作曲が苦手だった

編曲が好きだった。

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長らくピアノを習っていたけど、中でも小学生の頃通っていたのは演奏以外にもいろいろやるコースで、作曲した曲で出る発表会が毎年あったりして、少なくともこの世に6曲は私が作った曲がある。

もう10年以上前のことなのであまり覚えていないけど、これがたしかそんなに得意でなかった。

いや、ソナタ作ってこいとか、モチーフいくつ作ってこいとか、そう小学生に言われてもまあ思いつかない。

毎回どうにかこうにか絞り出した、そこまで愛せたか分からない曲たちを世に送り出していた。

中学のとき、何かの折でそのフレーズを弾いて、人に言われた。
「なんかどっかで聴いたことある気がする」

*
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ヨルシカの『盗作』に、そんな記憶が浮かぶ。

客観的な事実だけなら、現代の音楽作品は一つ残らず全てが盗作だ。意図的か非意図的かなど心持ちでしかない。メロディのパターンもコード進行も、とうの昔に出尽くしている。*1

さあ曲を作れ、と言われても思いつかなかった。だって、どうやったって知っている曲に影響される。

でも自分が書いた譜面を人が音にしてくれることは、この上なく楽しくて、奏者が喜んでくれたりするともっと嬉しい。
だから私は、吹奏楽部で編曲ばかりやった。

中でもメドレーが好きだった。その年やった曲とか、適当に演奏者が挙げた好きな曲とか、まあそりゃ市販のメドレーにはないだろうというラインナップの曲たちを1曲に仕立てた。

今ある素材を切り貼りして、ふいに面影を忍ばせて、自然に華麗に次のフレーズまで導く。私はたぶん、0から1を作るより、今ある1を与えられた条件の中で10にするのが得意な人間のようだった。

ヒゲダンスからその時やってたCMソングに、SMAPからももクロに。似たリズムから、調性から、うまく移動できる特徴を探して、思い切って音を配置する。そうやってできた曲はどれもお気に入りで、打ち込みで作った音源を度々聴いた。

でもまあ、編曲は編曲で、吹奏楽で扱う曲なんてほとんどが著作権切れてなくて、大っぴらに言えるものではなくて。私的利用の範囲で。

俺は、音を盗む泥棒である。*1

あの楽器とこの楽器でユニゾンさせたいとか、この調性で書きたいとか、ちょっとしたアイデアはある。

いつかはもう一曲ぐらい作ってもいいかもしれないけど、泥棒にならないと、いいな。

*1 ヨルシカ『盗作』概要欄より


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