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音楽で語るシエラレオネと現地で奮闘する日本人女子(アフリカ音楽最新事情・Sierra Leone編)

皆さん、ご機嫌いかがでしょうか?アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキです。大変ご無沙汰しておりました。
私の本業は金属加工なんですが、今年の夏から始まった新事業が怒涛の忙しさになったことと眼精疲労でなかなか執筆できずにおりました。今回は久しぶりにアフリカ音楽を巡る旅へと皆さんをお連れしたいと思います。


シエラレオネという国をご存知でしょうか?
つい2年前までは私も名前だけしか知らない国でした。
私がシエラレオネを以前より詳しく知るようになったきっかけは、ある一人の日本人女性の存在があります。

その女性とはNPO法人アラジの代表理事、下里夢美さんです。

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高校2年のある時に偶然見たテレビ番組で、シエラレオネの鉱山で兄弟を養うために働く(彼の両親は殺害された)8歳の男の子の姿に衝撃を受け、大学で国際協力を学んだ後にシエラレオネの貧困問題を解決するため自らアクションを起こしNPOを設立した凄まじい人です。
恐らく僕のこの説明だけでは下里さんの凄さは伝わらないと思うので、ぜひ一度下里さんのnoteを読んでみて下さい。きっと何か伝わるはずです。

夢美さんが現在取り組んでいる事業については後ほど詳しくご紹介させて頂きますので、まずは「シエラレオネってどんな国?」というところからご紹介していきましょう。

ご覧のとおり、アフリカの西側ですね。
国名の「Sierra Leone」とはポルトガル語で「ライオンの山」を意味する「Serra Leão」をスペイン語に翻訳した「Sierra León」から来ている、とWikiには掲載されています。ちなみに「Serra」は「山」というよりも「山脈」的なニュアンスが近いかと思います(ブラジル・ポルトガル語の学習経験より)

国の概要についてはWikiなどでご確認頂けるかと思いますが、特筆すべきはやはり鉱山資源ですね。ダイヤモンドやルチル(チタンの原料)、ボーキサイトなど。映画「ブラッド・ダイヤモンド」の舞台としてご存知の方も多いかもしれません。


さて、ここではアフリカ音楽的な観点からシエラレオネを紐解いていきたいと思います。というのも、近現代の西アフリカ音楽においてシエラレオネは決して欠かすことのできない重要な意味を持っているからです。

シエラレオネの首都、フリータウン。
ここはアフリカ随一の天然の良港として名高い場所です。

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(フリータウンの風景 TRAVEL STARより https://travel-star.jp/posts/5926)

なぜこの街は「フリータウン」なのか?

遡ること200年前、1780~90年代に起こった奴隷解放運動によってイギリスが解放奴隷の入植地としたのがその起源で、ジャマイカをはじめとする西インド諸島やアメリカ独立戦争からカナダ南東部へと逃れた解放奴隷(マルーン)たちにとって文字通りここは「自由の町」だったわけです。その後1808年にはイギリスの直轄植民地となり、1827年には西アフリカ初の高等教育機関フォーラーベイ大学(現在のシエラレオネ大学)も設置されます。「クレオール(現クリオ)」と呼ばれる混血の進んだ解放奴隷の子孫たちは高い教育と西洋からの文化を受け、1961年のシエラレオネ独立までエリートとして政治の中心を担っていきます。

ところで19世紀後半から20世紀初頭に「パームワインミュージック」という新しい音楽がシエラレオネの港町で開花していきます。パームワインミュージックとは元々リベリアのクル人たちが生み出した音楽で、航海術に長けていたクル人たちが港町の酒場でヤシのお酒(=パームワイン)を飲みつつギターを弾き、シンプルな打楽器のリズムと共に日々の出来事を歌にしていったのが最初とされています。シエラレオネで人気となったパームワインミュージックは次第にガーナなどにも飛び火していきます。

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パームワインミュージックの代表格でシエラレオネ出身のアーティストS.E.Rogieのアルバム「The New Sounds of S.E.Rogie」を聴いていると、本当にアフリカのビーチでパームワインを飲みながらチルな気分に浸りたくなってしまうのでどうかご注意ください。

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また、参考文献として以前「リバイバル&フュージョンするアフリカ音楽」という投稿でも引用させて頂いたDuryさんの記事をご紹介します。


ここで重要な点は、この時代の現地には高等教育の普及による黒人上流階級が存在したことです。この上流階級の存在が「ハイライフ」と呼ばれる音楽の醸成へと繋がっていきます。ちなみに「ハイライフ」はガーナが発祥で、黒人上流階級の社交場で演奏されるようなパーティーミュージックのことを指します。
シエラレオネと同様イギリスによる統治下にあったガーナでは、1880年代に「アダハ」と呼ばれるブラスバンド形態のハイライフの原型となる音楽が存在していました。これはガーナに駐留していたイギリス軍の西インド兵たちが残した金管楽器とアフリカのリズムやメロディの融合によって生まれた音楽です。これがのちの「ブラスバンド・ハイライフ」へと繋がっていきます。ちなみに独立直後のガーナは伝統音楽の奨励としてこうしたハイライフバンドに資金を提供していたそうです。

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「ハイライフの王」と呼ばれたE.T. Mensah(エマニュエル・テッティ・メンサー)は、ゴールドコースト(=独立前のガーナ)出身のアーティストです。The Temposを率いて西アフリカ中をツアーして回り1957年にはルイ・アームストロングとも共演しました。


また、シエラレオネで開花したパームワイン・ミュージックは2本指で弾く独自のクロスフィンガー奏法を確立、そしてブラスバンド・ハイライフのようなバンド編成へと拡大したギターバンド・ハイライフに進化。更に50~60年代にはエレキギターを取り入れたスタイルに変化していきます。
こうしたパームワインミュージック~ハイライフの系譜とフェラ・クティのアフロビート、そしてコンゴ発祥のリンガラミュージック、更にアメリカを中心とするジャズやソウルやファンク、R&B、Hip Hopなどの要素が混じり合った結果として、今現在私たちが聴いているようなAfrobeats/Afropopという音楽が成り立っていると言えます。


さて、そんなわけでだいぶ前置きが長くなってしまいましたが、シエラレオネはアフリカ音楽を語る上で欠かせない場所だということをご理解頂いた上で、今回はハイライフやパームワインの歴史的音源ではなく現代のシエラレオネ音楽を3組ご紹介させて頂きます!


Rozzy Sokota

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フリータウン出身のRozzy Sokotaは、幼い頃に教会の聖歌隊で歌を歌い始めました。彼女が最初に発表したアルバム「Victory is Mine」はなんと13曲全てがゴスペル曲らしいです!(音源がないためまだ聴いてません)

エンターテイメント業界における彼女のロールモデルはWhitney HoustonやAdeleそしてTiwa Savageとのことで、彼女の曲を聴いた感じだとYemi AladeとTiwa Savageのちょうど真ん中のようなスタイルに感じました。

というわけで早速聴いて頂きたい1曲は11月30日にリリースされたばかりの新曲「Why Worry」です。

もしかすると聴いてすぐピンときた人も多いのでは。そう、ジャズの名曲「枯葉」の印象的なメロディをホーンで取り入れてます。
後ろで鳴ってる音をよく聴くと生バンド録音なんですよね。詳細な情報が全くないので分からないんですが、おそらく彼女のハウスバンド「ROZZY B ENTERTAINMENT BAND」の演奏だと思われます。バンドは毎週金曜の夜に「Prestigious Sierra Light House Hotel」でライブ演奏をしてるなんて情報もありました。Facebookにオフィシャルページがあったので気になる方はぜひチェック!夢美さん、もし会えたら彼らに会ってきてください!
あえてのバンド編成いいですね。以前の曲は打ち込みモノが多いんですが、今年5月にリリースされた「For the Sake of Love」もバンド録音です。もしかするとTiwa Savageのサポートバンド「Alternate sound」のような関係性を意識してやってるのかも知れないと思いました。

もう1曲ご紹介するのはガーナのアーティストKuami Eugeneとのコラボシングル「Silence」です。

Kuami Eugeneというセレクションがまたいいですね。彼はアフロビーツだけでなくハイライフも歌うアーティストで、今年10月にリリースされた「Bunker」は、レトロテイストなのに絶妙に「今」っぽくまとめたハイライフポップソング。MVではマイケルの「スリラー」に対するオマージュも感じさせるウォーキングデッドなムービーで、こちらもオススメです。


Lxg

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続いて紹介するのは「パーティーソングなら任せろ」系アーティスト、Lxgの登場。「シエラレオネのm-flo」というとかなり語弊があるかも知れませんが(笑)2017年リリースのこの「Cherr Am」、なかなか面白い曲だと思います。

Lxgとは「League of Xtra-ordinary Guys」の略だそうで、訳すと「超絶凡人同盟」みたいな意味でしょうか?パンチが効いてますね。
メンバーはリードヴォーカルでプロデューサーのNega Don、紅一点のPretty S、そしてソングライター兼エンジニアのKassという3人。彼らはMTVアフリカミュージックアワードにノミネートされた初めてのシエラレオネ人アーティストなんだそうです。そしてなんと半年前にメンバーのNega DonPretty Sがめでたく結婚とのニュースが出ておりました。
彼らの曲をもう1曲ご紹介しましょう。2020年5月にリリースされた「Kpeh Kpeh」は軽快なアフロビーツ、というよりはガーナっぽいダンスホールチューン。ギターのリフがパームワイン~ハイライフの雰囲気を醸しています。


Star Zee

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Star Zeeは、ダンスバンドの歌手だった父と看護師の母の間に生まれフリータウンで育ちます。幼い頃から音楽やダンスなどに触れ14歳の時にオーディションに合格しStress Inc.Recordsと契約を交わし、「Ladies'Day Out」(LDO)というガールズグループのメンバーとしてデビューします。1998年12月に1stアルバム「Focus on Africa」をリリース。しかし2003年に彼女はグループを脱退、ソロとして活動をスタートさせます。
Star Zeeはこれまでに5枚のオリジナルアルバムをリリースしており、UKやオーストラリアなどでの海外ツアーも行っています。

まずご紹介する曲は2018年リリースの「Champion」。曲のイントロで早速プロデューサータグが聴こえてきます。Cracker Malloですね。Tiwa Savageの「Dangerlous Love」のプロデューサーとしてもおなじみで、他にもStar Zeeの曲では「Super Woman」も手掛けています。

ちなみに僕好みのメロウチューンでは「Around Ya」がチル感が溢れまくってて最高です。ついつい海に向かって走り出したくなりますね。

最新曲は11月にリリースされた「Na by Fos」

Star Zeeはシエラレオネのポジティブなイメージを音楽を通じて世界に伝えていくこと、そして自分と同じような夢を持つ女性のロールモデルとしての役割を果たすことをミッションに捉えています。

【番外編】

Kondi Band

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Kondi Bandはシエラレオネの盲目の親指ピアニストSorie Kondiと、シエラレオネにルーツを持つ米国のプロデューサー/DJのChief Boimaによるユニット。4年ぶりの新作アルバムが今年9月にリリースされたので紹介させて頂きます。

Kondiが奏でるカリンバの軽やかでピュアな音色と最新ダンスミュージックの融合が唯一無二のグルーヴを醸し出しています。ぜひアルバムを通して聴いてみてください。きっとシエラレオネに行ってみたくなると思いますよ。


というわけで今日はアフリカの西海岸に位置するシエラレオネの音楽をご紹介してきました。植民地教育というかたちで西洋文化や考え方をインストールされるも、いざ独立となった時にそれらはほぼ機能せず、最終的には政治腐敗から泥沼の内戦という悲しい運命を辿っていったシエラレオネ。
そんなシエラレオネの未来を若者たちと一緒に築くために活動しているのが下里夢美さんのアラジです。

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これまでに行ってきた事業は、10代のシングルマザーの復学支援や奨学金支援制度、そしてコロナ感染症対策の支援など様々。また現地のカラフルなアフリカ布を使った雑貨販売による雇用創出や、日本での啓蒙活動にも取り組んできました。

そんなアラジが今回マンスリーサポーターを募集しています。

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これまでにアラジが行ってきた支援活動に加え、今回新たな事業として立ち上がったのは、若年妊娠という課題の根本解決の為の男子中学生に対する性教育プログラム「ハズバンドスクール」という活動です。
例えばシエラレオネ共和国ケネマ県では、手に入らない避妊具や性教育の知識不足、性暴力などにより、約17%の女の子が妊娠によって学校を退学し、その後の教育の機会や経済的自立の機会を失っているそうです。

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こうした地道で草の根的な性教育というのは、ジワジワと長い時間をかけて成果となっていく非常に根気がいる活動です。ですから短期的な支援ではなく長期に渡って支援を続けてくれる協力者・伴奏者が必要です。

今回の記事をきっかけにシエラレオネに興味を持ち、私たちサポーターの仲間になってくれる方が一人でも増えたら僕はとても嬉しいです。
時に僕たちはこうした支援に対してお金を出すかどうか悩んだりします。
しかし僕がいつも下里さんから感じるのは、本当に素直な想いでひとつひとつのアクションを起こし続けているその情熱です。

僕の毎月のわずかなお金、例えば仕事帰りの居酒屋で一杯飲むぐらいのお金が、僕に代わってシエラレオネの若者たちのために大きな意味を持つお金に変わる。そんな素晴らしい価値のエクスチェンジを起こしてくれるのが下里さんです。

詳しくはリンクからファンディングサイトをご確認ください。
https://syncable.biz/campaign/2090/

以上、アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキでした。
最後までお読み頂きありがとうございました!

【引用記事はこちら】







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