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柄沢祐輔の死を悼む。



 柄沢くんの悲報を、Facebookで知った。一瞬、なんのことか分からなかった。これからの未来が待っている柄沢くんと「死」という文字がつながらなかった。

 柄沢くんとは、何年か前に、彼が僕の著作を読んでくれて、未来学会のシンポジウムに参加して、僕に声をかけてくれてからはじまった。しばらくして、僕の事務所に建築ポートフォリオを持参して、アルゴリズム建築の話を聞かせてくれた。コンピュータをCADのような道具としてではなく、コンピュータと一緒にデザインをするという視点に新しい時代の息吹を感じた。僕の義弟が建築関係の研究をしていて、その後輩の宮本佳明くんが若い時に僕の家を設計してくれたことを話すと、宮本くんにリスペクトしていたようで喜んだ。

 その後、僕が「音の図書館」というアイデアを説明すると、見事な建築のデッサンを描いてくれた。二人で、未来建築研究会をやろうと話していたが、それも消えてしまう。

 柄沢くんを松永統行さんに紹介して、更に、妹尾康隆(Sta)くんにつなげると、三人は意気投合して、対話を進めるようになった。Staの「AIのべりすと」はスタートしたが、その次に射程に入っていたのは、AIと建築家が創り上げる柄沢くんのアルゴリズム建築であり、松永さんは、それを量子コンピュータの時代のプランとして描いていたようだ。メタバース時代の建築家が生まれたかも知れないのに、本当に残念だ。

 45歳。心不全。あまりに無慈悲だ。この年代で、同じように突然、倒れてしまった男を何人か見ている。みんな一つのことに全力集中するタイプで、身体が悲鳴をあげたのだろう。昨年、学芸大学に彼が来てランチした。彼は、何かまとまったり、アイデアが生まれると話に来る男だった。その時、ハワイで平野友康が子どもを中心とした家族で楽しめる施設の計画をしていたので、その話をすると、すぐに「その建築アイデアあるんです」と目を輝かしていた。

 彼は、単なる理論家ではなく、ものづくりが大好きだったのだと思う。世界的には評価されていたが、日本の施主には恵まれていなかったみたいだ。

 柄沢くん、せっかく、会えたのに、何も一緒に生み出せなくて、ごめんな。君の想いは忘れないので、僕も、あと少し、頑張って進んでみるよ。

 また会おう。


未来への視線。柄沢祐輔くんとの対話



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橘川幸夫
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