見出し画像

【第7話】-「よかったな」-

「こんな曲が作れるなんてすごいよ! あみの曲、もっといろんな人に聞いてもらわなきゃ!」
「よかった。じゃあ、歌ってくれる?」
「もちろん!」

あみの曲はなんというか、なんとなく次はこうなりそう、という予想を裏切る展開なのが面白かった。
コードなのかなんなのかマリンにはよくわからないけれど、一つ一つが新しくて瑞々しく感じた。
それはリズムも同じだった。でも譜面にするとすごく難しそうな曲ばかり。

放課後、マリンがあみと廊下で盛り上がっていると、二人の前を本村が通りかかった。
「あ……」
マリンは思わず話しかけそうになった。
あのとき、本村とステージに上がった時に歌いたいと言ったことが今、形になろうとしていて、それを伝えたいと思ったのだ。
でもギリギリのところで思いとどまった。

あれ以来マリンは“SCREAM!!”でのことはもちろん、今まで通り何の接点もない生徒として振舞っていた。
本村に迷惑をかけてはいけないと思ったし、マリンのクラスの英語担当は本村ではなかったから、接点がないはずの隣のクラスの生徒と個人的な関係があると思われるのもまずいかも、と思ったのだった。

思い直したマリンが、軽く前を通り過ぎる教師に会釈をするだけにして、あみとまた話し始めると、本村はマリンたちの会話を聞き、ふっと嬉しそうに微笑んだ気がした。

「よかったな」
マリンにそう思うと同時に、本村は自分の中でボッと火がつくのを感じた。