【第8話】〜もう一度、あの場所へ――〜
すれ違ったときマリンたちの会話が聞こえてきて、本村は思わず顔がにやけた。
どうやら一緒にやりたいことができる仲間を見つけたようだったから。
あのとき、歌うことを見つけたと目を輝かせていたマリンが、その後うまくそれを形にできるのか、本村は気になっていた。
自分のことを棚に上げて、なのだが。
だから、もちろん本村の方から話しかけたりはしなかったけれど、ずっと気にかかっていたのだ。
自分に気を遣ってくれたのか、彼女も態度を変えることはなかった。
いじめ、SNS での誹謗中傷やフェイクニュースに踊らされる世の中。
みんな何が真実かもわからない世界のことに踊らされている。
でも何より、そういったものに囚われているのはむしろ大人の方だ。
自分も含め、見本になるべき大人がいない。
子供を取り巻く環境は変わっても、大人の責任に変わりはないはずなのに。
だからこそ、自分はそことは距離を置こうとしてきた。
だが本村は、少し前に高島が言った言葉がずっと残っていた。
「リアルなライブより、スマホなどを通して触れる世界の方が親近感ある」という言葉を思い返す。
何よりマリンの、あのとき以来の弾んだ声と笑顔が本村の心に火をつけた。
それなら、やっぱりもう一度……。
本村は、“SCREAM!!”へとログインした。
今度は、高校生のアキではなく、今の姿で――。