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【第18話】〜浮かんだのは、あの人の顔〜

マリンは、部屋で何度もあみの作った二人の曲を聴きながら、考えていた。
どうやって、「他人が一方的に言ってることなんて関係ない」とあみに伝えるかを。
二人で公開した動画に中傷のコメントを書いたアカウントに行ってみると、過去にあみとつながりがあったようだった。それがどんなものだったのかはわからない。

だけど、あみをよく思ってないというだけでなく、はっきりと悪意が伝わる表現で、あみの過去の作品にもコメントしていた。
そして攻撃的な表現で、少しでも多くの人にインパクトを与える、ということに力を注いでいるようだった。

「パクリ」「盗作」「この曲、すごい自己満」「全然エモくない」それは、よくこんなに書けるな、というくらいに連なっていた。
事実かどうかはわからない。でもこれが、あみの言う「迷惑をかける」ことにつながるような気がしてならなかった。

あみも何らかの形で知ったんじゃないだろうか。エゴサなんてしない、と言っていたけど、マリンですら簡単にそこに行き着いてしまったのだ。
あみになんて言ったらいいだろう。

言葉でどう伝えようとしても難しい気がしてしまう。
その時、ある人の顔が浮かんだ。本村だった。
本村がSCREAM!!でラップをした時、何かこう、頭でぐるぐる考えたり、思いを伝えようと言葉を捻り出したりする以前に、心のそこから湧き上がってくる感情のようなものが伝わってきたのだった。

「先生、ラップもうやらないのかな……」

ちょうどそう思った時だった、メッセージ受信の通知が来てベッドから起き上がる。相手があみだったから。
でも目に入ったのは、予想とは全く違う言葉だった。

「本村先生、学校辞めるって知ってた?」