The 100 Best Albums of the 2022 パート1
今年は例年とは違いアルバムではなく楽曲を基準にしたベストリストにしました。
100 Action Sports - Cubivored[III]
マシュー・ペピトーンとディラン・ハウによるプロジェクト3作目。近年のトランスを捉え直したシーン(ABSLやDossといったアーティストに顕著)とも共通する郷愁を誘う力作。
99 Ibibio Sound Machine - Protection From Evil[Electricity]
Snapped Anklesがミニマル・シンセを駆使してパンク性に新たな場所を与えるようにIbibio Sound Machineもまたアフロ/シンセ・ファンクを用いて変わりゆくダンス・パンクのかたちを記録した。
98 Rachel Chinouriri - Happy Ending[Better Off Without]
クロイドン(ロンドン)出身のアーティストであるレイチェル・チヌリリの最新EP。全ての過去になりゆく愛のゆくえを「ベッドルーム」から抜け出た先のポップの高原(光源)で豊かな抑揚と共に不完全なかたちを眼差しながら昇華される傑作。
97 Fret - Shut That Dog Up[Only for the Weak]
バーミンガム出身のミック・ハリスによる別名義Fretの5年振りの最新作「Only for the Weak」は1998年にダーレン・アロノフスキーが監督した「π」のサウンドトラック(Thrive Recordsからリリース)を現在に継承した暴力的なインダストリアル性に今次のトランス・シーンに紛れ擬態したイルビエントが耳を掌握する傑作。
96 Thornhill - Arkangel[Heroine]
2015年にメルボルンで結成されたバンドThornhillの最新作。ポスト・メタル以後、「オルタナティヴ」の言葉の意味合いも変容したように思うが彼らのサウンドは、それらの傾向に触発されながら摂取し続けながらも干犯されず保持され続ける従来の「オルタナティヴ」と同時に貯蔵され収集され膨張し続けている。
95 Hiro Ama - Free Soul [Animal Emotions]
TelemanのメンバーHiro Ama(Hiro Amamiya)によるソロEP2作目。カリブーや多くのインディトロニカを彷彿させ情感のみを集中的に注入したような作品でMemo Boyと比較しても同じ領域に居ながら全く方向性が異なる性質を放つ傑作。
Memo Boy
94 Andrew Oda - Song of Absence[Back to the Body]
スロバキアのレーベルmappaからリリースされたAndrew Odaの新作「Back To The Body」は、「トラウマから癒しへの旅」と説明されるように混沌としたコラージュにギターによるはっきりとした輪郭が光明のように射してくるコントラストは、「song of seeking」でもうかがえるが、明暗がはっきりと分かれている。それはまるで、トルストイの民話「二老人」でエフィームが途中逸れたエリセイをエルサレムの聖餐式で目撃し追いつくはずのない彼の幻影を追い続ける描写に誂えた楽曲群が並ぶ。
93 Stones Taro - Seed Man[Seed Man EP]
京都を拠点に活動するStones Taroの新作EP「Seed Man EP」は、初期ゴールディー(Rufige Kru)や初期ザ・プロディジーを一瞬彷彿するがエレクトロを駆使するTextasyとも異なるSCJに見られるようなフットワーク・テイストが時折表れる傑作。
92 Soft Kill - Dibs[Canary Yellow]
オレゴン州ポートランドで結成されたバンドの新作。彼らは、インターポールやザ・ウォークメンといったポスト・パンク・リヴァイヴァルの系譜のレールから逸脱した先で「Dead Kids, R.I.P. City」といったゴシックをポップから捉え直した傑作からも逸脱し今作には純度の高いメロディへの帰依が残った。
91 FKA twigs - Ride the Dragon[Caprisongs]
そもそも従来なら成立しないはずの関係性が、デコンストラクテッドを主眼においたArcaだからこそ相関関係を成立させたということを念頭に置いて聞くと今作のミックステープで流れるアフリカ的なものも現行のシーンにただ単に棹を差す行為ではないことがうかがえる。
90 The Orielles - Beam/s[Tableau]
ハリファクス(UK)で結成されたバンド、ザ・オリエルズの4枚目の作品「Tableau」はこれまでのジャングリーなギターの心地よさよりもエレクトロニック要素の強い堅牢さと従来のドリーム・ポップの枠組みに当てはまらない20年代の新機軸を作った間違いなくキャリアの傑作。