【第7話】 海の深くへと潜っていくような緊張感が心地いい
マリンが “SCREAM!!” の前にやってくると、今度はシャッターが開いていた。
開かれたままのアリスの扉に少し屈むようにして入ると、階段を降りていく。
コツンコツンと足音が響くたび、マリンのドキドキは大きくなった。
この下に、いったいどんなことが待っているんだろう。なにもわからない知らない場所、まるで海の深くに潜っていくような緊張感が妙に心地いい。階段を最後まで降りきると、「受付お願いします」とスタッフらしき女の人に声をかけられ、えっ、と動揺する。
だが、名前と年齢をタブレットに入力すると中へと通されて、マリンは拍子抜けした。
なんだ自己申告でチェックもないんだったら違う名前にしてもよかったかも。もし30って言ったら30歳ってことになったのかな。ちょっともったいない気がする。
促された方へと進むとまたドアがあった。今度は大きくて重い扉にぐーっと体重をのせるようにして中に入る。その瞬間、ドンっと音楽が一瞬でマリンを包んだ。
あの小さなドアはこんな世界への入り口だったんだと驚くような、空間が広がっていた。
中は、コンクリートの床と壁に、真ん中がステージのように高くなっていてそこだけ囲われている。ステージが穴になったドーナツのような構造だ。お客さんがどんどん入ってくる。これからなにが始まるのか、緊張と興奮で自分の胸が音を立てているのが聞こえるほどだ。
「なんのイベントなんだろう」
受付の女の人も、集まっている人も、ここではみんなマスクはしていない。
たくさんの人の顔を全て見ることができるのは久しぶりで、マリンはなんだか不思議な気持ちになった。そのときだった。
「やっぱり来たんだ」
振り返ると、カードをくれた男が少し微笑んで言った。
「ようこそ、SCREAM!!へ」