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"Odyssey" アルバム全曲解説

こんにちは。
Sable HillsRictです。

Sable Hillsがリリースした
ニューアルバム"Odyssey"
皆さん聴いてくれていますか?

この記事では、
"Odyssey"に収録されている全曲を、
それぞれ作曲者・コンポーザー目線で解説していきたいと思います。

というのも11月に"Odyssey"をコンセプトにしたワンマンツアーの開催が決まったので、
改めて皆さんにこのアルバムをより深く知ってもらえたらという思い立ったからです。
(本当はリリース後にすぐ出す予定だったけどFrontline関連で忙しくて放置していたのは内緒…)

11/16 名古屋、11/17大阪、11/30東京


The Eve

メタルといえばやはりアルバム1曲目にSEが入っているのが正義。
そんなロマンを追求するために入れた30秒インスト曲です。
昨今は「なるべく曲の時間を短くして再生が回るようにする、イントロ曲を入れるなんて論外だ!」という時代なのですが、こちらは何度も1曲目のSEで心を震わされてきた身。そこは是が非でも抗っていきたいという確固たる意志があります。
1stアルバム"Embers"でも1曲目にインストを入れており、2ndアルバム"Duality"でも1曲目にインストが入っているわけではないですが、1曲目をSE+楽曲("Machine Head"の"Imperium"的な)という感じにしています。

2曲目"Odyssey"のイントロのリードを基本に、ストリングスの音をいくつか重ねて、トランシーバー系のエフェクトを加えた宇宙行きロケットの発射前アナウンスみたいなイメージの語りを入れています。(ちなみに私が喋ってます)

"The Eve"は「前夜」という意味で、"Odyssey"「長い旅」に出る直前を意識しました。

影響を受けた楽曲
・Judas Priest - The Hellion
・Lamb of God - The Passing
・The Ghost Inside - Intro - Live


Odyssey

シングルの時にも記事を出しましたが改めて書きます。
この曲は自分たちの過去を振り返った時に、Sable Hillsってこういう存在だよね、って自分たちとリスナー両方が一致するものを作りたくて作りました。
自分たちには「若者にはメタルを、年配にはメタルコアを」というテーマがあり、とりあえずそれ通りの曲を渾身のクオリティで出してやろうという魂胆です。

サウンドは自分が最も影響を受けているであろう2000's Metalcoreをベースに、昔からずっとやってきてるSable Hills流ツインリードを意図的に盛り込んで、ブレイクダウンは超ヘヴィみたいな感じです。
毎アルバムこういうオールドスクールメタルコア曲を必ず1曲入れるようにしてるんですが、この曲はまさにそれ枠です。1stでいう"No Love Lost"、2ndでいう"Crisis"ですね。初心忘れず。トゥルーメタルコア最高。

裏話ですが、この曲のイントロは元々今のものとは違くて、この曲自体もリードトラックになる予定ではありませんでした。レコーディング開始する直前くらいに今のイントロとブレイクダウンに変えて、イメージがガラッと変わって、結果タイトルトラックにまで昇格しました。

影響を受けた楽曲
・Heaven Shall Burn - Hunters Will Be Hunted
・As I Lay Dying - Meaning In Tragedy
・Anterior - Blood in the Throne Room


Misfortune

この曲は元々Odysseyより前にシングルで出す予定だったんですが、色々なタイミングが重なりアルバムリリースまで未解禁となりました。
個人的にアルバムの2曲目(イントロ含めて3曲目)は勢い押しの曲が好きなタイプなので、曲としてもアルバムの中での立ち位置としてもお気に入りです。

サウンドとしては、聴く人が聴けば一発でわかると思いますが、かなり北欧メロディックデスメタルです。そしてスウェーデンよりもフィンランド寄りな認識。ただいわゆる疾走リフ!クサメロ!みたいなやつではないので、多少メロデス理解度のある人じゃないとピンとこないかも。

個人的なテーマとしては、メロデス + PAメタルコアって感じで、ブレイクダウンはかなりのTexas In Julyみがあると思います。
また小ネタですが、サビに入る手前のギターのメロディは、めっちゃRiotのThundersteelの歌メロをオマージュしてるので、知ってる人は注意して聴いてみてください。

影響を受けた楽曲
・2nd Suicide - Epitaph For The Proud
・Riot - Thundersteel
・In Flames - Pinball Map


Battle Cry

今作唯一ミュージックビデオ付きで出したリードトラックです。アルバムの中では一番モダンメタルコア(厳密に言うと現行メタルコアというより2010年代にモダンだったメタルコア)のバイブスが強め。自分はその時代をリアルタイムで聴いてきた世代ですが、今となってはこれもなつかしい部類に入ってきますね。
自分はひねくれもので、みんながやらなくなったけど普遍的にカッコいいみたいなものにとても惹かれるタイプなので、あえて今このサウンドをドヤ顔でやってます。
作っている途中からリードトラックの一つになると確信していたので、全体的にアッパーに攻める感じにして、曲中のどこを切り取ってもカッコいいようになるように心がけました。普段のSable Hillsより曲構成がスリリングで、新しい感じにできたと思います。

またこの曲ではfeaturingにCrossfaithのKoieさんを迎えています。
自分がCrossfaithでサポートギターを弾いたり、CrossfaithのイベントにSable Hillsを呼んでくれたり、過去一でCrossfaithとの関係値が高まってる時で、今やるしかないと満を持してお誘いさせていただきました。
説明不要で中高生のころから聴きまくっていたので、自分たちの曲にKoieさんの声をレコーディングしてるときはかなりテンション上がりました。てかシャウトうますぎました。

この曲の歌詞のアイデアはTakuyaが持ってきていて、わかる人にはわかると思いますが、フロムソフトウェアのゲーム"Armored Core Ⅵ"にインスパイアされたものになります。
自分はシリーズを3からやってるファンなのですが、6は絶賛アルバム製作中のタイミングにリリースされたので当時プレイする時間がなく、苦渋の思いでプレイスルー動画を一気見して、ネタバレされながら世界観を勉強しました。
イントロの語りや1サビ終わりの語りの内容は、ゲーム内のセリフを使っています。(さすがにゲーム音そのまま使うのは権利関係心配だったので自分が喋ってます)

影響を受けた楽曲
・Texas In July - Bloodwork
・While She Sleeps - Sleeps Society
・Breakdown of Sanity - Crumble


A New Chapter

ギターボーカルのWataruが加入してから初めてリリースした曲になります。アルバム発表前に出ていた曲のうちの1つですね。
色々な転機があって新たなスタートを切ろうとしていたタイミングだったので、そういう意味のタイトルを付けています。
Sable Hillsの代表作になるような、めっちゃストレートに誰もがカッコいいと思う曲を作りたくて、結果ド直球メタルコア曲が出来上がりました。
とにかく直球のものが作りたくて、ミュージックビデオも小難しい世界観とかのない直球なものにしてほしいと依頼したのを覚えています。今ではライブのラストソングに選ぶことも多くなるくらい定着してくれて嬉しいです。

サウンド的には、後期As I Lay DyingとかBury Tomorrowぽい感じが強めだと思います。往年のメタルコアバンドが今の時代に出す新曲みたいな雰囲気。
クラシックなメタルコアリフだけどチューニングが低めだったり、曲展開が洗練されてたりと、古典的だけど古臭くはない絶妙な感じにできたと思います。サビのクリーンボーカルのメロディもかなりお気に入り。
ちなみにアルバムの中では唯一ギターソロがある曲になります。

影響を受けた楽曲
・As I Lay Dying - Parallels
・Texas In July - Crywolf
・Bury Tomorrow - Cannibal


Anthem

この曲はおそらくアルバムの中で最も異色な曲だと思います。
自分たちはメタルコアという枠組みに括られがちなので、より広義なメタルとしての音楽をやりたくて作った曲です。ロードランナー全盛期のころの空気感をイメージしてます。
入りからクリーンボーカルが入ったり、曲展開をめちゃめちゃシンプルにしてみたりと、今までにやったことのない試みをしてみました。
なんか、メタルのアルバムに1曲ありえないくらいキャッチーな曲あるの好きなんですよね。そんな立ち位置の曲です。もっとセルアウトだとか言われるかなと思いましたが、意外にそういう意見は少なめでした。

また曲が3分を切っているのもSable Hillsにしては珍しいです。
自分の作る楽曲は気持ち長めの曲が多くて、ライブのセット時間が短いとあまり曲数ができないっていう状況があって、ショートチューンが欲しかったので作りました。重宝してます。

影響を受けた楽曲
・Trivium - Dying In Your Arms
・Dark Tranquility - Misery's Crown
・Act of Denial - Down That Line


Carry the Torch

この曲はウケとか何も考えずにただやりたいことをやって、自分のエゴを詰め込みました。クリーンボーカルもないし、曲も長めで、玄人向けの曲だと思ってます。ちなみにバンド内人気は高め。

元々この曲はモダンな路線で行こうとしていて、イントロもビートサンプルを使ったりと試みたのですが、気づいたらサビにクサすぎるギターリードが入って伝家の宝刀ラスサビ転調も搭載した変態メタルソングとなっていました。
気づいている方もいると思いますが、自分はクリーンボーカルが入っていない曲だとギターを以上にメロディックにしてしまう習性があります。
とはいえ全体的なこの曲の雰囲気はモダン寄りで、Sable Hills的には新鮮なので気に入ってます。1stでいう"Abyss"みたいな立ち位置の曲ですね。

個人的な細かすぎるこだわりですが、ブレイクダウンの後半から鳴っているアルペジオと2サビ終わりのギターリードは、ラストのセクションで転調して再登場します。2音上げ転調なので全く同じフレーズなのにかなり雰囲気が変わって聴こえるので気に入っています。

影響を受けた楽曲
・After the Burial - Collapse
・Bleed From Within - The End of All We Know
・Soilwork - In This Master's Tale


No Turning Back

こちらもすでにシングルの時に記事を出していますが改めて書きます。
この曲はライブのことだけを考えて作りました。
ダイブ、モッシュ、シンガロングすべてできて、曲も短くて、イントロから爆発力満載みたいな。極めつけに"feat. Trevor Phipps from Unearth"というライブで生きる要素を詰め込みに詰め込んでます。
Trevorとは最初に日本で一緒にツアーしてからずっと連絡を取り合っていて関係がかなり深くて、featuringのオファーも2つ返事でOKくれました。
先日のFrontline Festival 2024で初めてfeaturing込みで再現して、制作中にずっと思い描いていた光景が見られました。

サウンドは、叙情系(もはや死語かもですが)ハードコアをメタルでやってみた、みたいなイメージで、爽快感あってスポーティなんだけど、リフはちゃんとメタルっていう新しい感じになったと思います。ブレイクダウンはHatebreed直系でアツいです。
この曲も入りからクリーンボーカルがあってセルアウトとか言われそうだと思ってましたが、意外にそんなこともなかったですね。ラッキー。

影響を受けた楽曲
・Unearth - Zombie Autopilot
・Hundredth - Remain & Sustain
・Hatebreed - Proven


Bad King

根強い人気を誇る古株曲ですね。この曲は唯一Wataruが入る前の曲で、クリーンボーカルも自分の声で録っています。ただスクリームと一部のコーラスはアルバム用に録り直していて、Wataruの声も少し入っています。

この曲は、漢(おとこ)をテーマに作っていた記憶があります。
当時2ndアルバムをリリースしてツアーをした後で、ガツンとパンチを与えられる曲がもっと欲しいと思って作りました。
それまでよりも広いステージで演奏する機会が増えたのですが、ステージが広いと小難しいことをやっても伝えるのが難しい自覚があったので、より伝わりやすいダイナミックな曲になるよう心掛けました。

この曲以降スクリームもクリーンも色が大幅に変わったので、アルバムに入れるかどうか少し悩みましたが、MVも出していてリスナー人気も高かったので収録しました。

影響を受けた楽曲
・Bury Tomorrow - Choke
・Texas In July - Psuedo Self
・Decapitated - Homo Sum


Forever

もはやアルバム恒例で枠のある、ラストソング前に入る瞑想ソング
これの後シームレスに"Tokyo"に繋がっていきます。
やはりクライマックス前には一度落ち着く瞬間が必要。基本的にアップテンポな曲しか存在しない音楽をやっているので、静と動を生み出すのに貴重なピースですね。

元々このインストは存在していなかったんですが、"Tokyo"メインのギターリードのメロディを聴くとどうにも大和魂をくすぶられる感じがして、琴の音を入れた和メロ全開のインストを作ってみました。ついにジャパンをRepする時が来た。
個人的な好みなんですが、日本のバンドがあざとく和の要素をアピールするのは自分のポリシーとは違うので、今までやってきませんでした。
ただ今回に関しては、曲としても入っていない方が不自然なくらいハマったし、あえて入れるのがSable Hillsの今のポジション的にもかっこいいなと思ったので入れてます。
琴の音を使ってはいますが、ビートは808で少しハイプな感じを出してて、そこもその辺のバンドのアプローチとは違うぞっていう意思表示をしてます。

影響を受けた楽曲
・久石譲 - あの夏へ
・ICO - Castle in the Mist
・クロノトリガー - 風の憧憬


Tokyo

今作のラストソングです。
最後はメロディックにしたくなるのが世の常。この曲も例にもれずメロディックに疾走します。
そして注目すべきはやはり、あまりにもクサすぎるギターリード。イントロから鼻が曲がる勢いのクサメロを鳴り響かせています。
ちなみに仮タイトルは「ワキガガガギゴ」。

ちなみにこの曲は2ndアルバム"Duality"に入れる曲として作っていました。
ただ先ほども触れた通り元々この曲に和楽器を入れたアプローチはなかったのですが、その状態だとなんか曲として味が薄い気がして当時は没曲にしました。
しかしその後和楽器の音を入れて、日本語の歌詞も入れて、タイトルも"Tokyo"にして、ジャパニーズ全開路線にシフトチェンジしたところハマりにハマって、晴れて3rdアルバムのラストソングを飾るまでになりました。
アルバムリリース後では、ダントツでこの曲が一番反響がありましたね。

ギターリードに注目されがちですが、リフもかなり気合が入ってます。中でもペンシルヴァニアメタルコア系の疾走リフは最近のSable Hillsで久しくやってなかったので初心に戻って、渾身のヤツを刻みました。

影響を受けた楽曲
・Sable Hills - Recapture
・Trivium - Throes of Perdition
・Texas In July - Cry Wolf


最後に

全曲セルフ解説してみましたがいかがでしたか?
「やっぱり」とか「意外」とか思ってくれてたら、ここまで書いた甲斐があります。作曲者の意図を理解した上で改めてアルバムを聴き返したら、また新しい聴こえて面白いと思うので、ぜひもう一度アルバム聴いてみてください。

また再度になりますが、11月にSable Hillsのワンマンツアーがあります。
名古屋大阪でワンマンをやるのは初めてだし、ファイナルの東京は渋谷クラブクワトロというワンマン史上最大規模の会場でやります。
このツアー限定でアルバム"Odyssey"全曲演奏します。
この記事を読んで曲への理解が深まった今、ぜひ音源だけでなくライブで生の音でも堪能してほしい。
11月東名阪の各会場でお待ちしています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
皆さんに会えるのを楽しみにしています。

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