NAGAの新機能「段位ptアナライザ」を用いて、ケイテンプッシュを色々調べてみた

こんにちは。髙倉 拓馬(メタビート)です。今回はケイテンプッシュができるボーダーラインについての記事を制作しました!
有料設定にはなっておりますが、無料で全文読むことができます。記事が良いと思って下さった方はぜひご購入とスキをお願いします。


はじめに ケイテンプッシュの局収支的ボーダーラインと、段位ptアナライザの登場


これまでで、最終手番でのケイテンプッシュの局収支については朝倉康心プロの著書
『麻雀の失敗学』をはじめ、様々な本やブログで議論がなされてきました。
局収支的には、
$${(ノーテンの失点)<(放銃率)×(放銃失点)+(1-放銃率)×(テンパイ得点)}$$

となれば、最終手番のケイテンプッシュが得であるといえます。
仮に、自分がオリると1人テンパイ、自分が押し切ると2人テンパイで、放銃すると8000点であるとすると、上の式より
$${-1000<放銃率×(-8000)+(1-放銃率)×1500}$$
となり、これを計算すると
大体26%未満の牌なら押して得になることになります。

ですが実際には、
「テンパイ時の収入は少ないが放銃時の失点が大きいため、半荘に与える影響は放銃時の方が大きいのではないか?」
「点数状況によってはもっと押せる局面やオリ気味になる時もあるのではないか?」
という、順位点を意識した考えゆえにこの局収支上のボーダーラインを信じられない人もいらっしゃると思います。(実際私は天鳳ルールでケイテンプッシュを全くといっていいほど出来ていないです)

この疑問を解決するために今回使用するのが、いつもお世話になっている麻雀AI「NAGA」で登場した機能「段位ptアナライザ」です。
なんとこちら、NAGAの会員であれば解析のポイントにかかわらず無料で使用することができます。


進行中の局、点数、想定する卓のポイント配分(雀魂魂天配分や、Mリーグルールを想定したカスタム配分も可能!)を入力すると、

このように、すべての打点や流局のパターンにおいて、プレイヤーの段位ポイント期待値がどのように変動していくのかを教えてくれます。
今回はこの「段位ptアナライザ」を用いて、局面に応じたケイテンプッシュのボーダーラインを調べていきます!

ケイテンプッシュのボーダーライン:計算方法、東発フラット


計算方法は局収支を求める式とほとんど変わりません。

$${(ノーテン時のpt期待値)<(放銃率)×(放銃失点に応じたpt期待値)+(1-放銃率)×(テンパイ時のpt期待値)}$$

となればケイテンプッシュが見合うことになります。

自分以外に1人テンパイ

まずは東1局東家視点で考えてみます。
今回はすべて放銃失点を満貫と仮定します。
卓のptは天鳳鳳凰卓東南戦(90-45-0-△135)を想定します。
南家が確実にテンパイしていて、東家の最終手番、自分が押すと南家との2人テンパイ、オリると南家の1人テンパイという場面を考えます。


東家の放銃時、失点ptevは-44.76


東家ノーテンで南家1人テンパイの時のev(-6.55)


東家テンパイ、2人テンパイ時のev(+7.43)

これを先ほどの式に入れると、

$${(-6.55)<(放銃率)×(-44.76)+(1-放銃率)×(7.43)}$$

となり、これを計算すると
約26.7%の牌までは押せることになります。

同様に子vs子、自分子vs親についても計算して、押せるボーダーラインを求めると、
子vs子 29.0%

自分子vs親 20.1%

という結果になりました。これはおおよそ局収支通りといえます。

自分以外に2人テンパイ

次に自分以外に2人がテンパイしている場合を考えていきます。
ダブロンの可能性がない、2人に対してほぼ同じ確率で当たるとして考えると、
親vs子2人 2人の合算放銃率29.6% (≒1人当たり16%くらいの牌までなら押せる)

子vs子2人 2人の合算放銃率29.8% (≒1人あたり16%くらいの牌までなら押せる)

子vs親、子 2人の合算放銃率25.5% (≒1人あたり10%強の牌までなら押せる)

という結果になりました。

自分以外に3人テンパイ

最後に自分以外3人がテンパイしているパターンです。

親vs子3人 3人の合算放銃率41.2% (1人あたり約16%)
子vs親、子、子 3人の合算放銃率 33.6% (1人あたり12%強)


ここまでの結果は、すべておおよそ局収支通りと言えます。
東発では今までの本にあるケイテン局収支の求め方を使えそうです。


★南場の局面に応じたケイテンプッシュ①

さて、ここからが本題になります。

持ち点が変わるとケイテンプッシュの放銃率が変わるのかを見ていきましょう!

南3局でこのような点数状況を想定してみます。
どのくらい押せるのか、またルールに応じて押せるボーダーライン放銃率は変化するのかを調べていきましょう!
今回は、
・天鳳鳳凰卓&雀魂の基本配分(2-1-0-△3、ラスが重い)
・Mリーグルール(オカを減算して45-5-△15-△35、トップが重い)
雀魂王座の間配分(5-2-△2-△5、2着と3着の間が若干重い)
の3つの順位配分で分析していきます。

天鳳ルール

東家視点
vs南家 59%
vs西家 34%
vs北家 34%

南家視点
全員に対して約30%

西家視点
vs親 10%弱
vs南家 16.2%
vs北家 13.4%

北家視点
vs親 9.3%
vs南家 11.1%
vs西家 20%

まずいえるのは、ラス目の東家は対一人であればほぼすべての牌をプッシュできる
ということです。特にライバルの南家相手であれば牌を見なくてもいいレベルですね。
ラス目のまま局を消化してしまうこと、南家と4000点差を広げられて最終局を迎えることは、満貫放銃と比べてラス率の差がそこまでないということだと考えられます。
南家もここでライバルの東家にテンパイ料を取られると着落ちしますし、東家がノーテンだと差を広げることができますので、対1人ならかなりの牌をプッシュできますね。
一方トップ目の西家、2着の北家は押せる牌がかなり制限されています。特に北家は満貫放銃をすると3着になりラス落ちのリスクがかなり高まるため、親と南家に対しては筋や1枚切れ字牌くらいまでしか切れなさそうです。(というか逆に、筋1本くらいなら押していいんですね。驚き。)
西家、北家のケイテンプッシュで面白いところは、放銃しても順位が変わらず局消化ができるところには無筋1本くらいなら押せることです。実際には東家がかなり攻めてきて東家+子の2人テンパイになることも十分ありますし、親にさえ当たらなければラフにプッシュして良いかもしれません。

Mリーグルール

東家視点
vs南家 64%
vs西家 40%
vs北家 41%

南家視点
全員に対して約30%

西家視点
vs親 11.8%
vs南家 16.6%
vs北家 13.5%

北家視点
vs親 11.7%
vs南家 17.0%
vs西家 29.2%

いよいよ東が本当に何でも押すモードになりました。
そして面白いのが、北家が現状のライバルである西家に対して放銃率29%の牌まで押せるようになっていることです。西家に放銃しても着落ちしないのにトップ率がこのケイテン料でかなり変わるということなのでしょう。
もしこれが次局満貫ツモで足りる点差だったとするとかなりプッシュ度合いが上がるのでしょうか。

(追記)

満貫ツモが足りる点差にしてみました。
放銃率43%までプッシュ可能であるという結果が出ました。
条件作りにおいて満貫ツモを残すことの偉大さがよくわかりますね。

雀魂王座の間配分(5-2-△2-△5)

東家視点
vs南家 67%
vs西家 46%
vs北家 40%

南家視点
全員に対して約30%

西家視点
vs親 10%
vs南家 16.2%
vs北家 13.3% 

北家視点
vs親 11%
vs南家 12%
vs西家 23.1%

2着3着の幅が一番広いことによって、北家が若干押しづらくなりました。
それ以外は、基本的に天鳳とMルールの間の放銃率と考えて差し支えないと思います。

★南場の局面に応じたケイテンプッシュ②接戦

南3局にして3人が団子状態の競りです。この状態でどれくらいの牌までなら押せるのか調べていきます。

天鳳ルール

東家視点

vs南家 7.5%
vs西家 15.2%
vs北家 21.4%

南家視点
vs東家 12.5%
vs西家 12.3%
vs北家 18.3%

西家視点
vs東家 36.4%
vs南家 53.5%
vs北家 41.5%

北家視点
vs東家 19.6%
vs南家 20.5%
vs西家 32.2%

親は放銃する意味がないトップ目の南家に押すことができません。
また、北家は当面のライバルである西家にはかなり押すことができます。
トップ目も北家には18%も押せることに対して驚かれるかたもいるのではないでしょうか。

Mリーグルール

東家視点

vs南家 23.3%
vs西家 26.6%
vs北家 36.9%

南家視点
vs東家 20.1%
vs西家 19.5%
vs北家 25.2%

西家視点
vs東家 38.2%
vs南家 52.9%
vs北家 38.7%

北家視点
vs東家 26.1%
vs南家 31.3%
vs西家   36.1%

ラス目が押せるのはもちろんのこと、今度はトップである南家でさえもそれなりのプッシュが要求されるようになりました。
減点が罪となりやすい天鳳ルールに対する、どこかで加点しないとトップ率が下がるMリーグルールの対照的な構図が見て取れます。

雀魂王座の間配分

東家視点

vs南家 14.1%
vs西家 21.7%
vs北家 35.3%

南家視点
vs東家 16.2%
vs西家 14.6%
vs北家 19.7%

西家視点
vs東家 38%
vs南家 52.8%
vs北家 39.4%

北家視点
vs東家 25.9%
vs南家 31.6%
vs西家   36.6%

ポイントの傾斜が真ん中にあることによって、今2着の親がかなり難しいケイテンプッシュの押し引きをさせられていることが分かります。
戦う意味がない相手にはオリて、現状のライバルには押す方針がよさそうですね。

★東場のラス目親、ケイテンプッシュ方針

最後に東場のへこんだ親番のケイテンプッシュ方針を見ていきましょう!


このような状況を想定します。
この時、東家視点で

vs南家 46.5%
vs西家 45.7%
vs北家 42.5%

という結果になりました。
この状況で、自分の流局ノーテンと満貫放銃はどちらもラスに等しい結果だといえるんですね。
そのため、この親番の加点とさらなる連荘チャンスに賭けて、最終手番ではゼンツを敢行するのが良さそうです。

★最終手番の1巡前だとどれくらい押せるのか?

ここまでで
pt配分が一番重いところのライバルとはゼンツ、無駄な相手とは戦わない
・自分がラス目の時はゼンツ

であることがわかりました。ですが実際には

・放銃率40%~50%の牌が4人麻雀で現れることがかなり稀
・最終手番の前から押し引きさせられることがある

そのため、、次は最終手番の1巡前でどれくらいの放銃率の牌を押せるのか調べていきます!
計算方法は以下の通りです。

①最終手番1巡前に放銃率x%の牌を打って満貫放銃したときのpt期待値

②相手にy%で満貫ツモられ(yは5~10%の値を設定)たときのpt期待値

③最終手番でz%で現物ではない牌を打つ場面になり、放銃率x%(①と同じ割合)の牌を打って満貫放銃(zは30~50の値を設定)したときのpt期待値

➃①~③をすべて潜り抜けた時の2人テンパイpt期待値

⑤最終手番1巡前にベタオリしたとき、相手にy%で満貫をツモられ、残りの(100-y)%は相手の1人テンパイ

この①~➃の期待値合計が⑤を上回るとき、最終手番1巡前でもケイテンプッシュが見合うことになります。

今回は、
・一番ポジティブに見積もった値P(相手の満貫ツモられ率5%、現物を最終手番で打てる率50%)
・一番ネガティブに見積もった値N(相手の満貫ツモられ率10%、現物を最終手番で打てる率30%)
の2パターンをお見せします。ここまでの記事にある点数状況を利用して、面白かったところを抜粋しております。ぜひ参考にしてください!

東発、対一人 天鳳ルール

自分親 
最終手番 26.7%

最終1巡前
P 17.2%
N 15.6%

・自分子、vs子
最終手番 29.0%

最終1巡前
P 18.4%
N 16.7%

・自分子、vs親
最終手番 20.1%

最終1巡前
P 12.8%
N 11.4%

南場の局面に応じたケイテンプッシュ①の場面 天鳳ルール


・自分親

vs南家
最終手番 59.7%

最終1巡前
P 44.8%
N 41.1%

vs西家
最終手番 34%

最終1巡前
P 20.4%
N 19.3%

vs北家
最終手番 34%
上と同じにつき省略

・自分南家
最終手番
全員相手に約30%

最終1巡前
vs親
P 21.6%
N 19.1%
vs西家、北家
P 約19%
N 約17%

・自分西家

vs親
最終手番 9.8%

最終1巡前
P 6.2%
N 5.4%

vs南家
最終手番 16.2%

最終1巡前
P 8.9%
N 8.4%

vs北家
最終手番 13.4%

最終1巡前
P 8.3%
N 7.5%

・自分北家
vs親
最終手番 9.3%

最終1巡前
P 6.0%
N 5.2%

vs南家
最終手番 11.1%

最終1巡前
P 5.9%
N 6.5%

vs西家
最終手番 20.0%

最終1巡前
P 10.1%
N 10.5%

おおざっぱにまとめると、
・最終手番で~20%くらいの放銃率までなら押せる状況で、その前巡には
(最終手番のボーダー放銃率÷2)の牌くらいなら押せる

・最終手番で20%以上の牌を押せる状況で、その前巡には

(最終手番のボーダー放銃率-10~20弱)の牌くらいなら押せる(引く数字はボーダー放銃率の大きさによって調整)

ということが分かります。
ラス目の親番で、1巡前ですら40%の牌を押せるのは驚きですね。


ここまでの記事はいかがだったでしょうか?
私自身、調べていてかなりの牌を押せることに驚きを隠せていません。
放銃しても心折れずに、全力でケイテンプッシュしていきましょう(笑)
これからも「段位ptアナライザ」を使用した記事を上げますので、ぜひご覧ください!
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