アナリスト育成論~洞察力vsIT能力~
はじめまして
METAFOOTBALLアナリスト部門担当の"Sou"です。
現在、プロのスポーツアナリストとして活動する傍らスポーツアナリストを目指す若者へのキャリアサポートをしていきたいという想いから始めた"METAFOOTBALL"の活動も2021年4月で1年が経過しました。
これまでは「職業:スポーツアナリスト」になるまでの軌跡
というタイトルで何者でもなかった私がプロスポーツアナリストとしてどうやってスポーツチームに加入したかについて赤裸々に書かせていただきました。
記事の反響もあり、たくさんの進路選択の悩みが舞い込んできました。
「どこの大学に入ればいいの?」「どこで学べばいいの?」
これらの悩みを抱える方が多く、、、
プロのスポーツアナリストになるためにここに入れば、なんとかなるという感覚を持っている方が多い印象を受けました。
これまで進路選択等の悩みに対して私がお伝えしてきたのは、大きく3つのことです。
❶どのような能力を身につけたいか
❷他のアナリストと比べて何を強みにしたいか
❸リクルート活動中に自身の何をアピールできるようにしていたいか
実際に自身がプロの現場で働くことを想像しながら逆算して考えてみると、より効果的な問いになると思います。
つまり「自身が目指すアナリスト像」によって学ぶ環境も変わってくるのではないかということです。
実際、競技種目によってはアナリストたちの出身校をみるとやや偏りがあるかもしれませんが、その一方、様々な学びの背景を持つ方もいます。
「どこで学んだ」かというよりも「何を学び、何を経験したか」という部分が大切だと思います!
もちろん、成長サイクルを加速させる上で環境も重要な要素ではありますが、進路選択1つで全てが決まる訳ではありません。
アナリスト育成の実態
日本国内でも若手スポーツアナリストを育成するために、様々な取り組みが行われており、近年の大きな変化の1つとしてアナリストを養成するための専門学校が誕生したことではないでしょうか。
※現在、国内の大学でスポーツアナリスト養成を謳っている大学は確認できない
今日の日本のスポーツ界では、指導者育成パスウェイが確立されつつありますが、アナリスト育成パスウェイの確立に至っていないことが大学で専門に養成できない理由だと私は考えています。
では、専門学校のカリキュラムの一部を見てましょう!
引用:https://www.tsr.ac.jp/course/analyst/
カリキュラムを見て率直に感じたことはアナリストに必要だと思われるスキルを体系化することで学ぶ場を整備し、経験の場としてプロチーム等で実習を行えるようにしているのだと思いました。
これが1つの育成パスウェイになりうるかは卒業生たちの動向を見て見極めるしかないでしょうが、これまで学ぶ機会やコネクションがないとなかなか行くことのできなかったプロの現場に行く機会を平等に与えることになるので、少なからずアナリスト育成に貢献しているといえるでしょう。
洞察力が先か、IT能力が先か
先程ご覧になったカリキュラムを見てもわかる通り、体育系の学部に進学すれば、似たようなカリキュラムを組むことは可能な内容といえるでしょう。
よって、アナリストの基礎的な知識で大きな差がつくことはありません。
私がアナリストを始めたばかりの頃に先輩アナリストたちと比較して差を感じたのは”洞察力”と”IT能力”でした。
洞察力:ゲームやパフォーマンスの本質を見抜く力
IT能力:ゲーム分析ソフトや統計ソフトの活用だけでなく、スポーツ現場以外にも役立つICTの知識
この2つのスキルを高度なレベルで身につけている方はほとんど見たことがありません。
実際、その競技で最もシェア率の高いゲーム分析ソフトを使いこなせれば、インターンやアシスタントとして活動することは可能だと思います。
場合によってはそれだけでアナリストを名乗ることができるかもしれません。
しかし、プロのアナリストは機材屋さんではありません!
個人的にはゲーム分析ソフトの操作を含めたIT能力がアナリストの可能性を広げ、今後、最低限のIT能力がないとプロの現場に入れなくなってくると思います。
ただ、プロの現場に入って一流と二流のアナリストを分けるのは”洞察力”だと思います。
プロ現場のスタッフが第一に求められるものは”勝利”、その次に”パフォーマンス向上”です。マクロな視点で考えるとコーチもアナリストもチームから求められるものは本質的に変わりません。
チームから求められるものを、アナリストならではのアプローチで解決していく必要があります。
具体的に言うと”目的意識と課題意識”をどこに置き”方法論”をどうするかと言う話になりますが、これに関してはまたいつか記事にしたいと思います。
まとめ
アナリストが求められるスキルは多岐に渡りますが、今回は代表的な2つのスキルについて書かせていただきました。
最近、「ゲーム分析ソフトを操作する人=スポーツアナリスト」という風潮が広がっているように感じ、アナリスト育成の観点から見てもそこに注力している方もいるので、私が感じている育成論の一部を打ち明けてみました。
アナリストに必要なスキルの全てを他者から教わることは不可能で、自分自身で磨いていかないといけないスキルも存在することを忘れてはいけない。
さらに、このAI時代に我々の存在意義を再考していく必要があると感じている今日この頃。