留置場生活 第四話
寝れたのか、寝れてないのか。
それすら分からないくらいの感覚で目覚める。
目の前は少し黒ずんだ天井。
隣には昨日会ったばかりの総長。
「起床点呼ー!!」
誰かのうるさい声だ。
「あ、看守か。そうだ。俺は捕まったんだった。」
俺は朝から実感した。
虚しい。帰りたい。これしかなかった。
だけど起きなきゃ、しょうがない。
留置場での、はじめての朝だ。
要領もなにもわからないが、見様見真似でやるしかない。
隣の部屋から順番に部屋を解錠し、開けていく音がする。
「解錠!!」
俺の部屋にきた。
布団はすでに畳んである。
それを外にだし、押し入れにしまう。
そのまま看守に見られながら歯磨き、洗面を行い
部屋に戻る。
次は掃除の時間だ。
またも解錠され、重い扉が開く。
看守は掃除機を持っている。
それを受け取り、俺は畳みたいな、ツルツルした床を掃除機で掃除した。
総長はトイレ掃除をだるそうにやっている。
なんとなく要領は掴めた。
その後は本棚に連れて行ってもらい、3冊まで部屋に持ち込んでいいとのことだった。
マンガもあるし、小説もある。図鑑みたいなのもあったな。
俺はそこで頭を働かせた。
仮に一日暇だったとしたら、マンガ3冊じゃ1日持たない。
小説を2冊混ぜるしかねぇか、、。
いや、マンガ2の小説1か?
マンガ3も捨てがたい。
初日だしマンガ3冊で行ってみるか。
俺は頭を働かせたのにも関わらず、すぐ読み終わるであろうマンガ3冊を部屋に持ち帰った。
しばらくして、俺は呼ばれた。
重い扉を開けられ、手錠をされる。
裁判所に行くらしい。
そう、捕まった人間は必ずまず、裁判所に行かなければいけない。
そこで罪状を確認されたり、弁護士をつけれるがどうしますか?とか、
家族に連絡しますが、誰にこの捕まっていることを伝えますか?
など、色んな複雑な手続きをしに行くんだ。
この時はもちろん、そんなことはなにも知らず、連れて行かれた。
初の護送車だった。
成人のやつらも乗ってきたのか、俺の周りのカーテンだけ閉められた。
何人か一緒で裁判所に行くんだろうなって思った。
揺られる車内。
さすがに外は眺められるようになっていた。
ただ、まだ全てに鉄格子。
両手には手錠。
それでも俺は外を眺めた。
護送車からみる社会は、すげぇ明るかった。
眩しすぎた。俺は帰りたかった。
タバコもそのころにはもう、中毒化していて、タバコを吸ってる人を見つけては、羨ましがった。
裁判所はめちゃくちゃに待たされる。
平気で3.4時間待たされるんだ。
それには本当に驚かされた。
両側を刑事に挟まれ、真ん中でずっと待機だ。
やってらんなかった。
車で待つ時間もあり、ぼーっと外を見てたんだ。
そしたらそこには、高身長イケメン野郎も刑事と一緒にいた。
なんだか、少し安堵した。
集団心理ってやつか。
あいつも同じような状況だということがわかると、
少し気が楽になった。
そんなこんなで、ずっと待たされていたが、いざ呼ばれてみるとすぐに手続きは終わった。
朝出てきて、気づけばもう夕方とか夜になっている。
裁判所ってすげー混む。
そんな記憶しか残らなかった。
弁護士は無料でつけられる国選弁護士というものがあったので、それを頼んでみた。
少しでも早く出たいという思いと、親に色々と伝えたいことがあったからだ。
正直制度については、未だに理解をしていない。
全ての手続きが終わると、また護送車に乗せられゆられながら、もといた留置場への戻ってきた。
気付けばもう夜だ。
9時には就寝し、また朝が来る。
取り調べがある日も、ない日もあった。
取り調べに対しても誠実に応えるわけでもなく、隠していることもたくさんあった。
少しでもバレたくなかったんだ。
ただそんなわけにも行かず、別件がばれ
【再逮捕】
留置場っていうのは、そこにとどめておける期間が決まってるんだ。
10日更新の最大20日勾留。
基本的に最低20日間はいることになるんだが、取り調べをそれ以降もしたい場合や、まだ留置場に置いておかないといけない場合、なんらかの措置を取られ、勾留期間が延長される。
今回は再逮捕という形で、また20日間が繰り返された。
取り調べもしっかり終わりかけていた。
ただ俺はまだ隠していることもあった。
そんな状態のまま、取り調べのない日が続く。
ある程度調書を取り終わり、あとは20日待って鑑別所へと移送されることが決まった。
取り調べのない日は本当にやることがない。
天井と友達にのるか、小説を読みまくる以外にない。
俺は割と推理小説ばかり読んでいた。
そんなこんなで鑑別所に移送される日。
俺はやっと留置場の生活を終え、まだ留置場よりマシと言われている鑑別所にいけることを喜んでいた。
留置場から鑑別所へは、護送車でいく。
確か、鑑別所に行く前には裁判所にまた行かなければ行けない。
そこで県内、その日に鑑別所にいくと決まっている奴らが集まってくる。
そいつらが一斉に裁判所で手続きを行い、みんな鑑別所に連れて行かれる。
俺の共犯のやつも当然いた。
高身長イケメン野郎だ。
少し面白かった。懐かしい気がした。
お互い疲れ果てた顔をしてたんじゃないか?
ま、俺は内心鑑別所に行くのが少しドキドキしてたがな。
裁判所での面倒な手続きが終わり、鑑別所にいくやつらが一斉に護送車で送られる。
車に揺られ、しばらくしたら車がある建物へと入っていく。
ここが鑑別所か。
俺はドキドキしていた。
車が車庫に入り、逃走防止のシャッターが下される。
その後扉を開けられ、中に入る。
手錠を外される。
教官みたいな奴らが5.6人立っていた。
隣には高身長イケメン野郎。
嬉しさや、安堵感からか。そいつに対して笑ってみた。
そしたらさっそく
「お前なめてんのか」
みたいな事を言われ、怒鳴られた。
「お前がなめてんのか」
って俺は内心思ったがなにも言わなかった。
基本的に共犯同士ってのは特に、関わらせないようにしているみたいだった。
中でもこいつと顔を合わせることはないんだろうな。って思ったら少し寂しくなった。
氏名、生年月日、住所を全て言わされ、物品の確認等、留置場と同じような事をされた。
俺の想像していたような場所とは違った。
すでに憂鬱になっていた。
『今日から俺も鑑別所生活が始まんのかよ』
お先真っ暗だった。
つづく