The 100 Best Albums of the 2022 パート2
89 Rainy Miller - Way Out[Desquamation (Fire, Burn. Nobody)]
プレストン(UK)で活動するヒップホップ・アーティスト、レイニー・ミラーの最新作は、Blackhaineが参加したことで沛然と降り注ぐ「ウェイヴ」の音とBlackhaineの狂気が等量で組み合わされ「ノクターナル性」の暗さだけが偏り、嵩み、滞留しがちな「ウェイヴ」に新たな均整をとった力作。
extra 7038634357 - Daybreak[Electric]
アーリントン(US)出身のアーティストネオ・ギブソンによるプロジェクト7038634357の最新EP。リスト選外なのだが、迷夢の中のヤブをかき分け彷徨うかのようなこの楽曲は入れておきたい。
88 Steve Fors - Ground Glass[It's Nothing, but Still]
スイスを拠点に活動するアンビエント作家スティーヴ・フォースのファースト・アルバム。プリミティブなアンビエント、または「パワー・ノイズ・アンビエント」とも呼び得る密生されたノイズの粒子を醸成したサウンドは、間違いなく新たなアンビエントを展いた。
87 June McDoom - Piano Song[June McDoom]
ニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライター、ジューン・マクドゥームの初EPは、掘り起こされたサンシャイン・ポップを「初期のソウル、レゲエ、ヴィンテージ・アナログの実験の影響を独自の新しい世界に取り入れた」(bandcampより)作品で、ワイズ・ブラッドと世界を共有しながら遠隔の地に位置する彼女の新作を楽しみにしている。
86 DeepChord - Memories[Functional Designs]
同名のレーベル設立者であるディープ・コード最新作は「Sommer」を継承した作風とロデリックのもう一つの名義cv313におけるアンビエンスが結合した傑作。
extra 冨家哲 - N04[Blue, Black and Grey]
チェイン・リアクションに連なるダブ・テクノ。上記のディープ・コードと交叉しながら斑らに反復する良作。
85 Cassels - Your Humble Narrator[A Gut Feeling]
オックスフォードのバンド、カッセルズのサードアルバム「A Gut Feeling」。昨今のポスト・パンクの再燃に伴う脆く訝しい甘美さは交えることなく悽然とするラウド性をその突端に収斂させた傑作。
84 Charli XCX - New Shapes[CRASH]
ハイパーポップ、ハイパーポップと騒がしいこのタイミングにニュー・ジャック・スイングテイストを忍ばせるのは、次世代の「キング・オブ・ポップ」を見据えた動きなのか。麻の如く乱れたメジャー・シーンの秩序になるのか今後も期待。
83 Lucrecia Dalt - Enviada[¡Ay!]
コロンビア出身のアーティスト、ルクレシア・ダルトの最新作「¡Ay!」は前作「No era sólida」にはない幼少時に得たラテンエッセンスが静かに昂ぶりながら躍動感をもってアンビエントに新たな烙印を押す快作。
82 Duster - Familiar Fields[Together]
サンノゼで結成されたバンド、ダスターの4枚目のアルバム「Together」。スロウコアの第一線の復帰作二作目は、茫漠とした光景に彼らならではのドリーム性に傾斜したサウンドと歪なシンセが響く傑作。
extra Codeine - Wird[Dessau]
シカゴで結成されたバンド、コデインがファーストアルバム「Frigid Stars LP」リリース後に録音されたままトラブルに見舞われ放置されてた音源を再録音したアルバム。その後に脱退したクリスのドラミングが聴ける意義ある佳作。
81 Jérôme Noetinger - Eine andere magische Stadt[Sur quelques mondes étranges]
マルセイユ出身のジェローム・ノーティンガーの新作「Sur quelques mondes étranges」は、初のガガーリン・レコーズからのリリース。ミュジーク・コンクレートと謳われているが、その内実は鮮やかで横溢なエレクトロニック・サウンドと統御された旋律からピークアウトした寄辺のないノイズの線が狂熱をもって蠢きだす傑作。
80 They Hate Change - Who Next[Finally, New]
フロリダ州タンパで結成されたヒップホップ・グループの新作は一聴するとUKヒップホップな造りを彷彿とするが後半にかけてそれは変容する。アウトキャストに見られるグルーヴ感や、トラヴィス・スコットのようなクラウド・ラップ、それらをドラムンベースを効果的に配したサウンドで集約させた傑作。
79 Macula Dog - Plug[Orange 2]
クイーンズ(NY)で結成されたバンド、マキュラ・ドッグはセカンドアルバム「Orange 2」で、マトモスが築かなかった分野で、バトルスが導入しなかった手段を用いてミニマル・ウェイヴの拡充を実現した。
78 they are gutting a body of water - lucky styles[s]
フィラデルフィアで結成されたバンドThey Are Gutting a Body of Waterは近年インディーシーンで盛り上がりを見せている。このアルバムはマック・デマルコが見た陶酔混じりの悪夢を描写したようなポップとシューゲイズが魅力となっている。
77 Kaho Matsui - Done[Shadowboxing Until My Hands Bleed]
ポートランドを拠点に活動するKaho Matsui。怒涛の連作EP群でもこの「Shadowboxing Until My Hands Bleed」は凄い。特に「Done」から「Wreck Memory Disk」の流れが凄まじい。透視図としての日常の風景をアンビエントとそこに靠れかかったノイズと共に疎らに想い起こす。
76 RS Produções - Farucox - Sem Cabeça[Saúde em 1º lugar]
2014年にリオ・デ・モウロ(ポルトガル)にて友人同士で集まり結成されたRSプロデュソイスの新作。ファーストよりもよりワールドワイドな要素を自身のフィールドであるクドゥーロに転換し昇華させる傑作。
75 Sakura Tsuruta - Human Energy[C / O]
東京を活動の場とするSakura Tsuruta(鶴田 さくら)のファーストアルバム。抑揚を消散し、転調の境界線にまで張り巡らされた繊細な音に耳を欹て続けてると導かれたところで唐突に虚を衝く瞬間があるのだが彼女ならではのエレクトロニック性として発揮された傑作。
74 Lean Year - End[Sides]
ルイジアナで活動する二人組デュオによる喪失と浸潤する悲しみを主題にしたスロウコアをベースとし暗澹とした歌詞とは別にコンフォートに誘う。Lean Year(エミリーとリック)が、遭遇した様々な異なる死に向き合う為の空間を創り出した。
73 春ねむり- そうぞうする[春火燎原]
東京を拠点とする近年海外で認知されその範囲を広げている春ねむりの新作は、「春雷」にも見られるが、随所に従来のジャパニーズ・ロック・シーンを倣うように歌われるが楽曲の後半では敵愾心を配合しながら現代のテーマでもある剥き出しのメンタルヘルス性を打ちこむことで(逆啓蒙性と呼びたい)前作よりも複雑になったサウンドがペダンティックにのみ陥ることを回避している。
72 UVB - The Ambush[Assassination Techniques EP]
ベルリンを拠点に活動するUVBの最新EP「Assassination Techniques EP」を聴いて初期作「Testosterone」にあったハード・ミニマリズム的な要素(シュランツ)がアンビエント・トランスのシーンに重なる部分に生じたメロディ性がこれまでにない柔和なインダストリアル・テクノのかたちを提示した傑作。
71 x/o - Mirror Shard, Phoenix Down[Chaos Butterfly]
バンクーバーを拠点に活動するプロデューサーx/oのファーストアルバム。これまで脱構築されてきたジャンルといえばバブルガムやハイパーポップと細分化の途中にあるものと共に構築されてきたが、近年になり過去のコンサーヴ(貯蔵)されてきたジャンルに基点をおいた再構築に勢いをつける契機となるであろう傑作。
70 Bill Orcutt - At a Distance[Music for Four Guitars]
アルバムによって自身の特色の射程範囲を変化させてきたサンフランシスコを拠点に活動するビル・オーカットは、新作「Music For Four Guitars」で近年メタルにも浸透しつつあるトータリズムを用いてクリス・コルサーノとの共作を彷彿させるサウンドで荒涼たる風景にインダクションされた蜃気楼を呼び起こす傑作をリリースした。