【第26話】-もしかしたら……彼を信じて-
「先生、文化祭のステージに一緒にあがってください」
高島から本村にそう伝えてもらったものの、マリンは半分後悔していた。
「唐突すぎるよね、それに先生はああいう形で学校を辞めたわけだから、きっとあまりいい感情じゃないはずだし、そこに文化祭に出てって言ったって」
閃いた時には、めっちゃいいアイデア!
これで本村ともあみとももう一度……。
そう舞い上がってしまったのだけど。
高島からメッセージが入りドクンっと緊張する。
【やっぱ無理だった。でも、応援してるってよ】
というふきだしの中を読み、ああやっぱりか〜。と机に伏せる。
あみからだって返信はない。今度は既読にはなっているけれど。
やっぱり自分勝手だったかもしれない、と思っていたら、ちょうどあみからのメッセージを受信した。
「まあ、そうだよね。あみも断るよね……」
そうぼやきながらメールを開けると、予想外の返信に体を起こす。
【私が作ったって内緒なら、いいよ。新しい曲作る】
「マジで? やった! あみーーー!!」
一人部屋で叫んだままをメッセージでも返す。
その勢いで、高島にもこう返信した。
【でも、当日は来るまで待ってます。って伝えといて】
もしかしたら……奇跡があるかもしれない。
文化祭当日、一人ステージへとつづく階段の下で、マリンは本村を待った。
いつだったか二人で上がったSCREAM!!の舞台を思い出しながら。
あの時、マリンを引っ張ってくれたのはアキ、高校時代に戻った本村だった。あのときのアキはもういないけれど、もう一度、一緒にステージに上がりたかった。
グランドにはたくさんの生徒たちが集まっている。でも、本村は来ない。
予定の開始時間が過ぎ、生徒たちがざわつき始めた。
「やっぱり、無理だったか」よし、一人でも歌うしかない――。
そう覚悟を決めマリンがステージに上がった時だった。
観客の生徒たちがざわつき始めた。ステージの反対を振り返りながら。
その視線は、こちらに向かう一人の姿に集まっていく。
歌舞伎のお面をつけた、マリンの方へと歩いてくる男に。