日本のファンから呼ばれているらしい)。
ギターも弾ける、踊れる、歌える。そして、超奇抜!すごくとがってて、やんちゃで、まさに典型的「ワル」のイメージなお方です。パープルレインが有名ですね。スケートの羽生選手が彼の曲を使ったこともあります。
同じくらいの人気を保持している二人は、どうしても比べられます。
「マイケルは優等生、プリンスはワル」
みたいなイメージが世間では通っていました。
どうしても、ワルの方が話題性があります。
そして、Thriller以後の音楽業界では、エッジが聴いたものがもてはやさるだろう…という時流がありました。
当時、売れ売れのマドンナも尖ったイメージで話題でした。
(この三人同級生なんだよね・・・)
そんななか、
「ちくしょう!僕だって!僕だって!」
と、反抗心を持って作られたのが、Badなんです(笑)
優等生と言われ続けたマイケルが、自分のやり方で尖った結果。
そもそもBadはプリンスとの共演を意図して、当初は作られていました。
共演を打診し、デモの段階でプリンスにも話しが持ちかけられていました。
マイケルはワルのイメージで通っているプリンスと、本当のワルとは何かについて、ガチンコバトルがしたかったのです。
けれども、共演は破談。
「この曲は俺がいなくったって売れるさ」
とプリンスは断ってしまいました。
「歌詞の第一声、Your butt is mine(お前のしっぽはつかんだぞ)をどちらが歌うかで勝負は決まるじゃないか、そんなの嫌だったんだ」
と、のちに茶化したりもしています。
でも、曲は気に入って、自分なりのアレンジバージョンを作ったりもしている…(こんな嫌味なことはやめよう…と言って破棄したらしいけど。聴いてみたかったよ…!(笑))
という経緯があって、
今日、知られるBadが完成しました。
Badのコンセプトは、ライバルに対する対抗心から生まれたということが、一つ言えるでしょう。
実話に基づいたミュージックビデオ
こうしてマイケル単独で製作された、このミュージックビデオ。
実は20分近くある長編ビデオだってご存じでしたでしょうか。(ほんとはショートフィルムという言葉が正しい…)
一般的に知られている黒ずくめで、踊っている歌のパートの前半に、モノクロのドラマが隠れています。ちなみに監督は、タクシードライバーで有名な、マーティン・スコセッシです。
マイケルはダリルという少年を演じています。
Badの歌のシーンは、この少年の妄想というか、「こうだったらいいのにな」という願望を表した部分なんです。
だから劇中、そこだけ色がついています。
貧しい地域で暮らしているダリル少年ですが、彼はその地域でも珍しく、街から離れた寮生の高校に通っています。
休暇期間になって、自分の故郷に返って来て、久々に友達と再会しました。
けれども、一人学校に行って社会性を身に着けた彼は、昔ながらの友達となじめなくなってしまいました。
いつもどおり、「カツアゲをしようぜ」と言われても、それが正しいことではないとわかっている。乗り気ではない彼に、悪友たちもイライラし始め、空気は険悪なものに…
(この相手役はウェズリー・スナイプスです)
その険悪ムードが高まった末に、
「お前たちは間違っている。本当のワルを見せてやる!」といって、展開されるのが、BADの踊りのシーンなのでした。
そして、踊り終わった後、友人は理解を示し、仲直りをして幕を閉じます。
なにも知らないで見ると、ちょっとわかんないこの話。
実話のとある事件に基づいています。
主人公にあたる、本当のダリル、黒人の少年は、友人と仲たがいをした末に
射殺されてしまっているのです…。
願望を語った歌のシーンの、現実にはとても痛ましい出来事が隠されていたのでした。
結論、BADはかっこよさの定義への疑問の投げかけと、社会への批判が隠されている、そんな深い曲なんです。
深すぎるのと感性が独特すぎてなかなか読み込めないけど笑
単純に歌自体も好きだけど、意味がわかる楽しくなります。