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【第6話】-駅のホームとイヤホンと、特別な友だち-

マリンも幼稚園の頃からピアノを習っていた。
音楽は好きだったし、最初の頃は弾ける曲が増えていくのも楽しかった。
一曲弾けるようになると先生が貼ってくれるシールも嬉しかったし。
でも……。マリンは言った。

「私は逆。音楽は好きでピアノも習ってたけど、いつ頃からだろう、気
がつくと歌う方が楽しくなってたんだ」

もちろんそれはまだ人前でとかではなく、ただ自分で歌っているだけだったけれど。ちょうどそのとき音を立てて電車が入ってきた。
けれど、何となくそれに乗る気にはなれなくて「座ろっか」と二人でホームの椅子に座る。
「不思議だね」と、並んで話す。
お互いピアノがきっかけだったけど、歌うことが好きになったマリンと曲を作り始めたあみ。
そこに通じているのは音楽で、何か楽しいことが起こりそう、特別な友達ができそうな気がしていた。連絡先を交換して、マリンはあみと別れた。

帰りの電車に乗るとすぐ、あみの作った曲が届いた。イヤホンから流れてきた瞬間、トクンっと心が弾む。

「すごい、こんな曲作れるんだ……」
それは自然と口ずさみたくなる歌で、マリンが「歌いたい!」とメッセージを送ると、すぐにまた別の曲が送られてきた。
グワーっと体の中から興奮が湧き上がってくる。

「ね、明日いろいろ話そう!」

マリンはベッドに入っても、翌日のあみとの約束が楽しみで、なかなか眠れなかった。