【第6話】 全開なんて無理だけど、ほんの隙間くらい心を開けておいてもいいんじゃないの
「アキって、そういうとこあるよな」
放課後、教室のベランダに出て下校する生徒たちの姿を見ていると、横にいたモリヤがそう言った。
「そういうとこ?」とアキが聞くと、モリヤはグランドを見たまま、なんか他人を寄せつけないっていうか壁を作るみたいな……そういうとこ?と言った。
モリヤとの出会いは中学に入り、同じクラスになったことだった。出席番号で並んでいたことから話すようになり、背の高さや体格がほとんど同じように成長したこともあって、なんとなくそのまま一緒にいるようになった。
腐れ縁ってほどでもないけれど高校も一緒だと知った時には、「またお前と一緒かよ」とか言いながら、お互い表情は緩んでいた。
「モリヤがそれ言うんだ」アキはボソッと言った。
「お前に言われるとなんか落ちる」
人付き合いの良いモリヤと違って、アキはたしかに友人が少ない。というよりも、まともに話せるのは男女問わずモリヤくらいしかいなかった。
それにはちょっとした理由があって、彼はそれをよく知っているはずなのになんで急にそんなこと言うんだよ、とダメージを食らってしまった。
「悪い、そう言う意味じゃないよ」とモリヤが言う。
「他人と話せないのはしょうがないけどさ、全開なんて無理だけど、ほんの隙間くらい心を開けておいてもいいんじゃないのってこと。先生だって、親身になってくれる人もいるし」と微笑んだ。
アキは最近、モリヤを見ていると思うことがある。
なんでこいつは俺といるんだろう。なんで俺はモリヤじゃないんだろう。