プロコーチが考えるチームに絶対必要な存在とは?
お久しぶりの方も、はじめましての方も閲覧していただきありがとうございます。
METAFOOTBALLのコーチ部門担当の"LEO"です。
2020年4月からアナリスト部門担当の"Sou"と共同でMETAFOOTBALLという組織を運営しているのと同時に駆け出しながらプロサッカーコーチとして活動しております。
いきなりですが、みなさん"囚人のジレンマ"というゲーム理論をご存知でしょうか?最近仕事をしていて、"ジレンマ"について考えることがあったので、私が思う「チームスポーツで起こるジレンマから考える、すべてのチームに絶対必要な存在」についてお付き合いいただけたらと思います。
囚人のジレンマとは?
囚人のジレンマ(しゅうじんのジレンマ、英: prisoners' dilemma)とは、ゲーム理論におけるゲームの1つ。お互い協力する方が協力しないよりもよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では互いに協力しなくなる、というジレンマである。各個人が合理的に選択した結果(ナッシュ均衡)が社会全体にとって望ましい結果(パレート最適)にならないので、社会的ジレンマとも呼ばれる。
ゲーム内容
共同で犯罪を行ったと思われる2人の囚人A・Bを自白させるため、検事はその2人の囚人A・Bに次のような司法取引をもちかけた。
本来ならお前たちは懲役5年なんだが、もし2人とも黙秘したら、証拠不十分として減刑し、2人とも懲役2年だ。
もし片方だけが自白したら、そいつはその場で釈放してやろう(つまり懲役0年)。この場合黙秘してた方は懲役10年だ。
ただし、2人とも自白したら、判決どおり2人とも懲役5年だ。
このとき、「2人の囚人A・Bはそれぞれ黙秘すべきかそれとも自白すべきか」というのが問題である。なお2人の囚人A・Bは別室に隔離されており、相談することはできない状況に置かれているものとする。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/
はいwikipedia先生ありがとうございました。ぼくも完全には理解しておりません(笑)ゲーム理論難しいです、、
別件で社会性ってなんだろうなと論文を漁っていたところ、こんな一文がありました。
社会科学の基本的な問題の1つに,「個人的価値を追求する行為主体の間でいかにして協力関係が成立し発展するか」という問いがある.
引用:岡田 章 (1994) 社会的組織の形成と発展.日本経済研究,45(3).
まさに囚人のジレンマだと思いました。実際この後、囚人のジレンマについて話が広がっていきます。
僕が囚人のジレンマについての端的にまとめると「自分にとって都合の良いことや悪いことは、みんなにとっては必ずしも同じではない」くらいの理解で、長々と引用しましたがこんな感じでふわっと理解しています。
チームスポーツにおけるジレンマ
では、チームスポーツにおけるジレンマとはどんなことでしょうか?
引用:ツジトモ・原案、取材協力 綱本将也 GIANT KILLING 555話
人気サッカー漫画『GIANT KILLING』555話でのワンシーンです。
出場機会の少ない選手がカップ戦にて、格下のチーム相手に試合をする直前のミーティング場面です。
そして先程の囚人のジレンマ、チームスポーツに置き換えると
「選手個人とチームの都合は異なる」ということになります。
つまり
① 選手は自分が試合に出場して評価されたい
(個人の利益)
② 評価されるためにはチームが勝利しなければならない
(チーム、個人の利益)
③ 勝つためには日頃から質の高い練習と質の高い選手が必要
(チーム、個人の利益)
④ ③が達成されると自分を含めたチーム全員のレベルが上がる
(チーム、個人の利益)
⑤ 多くの選手が成長するとチームは勝利に近づく
(チームの利益)
⑥ 多くの選手が成長すると自分が出場できなくなる可能性が生じる
(個人の不利益)
以上のようなジレンマが生じてしまいます。
GIANT KILLINGでもレギュラー組と良い練習をしていると評価されているサブ組(画像に写っている選手たち)はチームの調子がどれだけ良くても、普段試合に出場できていないわけなので、プロサッカー選手としては死活問題です。来年チームに残れる保証はどこにもありませんし、プロサッカー選手として終わってしまうかもしれません。
このようにチームで活動しているといくらチームが調子が良くても、不満を持っている選手やスタッフは確実に存在します。
ジレンマについて考えるきっかけ
なぜこのようなチームスポーツにおけるジレンマなんかを考えだしたかというと、GKコーチの僕にクラブの先輩の一言が要因でした。
「GK達って不思議な関係性よな。ゲームに出られるのは1人だけなのにそのライバルのために練習で声かけたり、ボール蹴ったりするのって普通に考えたらおかしいやんな」
そんなこと考えたことなかったわけです。
でも感覚的にGKが上手くなる瞬間って1人1人がバラバラに上手くなるより、一緒に練習している"GKファミリー"全員で上手くなるほうが圧倒的に多いのです。
そうしたら、自分の利害関係を超えてみんなで上手くなる空気感や仕組みを考えていく必要があると考えました。
そこで小さなことですが、1つ変えたことはGK達の呼び方です。
さらっと先ほど"GKファミリー"と呼びましたが、いままでは"GKチーム"と呼んでいました。ただ、関係性を考えたときにチームを超えた関係性が必要だと感じ「家族」と名称を変えました。
今の私が考えるジレンマの解決法
私が考える絶対的な解決法は、、、
ない
以上。笑
しかし個人の不満を解決する方法はありませんが、チームとして歩みを進める方法はあると思っています。
それは、「チームの出来事を"自分ごと"にすること」
先程のGK達の名称を変えた理由もまさにこれです。
当たり前のようなことですが、これが非常に難しい。
私もこんな偉そうなことを言っていますが、なかなか出来ていません。
なぜ難しいか考えてみましょう。
人間なんだかんだ自分がかわいいです。最低限、今の生活水準を維持したいと思っている人が大半だと思います。
そしてプロ契約をしている人は個人事業主なので、チームに所属する監督、コーチ、選手1人1人が社長です。その1人1人の最大の取引先はクラブであって、そこからの契約が打ち切られてしまうと生活水準は保てなくなってしまいます。なので契約の継続もしくはより良い契約を目指す場合がほとんどです。
そこで再びチームスポーツでのジレンマを見てみましょう。
① 選手は自分が試合に出場して評価されたい
(個人の利益)
② 評価されるためにはチームが勝利しなければならない
(チーム、個人の利益)
③ 勝つためには日頃から質の高い練習と質の高い選手が必要
(チーム、個人の利益)
④ ③が達成されると自分を含めたチーム全員のレベルが上がる
(チーム、個人の利益)
⑤ 多くの選手が成長するとチームは勝利に近づく
(チームの利益)
⑥ 多くの選手が成長すると自分が出場できなくなる可能性が生じる
(個人の不利益)
実は選手個人だけのことを考えたら①と②だけで自分の立場は維持できます。
逆に③〜⑤は優秀な人材がチームに加わったり、周りの人材が成長すると自分の立場が脅かされます。
しかしお察しの通り、先程の①と②だけをチーム全員がやっていたらチームの結末は悲惨なものになります。
なので「チームの出来事を"自分ごと"にすること」は非常に難しいことなのです。そのためには"自分ごと"になるような仕組みや取り組みが間違いなく必要になってきます。
チームに絶対必要な人とは?
ここまで長々と僕の駄文に付き合ってくださった方ならもうすでに察しているかと思います。
プロサッカーコーチが考えるチームに絶対必要な存在とは?
それは「自分自身の利益を超えてチームの利益を追求できる存在」です。
まぁ、当たり前っちゃ当たり前なんですけどね。
シンプルに勝利へ近づくための立ち振る舞いができる。
チームで困っている人がいれば、同じポジションのライバルであろうと声をかけ相談にのったり、チームが苦しいときに人一倍、声を出し、身体を張れる。こんな当たり前のことです。
しかし今年の2月にいまのクラブに移籍してきて、普段仕事をしている育成年代やたまにTOPチームの練習に参加させていただいて、もっとも感じている部分です。
「プロサッカー選手はサッカー上手ければいいでしょ?」と思っている方もいらっしゃるかと思いますが、長くプロサッカー選手を続けている人は間違いなくチームの利益を追求できます。
それはコーチでも同じです。最前線でコーチを続けられている人は間違いなく自分の業務外のところでもハードワークします。
それが結果、自分自身の利益につながることを理解しているのかもしれませんが笑
今回のnoteで知識や技術だけでなく、それ以外のところも実は大事だったりすることがスポーツ業界を目指す方の役に立ってくれれば幸いです。
そして、私自身もチームの役に立てるように邁進していきます。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。またお会いしましょう。