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「小さな学校」創刊メモ(1)

◇いつも現実より先に進む想いがある。1972年にロッキングオンを創刊した時も、想いの方がはるかに先行していて、出来上がった創刊号は、無残なものであった。それでも、何も不安はなかった。先行していた想いの方に輝きがあったからだ。1978年に「ポンプ」を創刊した時も、想いは遥か先にあった。創刊号の時に、周囲の人は、あまり関心してくれなかった。その時、僕はロッキングオンの編集スタッフで、ロッキングオンの読者はまじめな理論派が多かった。なので「ポンプ」のように、特別なメッセージ原稿を集めた投稿ではなく、普通の人の「体験」と「実感」をベースにした投稿は、物足りなかったのかも知れない。キャッチコピーに「おしゃべりマガジン」と付けたのは僕だが、これも、軽薄に感じられたのか、否定的な声があった。創刊号の編集後記に「21世紀は暇つぶしが最大の産業になる」と書いたのも「暇つぶしでよいのか」というような意見をもらった。

◇現実は、いつもみじめなものだ。想いが先行している限り。今年、新しい雑誌を創刊する。ちょっとわくわくしている。それは、久しぶりに「想いが先行」しているからだ。どうも、ここのところ、想いをそのまま現実化したみたいなことばかりしていた。雑誌はそうではないのだ、想いが疾走してこそ、スリルと発見が生まれる。

◇雑誌の名前は「小さな学校」。タイトルやコンセプトは僕ではない。広島の濱岡喜範さんだ。濱岡さんが昨年現れて、「小さな学校」のコンセプトを説明してくれた。見事なものだったので、賛同した。以来、毎週のように濱岡さんがデメ研に来てくれて、会議を進めた。当初は、雑誌制作の請負の予定だったが、企画を進めているうちに、僕の「想い」も走りだし、濱岡さんと橘川で一緒にやることになった。新会社を設立する。

◇濱岡さんは、広島県福山市を中心に、20近いホテルやリゾートを経営し、15種ぐらいの企業を経営している。グループ名は「感謝グループ」。戦後社会を独力で切り拓いてきた人が、それぞれの地方にいるのだ。

◇それで、僕の想いは変わらず「参加型メディア」である。学生の時に、ミニコミを発行してから、さまざまな参加型メディアを作ってきた。当時の思いはインターネットの普及で、半分は現実化している。1970年代の段階で、投稿雑誌を作ることには意味があったと思う。大手や老舗出版社が知識人や専門家を使い、一方的に情報を送りつける状況の中で、僕が「逆流の時代」と言った、受け手の側からの情報の逆流装置は、時代に少しはコミット出来たと思う。表現衝動を持ちながら、具体的な発露の場所がなかった若い世代の投稿が数多く集まった。その勢いだけが、僕らを支えていた。

◇しかし、現在、インターネットが普及した中で、単なる投稿雑誌を作ることに意味を感じない。インターネットの時代だからこそ、必要な新しいコンセプトによる参加型メディアがあるはずだ。僕の想いは、その一点だけである。

◇まだ創刊していない雑誌をイメージするのは楽しい時間だ。創刊は、今年の10月。体制を整えつつ、想いを走らせている。

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橘川幸夫
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