毎年GI馬を輩出する「輸入繁殖牝馬」考察
今回、お伝えしておきたい話は近年、その勢力図を大きく塗り替えるかの如く毎年のようにGI勝ち馬を輩出している【輸入繁殖牝馬】に関して。
◆大阪杯:ジャックドール(母ラヴァリーノ/米)
◆桜花賞・オークス・秋華賞:リバティアイランド(母ヤンキーローズ/豪)
◆皐月賞:ソールオリエンス(母スキア/仏)
◆天皇賞(春):ジャスティンパレス(母パレスルーマー/米)
◆NHKマイルC:シャンパンカラー(母メモリアルライフ/英)
◆菊花賞:ドゥレッツァ(母モアザンセイクリッド/豪)
上記は2023年11月までのGI勝ち馬の中で「母が輸入繁殖牝馬だった馬」の一覧。
2023年のエリザベス女王杯まで既に8勝を挙げ、母内国産のGI勝ち馬も8勝を挙げていますが、年度によっては輸入繁殖牝馬のGI勝ちが上回る状況にあり、LQに指名馬を格納する上で無視できない存在に。
2022年にはスターズオンアース(桜花賞・オークス)、ドウデュース(日本ダービー)を筆頭にその他多数。2021年にはシュネルマイスター(NHKマイルC)、グランアレグリア(ヴィクトリアマイル・マイルCS)、シャフリヤール(日本ダービー)を筆頭にその他多数。
近2年もダービー馬を輩出しておりますが、母内国産馬と母輸入馬のGI勝ちの構図が一気に逆転し、現在の流れを生み出したのは2019年の事。
輸入繁殖牝馬産駒が年間でGIを「13勝」挙げましたが、重賞全体を見ても「48勝」を挙げたように、この2019年こそが今の輸入繁殖牝馬産駒活性の流れを生み出す「スタート元年」とも言えます。
また、一括りで「輸入繁殖牝馬」と言ってますが、日本競馬は世界中から血を求めて繁殖牝馬の輸入を続けております。アメリカ、イギリス、フランスは勿論、近年ではドイツやアルゼンチン産の繁殖牝馬も多くなりましたが、ここからは出身国別に代表的な繁殖牝馬とその産駒を見てみましょう。
【アメリカ産繁殖牝馬】
タピッツフライ
(父Tapit)
アメリカ芝GIレース2勝
代表産駒:グランアレグリア(桜花賞、安田記念、マイルCS2連覇、スプリンターズS、ヴィクトリアマイル)
ドバイマジェスティ
(父Essence of Dubai)
アメリカ芝GIレース1勝
代表産駒:アルアイン(皐月賞、大阪杯)/シャフリヤール(日本ダービー、ドバイシーマC)
ラヴズオンリーミー
(父Storm Cat)
不出走(半姉は2005年カルティエ賞最優秀2歳牝馬ランプルスティルトスキン)
代表産駒:リアルスティール(ドバイターフ)/ラヴズオンリーユー(オークス、クイーンエリザベスII世C、香港C、BCフィリー&メアターフ)
日本における輸入繁殖産駒で最も多いのがアメリカ産。ダートが主流のアメリカ競馬なので、産駒傾向としてダートでの活躍も多く、また全体的に距離的な適正もマイルからそれ以下を得意としている馬が多いのが特徴です。
日本ダービー等のクラシック路線を狙いたいのであれば、上記のドバイマジェスティのように「芝GI勝ち」のタイトルを持つようなタイプがおススメ。
【イギリス産繁殖牝馬】
ドナブリーニ
(父Bertolini)
イギリス芝GIレース1勝
代表産駒:ジェンティルドンナ(牝馬3冠、ジャパンC2連覇、ドバイシーマC、有馬記念)
リトルブック
(父Librettist)
イギリスで未勝利(半姉ドナブリーニ)
代表産駒:ロジャーバローズ(日本ダービー)
スノーパイン
(父Dalakhani)
フランスで7戦2勝
代表産駒:タワーオブロンドン(スプリンターズS)
イギリス産の繁殖牝馬で特徴的なのは同一牝系により結果を出している点。上記でも上げたドナブリーニとリトルブックは姉妹ですが、兄弟馬が既に日本で結果を残しているタイプや、近親が日本で結果を残しているタイプは積極的に狙うのもあり。また血統的にディープインパクト系種牡馬との相性も良いと言えるでしょう。
タワーオブロンドンのようなゴドルフィン系は独自の理論を持つだけに、大化けの可能性を十分に秘めています。
【フランス産繁殖牝馬】
リリサイド
(父American Post)
フランス1000ギニーで1位入線も降着
代表産駒:リスグラシュー(エリザベス女王杯、宝塚記念、コックスプレート、有馬記念)
スタセリタ
(父Monsun)
アメリカ、フランスでGIレース6勝
代表産駒:ソウルスターリング(オークス)
ミュージカルウェイ
(父Gold Away)
フランスで芝重賞3勝
代表産駒:ミッキークイーン(オークス、秋華賞)
フランス産馬の繁殖牝馬からはエリンコート、ミッキークイーン、ソウルスターリングとオークス馬が多いですが、オークス馬そのものは2023年のリバティアイランドを含め輸入繁殖牝馬産が多いレースとなっています。
メタポグ独自情報では他国の輸入繁殖牝馬と比較しクラシック出走率は第1位。クラシックを中心とした大物を狙うならフランス産の輸入繁殖牝馬産駒に注目したいところです。
【ドイツ産繁殖牝馬】
セリエンホルデ
(父Soldier Hollow)
ドイツオークス馬
代表産駒:シュネルマイスター(NHKマイルC)
サロミナ
(父Lomitas)
ドイツオークス馬
代表産駒:サリオス(朝日杯FS)
マンデラ
(父Acatenango)
ドイツオークス3着
代表産駒:ワールドプレミア(菊花賞、天皇賞春)
サンデーサイレンス系種牡馬との相性が良く、上記サリオス(父ハーツクライ)やワールドプレミア(父ディープインパクト)もその一例。近年、輸入頭数が増えており、時に大物も出てきている状況からも今後、ドイツ産の輸入繁殖牝馬は注目しておきたい存在です。
【アルゼンチン産繁殖牝馬】
マルペンサ
(父Orpen)
アルゼンチンGIレース3勝
代表産駒:サトノダイヤモンド(菊花賞、有馬記念)
マラコスタムブラダ
(父Lizard Island)
アルゼンチンGIレース1勝
代表産駒:レシステンシア(阪神JF)
ライフフォーセール
(父Not For Sale)
アルゼンチンダートGIレース2勝
代表産駒:ダノンファンタジー(阪神JF)
近年、輸入繁殖牝馬も増え、更に勝ち上がり率も優秀なのはアルゼンチン産の繁殖牝馬産駒。アルゼンチン競馬の特徴は、日本と同様、芝・ダートが偏りなく行われていることですが、父がサンデーサイレンス系以外の種牡馬であった場合は「産駒がダート馬になる確率は7割超」となるだけに、芝路線で将来の種牡馬入りするような馬を狙いたい場合は「父サンデーサインレス系」を狙いたいところです。
以上、出身国別に代表的な繁殖牝馬とその産駒を取り上げました。
それ以外にも輸入頭数が多いのはアイルランド産やオーストラリア産。特に2023年のクラシック戦線はリバティアイランド、ドゥレッツァとオーストラリア産が活躍しましたが、活躍馬に共通して言えるのは、そのほとんどが「社台グループ」が輸入した牝馬の産駒である事。
社台SSに優秀な内国産種牡馬・輸入種牡馬を多数抱え、種牡馬との血統的相性を考えた上で毎年大量に繁殖牝馬輸入すれば、当たりを引く確率が高まるのも当然なのですが、指名馬のLQ格納の際に事前に検討したいのは、上記で掲げた出身国別の特徴を理解・把握しておくことです。
また上記で例として挙げた輸入繁殖牝馬の代表産駒はサンデーサイレンス系種牡馬、中でもディープインパクト産駒が多いですが、2023年のGIを制したジャックドール(父モーリス)、リバティアイランド(父ドゥラメンテ)、シャンパンカラー(父ドゥラメンテ)、ドゥレッツァ(父ドゥラメンテ)とサンデーサイレンス系以外の種牡馬でも結果を残しております。
これらに共通するのは「Mr. Prospector」や「Halo」のインブリードを内包している点となりますが、LQに指名馬を格納する際には、社台グループの輸入繁殖牝馬の産駒、そして血統的な部分も考慮し狙いを定めることで「思わぬ大物」に出くわす可能性があります。
もちろんデビュー戦の結果を見てから、空きがあれば指名可能なのもMETA POGだけが持つ強み。
走る馬を自身のLQに格納する可能性は想像以上に多岐に渡ります。チャンスは常に転がっているとお考え頂き、日々の研究は余念なくお進め下さい。