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タイムコードケーブル選定の苦悩

新しく導入したZOOM F6とTC接続したSONY FX3

ライブ撮影時の空間・ライン音声収録用として、新たにZOOMのフィールドレコーダー「F6」を導入しました。音割れ事故を防ぐ32bitフロート録音も魅力的でしたが、何よりタイムコード(TC)の出力が便利で、既存のカムコーダー(SONYのFX3やHXR-NX80など)と同期させる事による録画した動画と音声のリップシンク(タイミング合わせ)作業が格段に楽になりました。

ただ、タイムコードの同期を実現するために事前にインターネットで情報を集めたにもかかわらず、大変苦労したのが「BNCコネクター(オス)ー3.5mmミニプラグ(オス)」ケーブルの選定でした。中には同じ間違いをされている方もお見受けしましたので、少しでもお役に立てたらと思い情報を共有させていただく事としました。(ここでは、ZOOMのフィールドレコーダー「F6」からタイムコード(TC)を出力してSONYのプロフェッショナルカムコーダー「FX3」に入力して同期する場合のケーブル選定を例に記述しています。)

VMC-BNCM1

記事をここまで読み進めていただいている方にとっては、SONY製カムコーダーのマルチ端子にTCを入力するためのアダプター「VMC-BNCM1」が必要な事は説明不要かと思います。このアダプターについてはSONYの純正ですので、大手量販店やネットショップでから注文していただければ手に入ると思います。ただ、このアダプターだけではZOOM製F6のTCに接続する事は不可能で、更にここから接続に必要な「BNCコネクター(オス)ー3.5mmミニプラグ(オス)」ケーブルの選定に翻弄されました。ちょっと分かりにくいですが、以下が接続方法と問題のケーブル位置になります。

[FX3]マルチ端子 ← microUSB[VMC-BNCM1]BNCメス ←
  ← BNCオス[問題のケーブル]3.5mmミニプラグ ← TC IN/OUT[F6]

ネットショップで検索すると、この問題のケーブルは多数ヒットします。中には「タイムコード」「TCケーブル」と記載されたものもありましたが、念のため5本購入してみました。最初は接触不良のような症状が数本発生したものの5本とも問題なく動作したように見えたのですが、後にそれが誤認だと気づき、すべてテスターでの導通やバラして結線を直接確認する事で動作の確証を得る事ができました。実際に市販のままの状態でF6とFX3のTC同期を正しく満たすものは5本中1本だけでした。

ZOOM F6の取扱説明書に記載されているTC結線

まず、F6の取扱説明書にはTCの入出力部分である3.5mmミニプラグの情報が記載されていますが、TRS(チップ・リング・スリーブ)型式となっており、他の機器への出力にはチップではなくリング部分が使われていました。


タイプA(× 誤動作します)

最初この記述に気づかず、TS(チップ・スリーブ)型式(図:タイプA)のものを購入したため、接続・設定をおこなっても素直に同期されない症状が発生しました。ここで問題なのが、同期設定を開始した後にF6本体へ3.5ニプラグを差し込むと同期してしまうのです。「あれ、おかしいな」と思ってミニプラグを抜き差ししたり、設定済機器の電源を入れてからミニプラグを差し込んだりすると同期してしまうので、最初は接触不良と誤認していました。この症状が発生する理由は簡単で、差し込む途中にケーブル側に結線されたチップ部分とF6本体内部のリング接点が差し込む時に接触するため、その瞬間だけ同期されるというカラクリだったのです。


タイプB(× 誤動作します)

F6の取扱説明書を読まれてTRS(チップ・リング・スリーブ)型式のケーブルを購入された方にも実は罠が潜んでいます。市販されているケーブルの中には、リング部分が未結線のものがありました。(図:タイプB)この場合も症状はタイプAと同じで、差し込んだ状態で電源を入れても同期されませんが、本体電源を入れた後や同期設定を開始した後にタイプBのミニプラグを差し込むとやっぱり一瞬だけ同期してしまいます

タイプAやタイプBを接続して一瞬でも同期してしまうと、見た目には接続先のFX3とタイムコードが同期しているように見えてしまうので気付くのが遅れてしまいました。実際には同期されていない状態なので、このまま利用していると徐々に動画と音声がずれていってしまう事になっていたため、後で気付いた時は冷や汗が出ました。


タイプC(〇 正しい動作)

実は、最初から色々試してみようと複数本のケーブルを購入していて、たまたまその中に正しい動作をおこなう結線のケーブルがあったので本件が発覚しました。そのケーブルはTRS(チップ・リング・スリーブ)型式でチップ部分とリング部分の両方に結線されていました。(図:タイプC)

FX3側にタイムコード出力を送るために必要である、リング部分への結線がおこなわれたケーブルかどうかを調べる方法は、ケーブルをすべて接続した状態でF6の「メニュー」から「タイムコード」を選んで「Jam」メニューの「Restart」を実行してください。任意に指定したタイムコードがFX3側にも反映されれば正しい結線のケーブルですが、ずれてしまった場合はケーブルがタイプAやタイプBのような結線の可能性があります。

タイプAのケーブルは勿論リング部分がGNDに落ちてしまっているため残念ながらそのまま利用する事はできませんが、タイプBのケーブルはチップ部分とリング部分をハンダなどでバイパスする事で利用可能となりますので、タイプBのケーブルを購入してしまった方は是非お試しください。

ケーブルの改造及び利用はあくまで自己責任でお願い申し上げます。接続した機器などにトラブルが発生しても当方は責任を負いかねます。実際に動作したケーブルの具体的な商品名につきましても、ここへの記載は控えさせていただきます。何卒ご了承ください。

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