【第11話】〜リアルな場所で、自由に思いを叫べたら〜
「先生よく思いついたね。あのお面、似合ってた」
放課後、誰もいなくなった教室で、高島にそう言われた本村はギクッとした。
それは“SCREAM!!”で歌舞伎の隈取のお面でラップしたことだとわかったからだ。
周りに人がいないのを確認してから声を潜め「なんで知って――?」と言う本村に、高島は知り合いに誘われてあの空間に行ったのだと話した。
「いたのか……」
本村は高校生の姿で入った前回のマリンに続いて、またも生徒と居合わせてしまった、とうなだれた。
本当は今回は、今の自分のままの姿で入ろうと思った。
アバターを作り自由な姿で入れるのが楽しみの一つではあるのだが。
でも直前で、コロナ禍ですっかり馴染んでしまっているマスクがないのにどこか違和感を感じ、それならと瞬間的に思いついた歌舞伎の隈取のお面をつけたのだった。
高島は一度学校で本村がラップを披露した時のことを覚えていて、素顔はわからないもののその正体に気づいたのだという。
「先生あれ、またリアルでもやったらいいのに」
自宅で仕事しながら、本村は考えていた。確かに、リアルな世界で思っていることを伝えたい。それに今の生徒たちはコロナのために学生らしい行事やみんなで集まれることもほとんどなく、高校生らしいことをさせてあげられてないことに歯がゆさを感じていた。
何か自分にできることはないのか。
もし“SCREAM!!”のような場所がリアルにあって、生徒たちが自由に思いを叫べたら。
そんなことを考えていると、見覚えのあるアドレスから一通のメールを受信した。