見出し画像

【第1話】『今こそSCREAM!!-season2-』-どんなに重い雲に覆われた空でも、そこに太陽は登っていく。-

確かに変わったと思ったのに、気がつくとまた元に戻っているときがある。

いや、もしかしたら最初から変わってなどなかったのかもしれないと思いさえする。
本村は、空と同じ灰色の、雨雲のように重たく感じる教室のドアを開き中に入った。生徒の時ならまだしも、教師になってまで学校がこんなに気の重いものになるとは。

もちろんその理由は昔とは違うけれど、とはいえ自分は全く成長しない人間なのか……。

数日前、ホームルームの時間に生徒たちの前でラップを披露した時、彼らは受け入れてくれたような気がした。
なんでもいいから、少しでも何かから解放されたような気分になってくれればと思ったのだが、その思いは通じたような気がしたのだ。
だが昨日、それは単なる希望に過ぎなかったと思い知らされた。
本村を呼び出した教頭は、こう彼に告げた。
「教師の遊びで貴重な時間を無駄にされた」

そう、朝のホームルームでのことを子供から聞いた保護者からクレームがあったと。

「申し訳ありませんでした」
頭を下げ、校長室を後にする。
VR の“SCREAM!!”で起こったことは、改めて自分の目指す教師像に向き合うきっかけをくれ、何かを掴んだ気がしたのだが、それがまた掌からスルスルと落ちていってしまったようだ。

「彼女はどうだろうか……」

本村は、SCREAM!!で一緒にステージに上がった隣のクラスの生徒、マリンのことを思い浮かべた。彼女は自分のようでないといいのだが。
空がどんなに薄暗く重い雲に覆われていようと、そこに太陽は登り、沈んでいく。
本村が悩みながらも日々に追われているうちに何度か季節が変わり、気づくと春を迎えていた。

本村のクラスの生徒たち、そしてマリンも、高校3年になった。