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初逮捕 第三話

「今から取り調べをする」
俺は初逮捕を迎えた。

手錠をされたまま取調室の椅子に座らせられる。
手錠に繋がっている縄があるんだが、手錠をされる際、それを必ず腰に巻かれる。
椅子に座らせられると、まずその腰に巻かれた縄と椅子を縛られる。
そうしてから手錠を外され、逃げ出すとしたらパイプ椅子と一緒にしか逃げられない状態になる。

逮捕され警察署に連れて行かれた初日、
罪状を聞かされ、自分らが人を殴り金をとった件で捕まったことがわかった。
リュック眼鏡ヤンキーも当然、その件だった。
他にも一緒にやったやつがいて、その一緒にやったやつも逮捕されていた。
(これからそいつのことを高身長イケメン野郎と呼ぶ。)

その日夜までぶっ通しで、取調べをされた。
顔写真、全身写真、指紋の全てを取られた。
昼飯は、刑事が買ってきてくれた。
俺はすげぇ後悔の気持ちを持ちつつ、飯を食ったが表には出さなかった。
どこまでいっても強がり、弱みを出すことをしなかった。
取調べの最中、色んな誘導尋問があったり、リュック眼鏡ヤンキーと高身長イケメン野郎はなにを喋っているのか、なにを黙っているのか。
そんなことを考えながら、言葉を選び取調を受けていた。
やはり心のどこかで、少しでも罪を軽くしたい、あれもこれもバレたらどうなってしまう。と
あれこれ考えて、極力黙っているようにした。

取り調べを始める際、必ず
【黙秘権】というものについて毎回説明をされる。
あなたは秘密を黙っている権利、喋らなくてもいい権利はありますよってものだ。
要は人権は捕まったあなたにもありますよってことだろ。
俺は言葉に困り、なにを喋ったらあの件がめくれるとか悩むときには、ひたすら黙った。
なにを言われても黙る。黙秘権。
それでも刑事は
全部喋れよと怒鳴ってくる。
黙秘権の説明をお前がしたのに矛盾してんだろ、と言い合いになることもしばしばあったな。

そんなこんなで一日の取り調べが終わったんだが、
その後はどこにいくと思う?

そう、留置場だ。
俺はこの時初めて留置場の存在を目の当たりにした。
取り調べが終わり、また手錠をはめられる。
そのまま腰縄を持たれ誘導され連れて行かれる。
警察が俺をじろじろ見てくる。
中学生の見栄なのか、睨みをきかせなんてことない顔で歩く。

ある一室に連れて行かれた。
【看守】と呼ばれる留置場の担当をしている警察が待ち構えていた。
「解錠ーーーー!!!」
とその看守は大声でいいながら、重そうな扉を開ける。
そこに入ると、そこはまだ留置場ではなかった。
もう1枚、分厚い扉があった。
その部屋で、本人かどうかの確認をされた。
また先程と同様、
看守はでけぇ声を出して、扉を開ける。
そこには、鉄格子だらけの部屋がたくさん並んでいた。
興味深そうにこちらを見てくる、捕まったやつら。
成人と少年は部屋が違うみたいだ。
俺が通り時に、カーテンをかけられる部屋があった。
恐らくそこには捕まっている成人がいるんだろう。
少年保護法と謳っているだけに、俺の姿は20以上のやつには見えないように工夫はされてるんだな。って思った。

まずは鉄格子の部屋じゃなく、物品を確認したり、変なものを隠し持っていないかの確認をするため、別室に連れて行かれた。

そこでは服を全て脱ぐように命令された。
俺はなんかのマンガか、噂話に聞いたことはあったが、けつの穴まで全て見られるのか、あれは本当なのか?と心配になった。
服を全て脱ぐと、恐れていたことを言われた
前屈みになってけつを見せろ。と。

やはり全てを調べてくる。
俺は心の底から恥ずかしくなった。
情けなくなった。なにしてんだろって。
それでも俺は平然を装っていた。

今までけつに何かを隠し持っていたり、タバコを隠して持っていき吸ってるやつとかがいたらしい。
そのため、ここまで調べるんだと俺は聞かされた。

持ち物をすべて確認され、留置場のルールもすべて説明された。
あと俺には名前じゃなく、
番号がついた
今後は〇〇番と呼ばれることになるみたいだ。

携帯はすでに刑事に押収されていた。
そして、部屋にはもうすでに一人いると聞かされた。
共同部屋だ。
留置場のルールとは、その当時の記憶を辿り思い出すと、7時起床(8時だったかも知れない)の9時就寝。
朝起きてから、掃除の時間がある。
共同部屋の場合は、トイレの掃除をするか、床に掃除機をかけるかで分かれるみたいだった。
そして洗顔、歯磨きをし、そこからは取り調べに呼ばれるか、それがなけりゃ部屋にいるかのどちらか。
面会は人によって会えるひとの範囲は違うが、基本的に親族はできるみたいだった。

夜は8時頃に歯磨きの時間があり、布団を外から部屋に運ぶ。
9時には消灯だ。
自分の持ってきたお金や、差し入れしてもらったお金で買えるものもあるみたいだ。

ひととおりの説明を受け、部屋に連れて行かれる。
そこには髪の長い、すこしひょろっとした目つきの悪いやつがいた。
部屋の鉄格子の扉を開ける時にはまた、
「解錠ーー!!!」
と看守が叫び、重い扉を開けられる。


部屋にはなにもなかった。
トイレがあるだけだ。

トイレには小窓があり、そこから見えてしまう作りだ。
自殺するやつも居たみたいだから、その対策らしい。

普段部屋にあるものはトイレと毛布だけ。
あとは何もない。
外の本棚から本を3冊まで持っていくことができるが、一日の途中で変えることはできない。
だから部屋にあるのは
トイレ
毛布
本3冊
一日中取り調べがないことだってある。
そんなときはひたすら本を読むか、天井を眺めるか、筋トレするかしかない。
一日中暇なときは、ほんとに辛い。
時計もない。
時間がわからない。
昼食配りまーすと言われれば、
あー12時くらいか。ってわからるくらいだ。

飯は3食でる。
留置場の部屋の大きな扉の左下にちっちゃい窓みたいなところがある。
食器口だ。
飯の時間になるとそこを開けられ、そこからご飯を配られる。
飯が出されるだけマシだとは言われると思うが、中にいるやつからしたら、本当に食えたものではない。
朝飯なんか特にだ。
おかずなんてない。
米もまずい。
中学生の俺はやってられなかった。

飯だぞー!!とその食器口から通される飯をみて、すごく情けない気持ちになる。
捕まったんだと実感する。虚しかった。

一緒の部屋になったやつは中学生の俺からして3個年上の別の地区の暴走族の総長だと言っていた。
本当か嘘かはわからないが、色々と喋った。
中に入ると、やはり寂しさからか見栄がすこしなくなる。
そしてよくしゃべり、自分と似たような状況のやつを見つけては安心したがる。
そいつは、鑑別所ってどういうところかっていうのを教えてくれたら。
2回目の逮捕らしいから、よく知っていた。
留置場の後には、どうなるのか。
この後俺はどこにいくのか、どうなるのかも全くわからなかった俺は、色々情報を集めようと必死だった。

そんなことを考えて、喋りながら留置場初日は終わりを迎えた。
逮捕された初日の夜、本当に眠れなかった。
一睡もしていないんじゃないかな。
寝ているフリをしていないと、看守がうるさいから夜の間中天井を眺めていた。
色々な感情が湧いてくる。
帰りたい。普通に家で寝たい。

ふと、親の顔が浮かんできた。
俺は別に親に不満もなく、恨んでいたこともない。
ただただ、ぐれてしまい、不良を極めたかっただけだった。
申し訳なさがあった。
寝れない夜にそんなことばかりを考えいた。

気付けば俺は泣いていた。
静かに泣いた。涙が止まらなかった。
となりにいる総長に悟られないよう、涙を流していた。

【初逮捕】完

【それからの留置場生活】へ続く


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