(PR)パブロ・ピカソ「海辺の母子像」/國井正人/『イコール』24年秋号掲載予定の原稿です。
画家の気持ち(連載2回目)
パブロ・ピカソ「海辺の母子像」
國井正人
ピカソの絵の中で、唯一彼の感情を強く感じることができるのが、青の時代の絵だ。ピカソは青の時代があるからこそ不滅に残ったのだと私は思う。青の時代の絵はピカソの絵の中でもとりわけ高価だが、それは膨大なピカソの絵の中で数が限られているというばかりでなく、ピカソの純粋な感情が赤裸々に描かれている、魂に触れる絵だからだと思う。ピカソはどん底の貧しさと孤独の中で、底辺に生きる貧しい人々、普通の世界から切り離された無感動な人々の姿を描き始める。盲人、乞食、娼婦、アル中、そして画家。自らと同じ境遇の人物を描くことで、生きる勇気を取り戻そうとする。青の時代の絵には深い沈黙が漂っている。そこには生きる望みを失わせてしまう暗黒の絶望がある。カンディンスキーは言っている。「青は天上の色である。それが極度に濃くなり黒に近いまで沈んでしまうと、そこには非人間的な悲哀の響きを伴ってくる」と。青は人間の苦悩と孤独を現わす色だが、同時にどこか地上を離れた天上の神秘が宿り、救済をもたらしてくれる色でもある。ピカソは海よりも深い青の中に、人生の深淵を見出そうとしたのだろうか。
★國井正人は、国際金融マンとして活躍しているが、ライフワークとして西洋絵画の模写を続けている。単に真似るだけではなく、画家の人生を調べ思索し、「画家の気持ち」になって模写をしてきた。『イコール』では国井の作品と解説を連載していく。
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