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『今日から死神やってみた!』と、幾つかの物語などを対応させた考察

https://note.com/meta13c/n/n7575b6c0826b

この記事の注意点などを記しました。

ご指摘があれば、
@hg1543io5
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注意



これらの物語の重要な展開を明かします。
特に、PG12指定の映画『シン・仮面ライダー』、及び進行中の漫画版にご注意ください。


特撮テレビドラマ

『ウルトラマン』
『ウルトラマンティガ』
『ウルトラマンダイナ』
『ウルトラマンメビウス』
『大怪獣バトル』
『ウルトラマンZ』

特撮オリジナルビデオ

『ウルトラマングレート』

小説

『幼年期の終わり』
『オタク王子と作家令嬢の災難』
『今日から死神やってみた!』(1,2)
『袋小路くんは今日もクローズドサークルにいる』
『薄幸祓い屋少女の相棒は最凶あやかし女王〜なりゆきで御曹司と偽装婚約も始めました〜』
『悪役令嬢に探偵は向いてない』
『源氏物語』
『サイファイ・ムーン』
『二重螺旋の悪魔』

特撮映画

『シン・ウルトラマン』
『シン・仮面ライダー』
『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』
『ガメラ 大怪獣空中決戦』
『ガメラ2 レギオン襲来』
『ガメラ3 イリス覚醒』

漫画 

『真の安らぎはこの世になく シン・仮面ライダー』
『NARUTO』
『ドラゴンボール』
『ドラゴンボール超』
『左ききのエレン』(少年ジャンププラス)
『クレヨンしんちゃん』
『新クレヨンしんちゃん』
『FAIRY TAIL』

テレビアニメ

『NARUTO』
『NARUTO 疾風伝』
『クレヨンしんちゃん』
『新世紀エヴァンゲリオン』

アニメ映画

『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』
『クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』

はじめに

 以前noteで予告した通り、『今日から死神やってみた!』シリーズについての考察を行います。
 この物語の要素と、私の知る特撮や少年漫画の要素を対応させることで見えて来るものがあると考えます。

2023年12月31日閲覧


ウルトラシリーズ、ゴジラシリーズ、ガメラシリーズ、『ドラゴンボール』など


2023年12月31日閲覧

 まず、『今日から死神やってみた!』は、母親の影響で強い霊力を持つらしい女子中学生の井住伊織が、突然、人間の魂を喰らう悪魔やその使い魔に狙われ、人間の魂を導く死神に助けられ、その死神の見習いに選ばれ、幽霊の未練を解決する、あるいは死神として悪魔に立ち向かいます。
 この物語を、以前から日部さんの『オタク王子とベストセラー作家令嬢の災難』と対応させた『シン・ウルトラマン』などから連鎖させてみます。
 

 『今日から死神やってみた!』では、人間と死神の境界にいる伊織が、人間だけでは到底対処出来ない、そして死神だけでも難しい悪魔の起こす事件を解決します。しかし、その両者より元々圧倒的な能力や技能が伊織に備わっているとも言い切れず、2つの要素の組み合わせが重要そうです。
 『シン・ウルトラマン』は、外星人(宇宙人)のウルトラマンが、人間だけでは対処出来ない禍威獣を倒す強さを持ちつつ、自分が死なせた人間の神永と融合することで弱体化しつつも「あえて狭間にいる」ことで、やがて人間とウルトラマンの両者の要素でこそ出来る戦いをしていきます。
 『ウルトラマンティガ』は、平成ウルトラシリーズの1作目であり、突然怪獣が現れるな中で、「超古代文明」に関係する「巨人」に変身する能力を得た人間のダイゴが、調査チームから防衛チームに変化するGUTSの隊員として立ち向かっていきます。やがて、人間の協力を得ることで、その巨人であるウルトラマンだけでも出来ない力を得て、巨大な「闇」を倒します。
 『ウルトラマンメビウス』では、平成ウルトラシリーズでは珍しい、人間と一体化しない宇宙人のウルトラマンメビウスが、人間のヒビノミライと名乗り、昭和ウルトラシリーズの歴史を継ぐ世界観で、防衛チームのGUYSに入り、途中で正体を知られながらも、GUYSの力の発展の中で協力し合い、やがてウルトラマン達にとっても宇宙全体の脅威だったエンペラ星人に挑みます。
 平成『ガメラ』3部作では、古代文明が遺伝子操作で作り出したらしい、人間を捕食して増殖する怪獣ギャオスなどに、やはり遺伝子操作で対抗して生み出されたらしいガメラが、人間に敵視されることもありながらも、協力して戦います。
 また、この『ガメラ』3部作に関係するスタッフのいる『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』では、『ガメラ』3部作のような「怨念」や「父と娘」などの概念があります。
 『ドラゴンボール』は、「神」が作り出した宝のドラゴンボールで願いをかなえようとするところから始まりますが、徐々に神やかかわる宇宙人により、様々な宇宙人や人造人間などの敵に立ち向かっていきます。『ガメラ』シリーズや『ティガ』に影響を及ぼしていると言えるところが幾つかみられました。『ティガ』のイルマやゴブニュと『DB』のベジータやセルなどです。

 『シン・ウルトラマン』や『ティガ』や『メビウス』で、人間に出来ないことをウルトラマンがするようで、ウルトラマンだけでも出来ないことを人間の協力でしていくように、『ガメラ』や『ゴジラ 大怪獣総攻撃』でも、父親や大人だけでは出来ないことを娘などの協力でするところがあります。『ドラゴンボール』でも、「地球の神」やベジータなどが、善悪はともかく、自分より劣るはずの人間の協力で少しずつ動揺していきます。

無力感と罪悪感による積極性
 

 また、本来一般人と変わらないように見える伊織が否応なく戦いに巻き込まれる中でも、その積極性を失わないのは、友人を守れない、あるいは死神に負担をかける無力感などがあります。私が以前『今日から死神やってみた!』と対応させた『サイファイ・ムーン』などの梅原克文作品は、主人公が危険な戦いに挑む動機として、元々私利私欲で勝手な行動をしたり身近な人間の不幸を防げなかったりした罪悪感があります。

情報の拡散
 

 伊織は死神として幽霊の困りごとを解決する中で警察にも頼りますが、うかつに情報を明かせずに困るところがあります。これで短い物語の中で、なるべく内輪で解決するような展開になっていますが、劇中の戦いを隠しにくい特撮では、主人公達の情報がどう拡散されるかが鍵になるようです。
 『シン・ウルトラマン』は劇中のネットで正体が公開されただけでなく、そのあともネットでの情報公開自体が外星人メフィラスに大きく関わります。『ウルトラマンティガ』では、続編の『ウルトラマンダイナ』でも、ダイゴの正体は隠されたようです。『ウルトラマンメビウス』ではウルトラマンメビウスの正体が知られたことが、やがてその昭和シリーズの世界観の流れそのものを大きく変えた可能性があります。
 

「反省」から「成長」を描く共通点

 また、ここまで紹介した物語には、それぞれ「勝手」とも取れる言動のある人物の「反省」があります。
 『シン・ウルトラマン』で、ウルトラマン=神永が、最初は自発的にコーヒーを淹れずに不満を言われ、正体を隠していたことを「だましてはいない、言わなかっただけだ」と話すなどの態度が、自分と人間との融合により地球全体の危機になり、「強制的に発達させなければならなくなったことを謝る」とのちに話しています。
 『ドラゴンボール』で、孫悟空は様々な敵との戦いを「ワクワクする」と言い、ときに仲間からも「不謹慎」と言われることがありますが、セルとの戦いで命を落としたときに、「前にオラが悪い奴を引きつけていると言われたが、考えてみればそうだから生き返らなくて良い」と笑顔で話しています。
 『ガメラ3』では、人類を捕食するギャオスに立ち向かったガメラの戦いに両親が巻き込まれて命を落とした綾奈が、「ギャオスもガメラに家族を殺された」と主張して、復讐のためにギャオスの変種のイリスを誘導してガメラと戦いましたが、その過程で多くの人命が失われ、結局は自分の肩入れするギャオスやイリスが人間を攻撃していたという当たり前のことに気付き、謝罪しました。
 『ウルトラマンメビウス』で、純粋に描かれるウルトラマンメビウスの擬態したヒビノミライは、正体を隠していたことをのちに政府に批判されるものの、これを「言わなかっただけで隠してはいない」と擁護する神谷和宏さんの書籍もあります。『シン・ウルトラマン』に近いでしょう。しかしミライもボガールモンス戦で、変身するために無断で移動したことを「ごめんなさい」と陰で謝罪はしています。また、平成ウルトラシリーズに多い、主人公に反発する別の青いウルトラマンのヒカリは、ハンターナイトツルギとして様々な人命を脅かす行動をしたものの、態度を改めたあとは、「俺の罪は計り知れないし、俺のせいで青いウルトラマンの信頼が失われるかもしれない」と話しています。
 『ウルトラマンティガ』では、隊長の別居している息子のトモキが、ウルトラマンティガを助けるためとはいえ、街をハッキングして照明を操作して、のちに隊長に謝罪しています。
 それぞれ、「子供のような」、「純粋だがどこか周りとずれた」人物が反省する過程があるようです。
 『今日から死神やってみた!』では、主人公の弟の優樹の謝罪がそれに当たるでしょうし、『オタク王子とベストセラー作家令嬢の災難』の主人公の弟のジルヴェスターにも似たような行動があります。拡大すれば、『NARUTO』終盤のサスケもそうでしょう。
 この辺りに、物語の人物の「成長」や「発展」があるのかもしれません。

「悪の支配」に抵抗したあとの「善の支配」との関係

 また、『今日から死神やってみた!』では、「人間は悪魔の踏み台になるために生まれてきたわけではない」という主張がありますが、この論理で、「悪の支配」に立ち向かう物語はしばしばあっても、「善の支配」に物申すかは分岐するところです。
 たとえば、『シン・ウルトラマン』では、人類を「上位概念」として、支配しようとする「悪魔」のような容姿の外星人メフィラスが、ウルトラマンの同族のゾーフィの出現に逃げ出しましたが、そのゾーフイは「人類を監視する」だけでなく、生物兵器として利用される前に滅ぼすと主張しました。
 しかしその原因は、デザインワークスで示唆されていますが、「人類はウルトラマンの故郷の光の星が作り出した生物兵器」である初期設定との関係がみられます。言わばメフィラスが「人類の主導権を奪おうとする悪の支配者」ならば、ゾーフィこそ「真の支配者」かもしれないのです。けれども、ろくに説明もしない、人類をほとんど助けて来なかった「支配者」にいきなり滅ぼされそうになっても、納得は出来ないでしょう。『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジのように、「いきなり言われてもわけがわからない」という話になります。
 他にも、「悪の支配」から人間を救おうとする「善の支配者」にも問題があるという物語はあります。
 『ドラゴンボール』終盤では、ラスボスの魔人ブウを利用して全宇宙を支配しようとするバビディに、元「地球の神」のピッコロは激しく憤りますが、同時にバビディと対立する最高神の東の界王神(シン)があえなく殺されたと思われたときに、ピッコロは「正しい全世界の王が殺された」と動揺しました。しかしその東の界王神も善意はあるもののミスが多く、「本当に全世界の王にふさわしいのか」と疑わせるところがあります。続編の『ドラゴンボール超』では、東の界王神の担当する劇中世界が第7宇宙であり、レベルが低いと説明されています。やはり、「善の支配者」の問題も指摘されています。
 『幼年期の終わり』では、「悪魔」のようだけれども善意で地球人類を管理する宇宙人のオーバーロードが、それよりさらに上位のオーバーマインドに従っていたと判明しましたが、人間を資源とみなすところがあり、オーバーロードがオーバーマインドに逆らえない事情が示されています。「悪魔」に逆らおうとしていた人類が、果たしてそれより上位の存在には逆らうべきだったか、という疑問を残します。
 『二重螺旋の悪魔』では、「悪魔」との戦いの中で、一見善意で人類に未知の能力を提供しているような存在が、実は悪魔と人間をまとめて利用しようとしていたと判明しました。「悪の支配」に立ち向かう上で「善」に見える支配者にどう立ち向かうかで重要です。

 『今日から死神やってみた!』でも、悪魔の人間への支配に立ち向かうとしても、その過程で「正しく魂を導く」とされる死神の管理に問題があるとすればそれに人間は物申せるのか、という疑問がいずれ生まれるかもしれません。

政府の問題に触れる

 ここで挙げた作品のうち、『ガメラ3』では日本政府の中に、何らかの怪獣にかかわる「巫女」がいる不穏な描写もあります。
 また、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』では、主人公の父親が、戦争やゴジラ災害を知る先人として「防衛軍」の後進を指導していたつもりだったのが、新しいゴジラに太刀打ち出来ず、かつてのゴジラにも防衛軍は役に立たず、別の科学者が倒していたと知ってしまいました。
 『ウルトラマンメビウス』や『シン・ウルトラマン』でも、宇宙人ではなく地球の日本の政府の問題が指摘されます。
 そして、『今日から死神やってみた!』では事実関係の情報からも行動についての意見からも悪く扱われていない警察が、日部星花さんの『袋小路くんは今日もクローズドサークルにいる』では「不可解なミスをした」と言われています。『オタク王子』でも、主人公の属する国家の政府の限界が示されます。
 敵が世界や人類を支配しようとする中で、自分達の側の支配者にもやがて物申す姿勢が必要になることを、様々な物語で示唆しているとも言えます。

 『シン・ウルトラマン』を意識した展開の『シン・仮面ライダー』で一応主人公達の味方だった政府が、やがて続編では疑問を呈されるようなので、これらの考察が役に立つかもしれません。
 特に、『シン・仮面ライダー』では、『シン・ウルトラマン』で元々政府に属する公務員ばかりの主要人物と異なり、政府に外部から協力する本郷とルリ子に、「協力を断ればどうなるかは想像に任せる」と「政府の男」が圧力をかけています。この強引さをコミカルにしたのが、『今日から死神やってみた!』かもしれません。

「替えのきかない有能」、「上位概念に出来ないこと」

 また、伊織の上役の死神のアルジェントは高い能力を持つものの、伊織の能力を引き上げることを上手く出来ないらしく、それを「会長」に指摘されています。
 この「単独では優秀だが部下や後輩の向上をさせられない」のを、私は『左ききのエレン』(少年ジャンププラス)から「替えのきかない有能」とみなしています。

https://note.com/meta13c/n/n8158a48cb206


2023年12月31日閲覧

 そうして自分の能力が高いものの、引き上げる努力が足りないのは、『シン・ウルトラマン』のザラブが自分の身体機能に由来する機械操作を「人間に教示出来ない」と言ったり、メフィラスが人類に強くなるベーターシステムを与えながらも、それが既製品でしかなく原理は教えなかったりする「替えのきかない有能」であり、ウルトラマンが数式としてベーターシステムの原理を教えたことが「替えのきく有能」だと言えます。それが「上位概念に出来ないこと」かもしれません。

パターナリズムと「自己責任」

 『今日から死神やってみた!』2作目では、幽霊の少年のダイキの未練を断ち切る任務に死神見習いとして伊織が励もうとして、ダイキが未練の詳細を明かさないことや勉強との両立が難しくなり、苛立ちます。
 それを逆に心配するダイキに伊織は、「ダイキさんは私のお母さんでしたか?そもそも誰のせいなんですか?」と反発しています。
 一般的に「余計なお世話」、「おせっかい」と言われるパターナリズム、「相手の自由を奪う強制」が、伊織よりやや年長の男性のダイキにあったかもしれませんし、それは伊織の父親にも近いかもしれませんが、そこに伊織は「誰のせいなんですか」と、「自己責任」論のように反発をしているとも言えます。
 パターナリズムの反対に「自己責任」という主張があるという向きもありますが、むしろパターナリズムと「自己責任」論が密接に繋がっている可能性もあります。


2023年12月31日閲覧


「受動的な発達」の「もやもや」

 

 伊織は勉強が上手くいかない中で、ある教師に頭を叩いてもらうだけで頭が冴え渡り効率良く勉強出来るようになったのですが、それに「もやもや」する感情もあったようです。
 その教師は、人間を怠惰にさせる悪魔でした。
 そして「与えられるだけのニセモノの力は誇れない」と戦います。
 この辺りが、「自律的な発達」を重視する『シン・ウルトラマン』の光の星の掟にも似ています。『今日から死神やってみた!』で怠惰の悪魔と戦う死神も、おそらく人間に「自律的」であってほしいのでしょう。
 

「上位概念」もしなければならない努力

 また、元々伊織は霊力を、母親の形見のリボンにより隠して、悪魔に気付かれずに済んだのですが、普段伊織を「ポンコツ」と言うアルも、強過ぎるために気配を抑えるのを「今後必要な努力」と認めました。
 また、それを指摘する年長の会長も、スマホを「薄い板」と呼び、電話は知っているらしい年齢らしいのですが、それを自ら使い戦いに協力しています。
 それぞれ、上位概念が自分に「出来ないこと」を認めて変わって行っているのでしょう。

需要の質から、「努力に比例しない結果」

 伊織の父親は「努力しても上手くいくとは限らないが、努力しなければ成功はしない」と主張しています。伊織も「怠惰は裏切らない」と認めています。父親自身が「努力」しているかは難しいところですが、物語には、少し前に私が挙げた記事において、「努力」に比例しない「結果」があることが経済学としてあります。
 たとえば、魚問屋の仲卸において、鮮魚なら見向きもされないような傷のある魚でも中身が確かならむしろ干物用に買う、ラーメン店ばかりの街でハンバーガーやチャーハンが棲み分けのように売れるなどです。

2023年12月31日閲覧

 これは、通常は供給の一直線の「努力」に応じて需要が増えると、経済学の教科書ではみなしやすいのでしょうが、需要、消費者の願望には数字で現せない「質」があるため、一直線に「努力」に比例しない「結果」もあるのでしょう。
 また、『クレヨンしんちゃん』では、しばしばしんのすけの「手抜き」、「失礼」な対応が、ひろしの取引先を喜ばせるなどで成功をもたらすことがあります。それは、一見「上位」で優れているような取引先の人間でも、ひろし達の「努力」に比例しない喜びを持つ「主観」があるためでしょう。
 たとえば、最近私が観た劇場版『花の天カス学園』では、学園に体験入学して、勉強やスポーツの成績を上げようと風間が努力するものの、しんのすけがランニング中に清掃用機械に乗る「手抜き」をしてトラブルを起こしたことがきっかけで、その学園の不正を見抜く「結果」を出しています。『もののけニンジャ珍風伝』でも、しんのすけが入らされた幼稚園で似たような展開があります。
 『今日から死神やってみた!』も、ある意味で、主人公の弟の起こしたトラブルがきっかけで、主人公のリボンの機能に気付かれたと言えますし。
 それは「努力」に比例しない「結果」でしょう。


「理解されたくないところ」から、「理解しようとする努力」に比例しない「結果」


2023年12月31日閲覧


 また、「努力」に比例しない結果として、しばしば「相手を理解しようとする」ことが裏目に出ること、「理解されたくないところ」があります。
 『今日から死神やってみた!』のアルは、自分が弱点を鍛えることや、自分より格上の「会長」に関する話題などを、伊織に「お前に関係ない」と言ったり曖昧に話したりするところがあります。伊織がアルに反抗的なため分かりにくいものの、仮に伊織が熱心にアルの話を「理解しようとする」姿勢でいれば、それはそれでアルも「理解されたくないところ」があるため煩わしく思ったでしょう。
 子供が親に「理解してほしくないところ」、逆に親も「理解してほしくないところ」があるところはみられます。『クレヨンしんちゃん』ではコミカルにそのような描写が多々あります。
 『シン・ウルトラマン』や『幼年期の終わり』の人間より上位そうな宇宙人や外星人も、自分達が仮に人間を管理する職務の中で、「実は人間を管理するように命じられていた」、「実は人間は我々が生み出した」などの事情が仮にあれば、それを知られれば恥ずかしく、「理解してほしくない」かもしれません。
 『シン・仮面ライダー』で、「他人を理解出来るように自分を変えたい」と主張する本郷が止めようとするイチローが、全人類を「嘘のつけない世界」に連れて行こうとする、言わば「全てを理解し合える」ようにしていたのは、「理解」の定義が曖昧だと言えます。
 相手のためを思い理解しようとすることがかえって傷付けてしまうのも、「努力に比例しない結果」かもしれません。
 

「努力の強さ」がもたらすマイナス

 また、戦いを描く物語では、「努力の結果が周りを傷付ける」ことがしばしばあります。
 『FAIRY TAIL』や『ウルトラマンZ』などにもコミカルにありますし、『シン・ウルトラマン』ではウルトラマンがザラブの目的を知らしめるためにわざと暴れさせた可能性や、仲間1人を助けるために蹴り飛ばして犠牲を出した可能性があります。
 『今日から死神やってみた!』2巻でも、小説では分かりにくいものの、主人公の戦いが教室を荒らしてしまい、一方で「会長」は荒らさずに敵を倒しています。
 しかし、周りに被害を出さずに戦えるかの「結果」を「努力」とみなすかは、物語によるでしょう。巻き込まれる人間の避難の不足のせいにする「自己責任」論もあるかもしれませんし、「ここで戦う方がまだ小さな被害で済む」というパターナリズムもあるかもしれません。

『ティガ』や『ガメラ』を踏まえた、「強さのもたらす災い」


https://x.com/hg1543io5/status/1638472673188773889?s=46

2023年12月31日閲覧

 また、『ティガ』では、人間の電磁波がクリッターという生物を怪獣化させる可能性が指摘されて問題視されましたが、ウルトラマンティガの「光」にも反応している可能性を私は考えたことがあります。仮にそうなら、中盤でクリッターが人間の攻撃で地球を去らなかった場合、最終回でウルトラマンティガが世界中の子供から光のエネルギーを受け取ったときにクリッターが一斉に怪獣化したおそれもあります。
 『ティガ』と同じく超古代文明がかかわる『ガメラ2』のガメラも、宇宙怪獣を倒すために地球のエネルギーを集めたことで、『ガメラ3』では環境を悪化させてギャオスの大量発生を招いたようです。
 すると、「主人公の強さや世界中からの協力が裏目に出る」展開も考えられます。元々主人公の能力や体質が災いを招くと言える『今日から死神やってみた!』にも通じるかもしれません。

「自律的な発達」のために、私利私欲は助けない

 また、『今日から死神やってみた!』では、『シン・ウルトラマン』で言うところの「自律的な発達」が「努力」として重視され、悪魔に頼らないことが目指されます。
 逆に死神の能力は、伊織の日常生活の勉強には役に立たないようです。『ウルトラマン』で、ウルトラマンが防衛隊員のハヤタと一体化したときに、「困ったことがあればこのベーターカプセルを使え」と言ったのですが、基本的にハヤタが戦い以外の困りごとにウルトラマンの能力を使ったことはありませんでした。あらゆるヒーロー作品がそうではないでしょうが。
 いずれにせよ、死神は悪魔と異なり私利私欲をかなえる能力は与えずに、「自分で発展する」ことを求めるのでしょう。

「自律的な発達」の良し悪し

 しかし、『シン・仮面ライダー』漫画版では、人間に様々な技術を与えるAIが「自らの意志で研究を進めることはない」とされ、人間の自発的な研究意欲を重視するようですが、それが様々な歪みを引き起こします。
 特に、AIにより生み出された人間のひろみ、のちのハチオーグは、「満たされない心」を意図的に与えられて発展しているのですが、保育園で「支配」、「独裁」を目指すと一般の幼児の前でも自慢しています。
 映画でハチオーグは全人類を操ることで世界を管理しようとしていました。
 それを「いけないこと」と言われても「そんなの大人の洗脳よ」と反論したものの、やはりAIにより生み出されたルリ子が珍しいバイクの玩具を作ったことを一般の幼児に褒められたのを見て、どこか苛立っています。
 私は、圧倒的に強い人物でも、相手の自由に任せることで得られる利益があるのではないか、支配するだけではする側も得られないものがあると、以前『ウルトラマングレート』や『ドラゴンボール』を踏まえて考えていました。
 『シン・ウルトラマン』では、最終的に人間の「自己犠牲」の精神が、ウルトラマン単独では出来ないことをもたらしたと取れる結末ですし、『幼年期の終わり』では、一見オーバーロードに劣る人間が、オーバーロードより上位のオーバーマインドに認められていたので「うらやましがられていた」と判明しています。
 つまり、「自律的な発達」を目指すために育てられたひろみは、そのために「全人類の支配」や「独裁」という優秀なための答えを出したものの、かえって周りの「自律性」を奪ってしまい、それで「周りが自発的に褒めてくれる」などの利益を失っていることを、ルリ子から感じ取ったのかもしれません。
 これも「努力に比例しない結果」かもしれません。

日部星花作品について

 日部さんの新作『光る君と謎解きを 源氏物語転生譚』では、現代日本の女子大生が『源氏物語』の若紫に転生して、登場人物の死に、源氏の君と共に謎解きをするらしいのですが、「転生」と『源氏物語』の組み合わせが気になります。
 『源氏物語』の世界で信じられていた、そして「実際に」起きた物の怪などの現象が、この『光る君と謎解きを』でも起きるのかも気になります。
 現代の脳外科医の南方仁が、迷信があった幕末の時代にタイムスリップする『JIN-仁-』原作では、タイムスリップ以外に基本的にそのような呪術的、宗教的な現象は起きないはずですが、西洋医の山田が、製薬を進めたときに、ちょうど亡くなった母親の声が聞こえたというのを「医師が言ってはいけませんね」と言いつつ、仁も「私はそのようなことが起きると認めます」と肯定していました。
 その意味で、『源氏物語転生譚』では、物の怪などを「迷信」と判断するか、本当に「転生」が起きているので信じるかが重要になりそうです。
 資料によると、作者の紫式部は陰陽道などの当時の権力者などの信仰に、聡明だったのでさほど信じていなかったという説もあり、どこまで紫式部が宗教を信じていたかもかかわりそうです。
 物の怪は仏教の加持で対処するのか、陰陽道で避けるのかもかかわりそうです。
 また、源氏の君と藤壺の悲恋について、「どのような前世の宿命でこうなったのか」という趣旨の短歌もありますが、『源氏物語転生譚』では、本当に源氏の君と藤壺も転生者かもしれません。
 日部星花さんの『悪役令嬢に探偵は向いてない』でも、主人公の女性の相手の男性が、ある内面を隠していたことが最後に判明しましたし。
 また、『あやかし女王』も踏まえますと、「主人公が帰れるのか」、「帰りたくないのか」も重要かもしれません。

まとめ

 今回は『今日から死神やってみた!』から、「上位概念に出来ないこと」、「努力に結果が比例するか」などを取り扱いました。これまでの振り返りにもなったようです。




参考にした物語



特撮テレビドラマ

樋口祐三ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966-1967,『ウルトラマン』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),長谷川圭一(脚本),1996 -1997,『ウルトラマンティガ』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),川上英幸ほか(脚本),1997 -1998(放映期間),『ウルトラマンダイナ』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2006 -2007 (放映期間),『ウルトラマンメビウス』,TBS系列(放映局)
菊池雄一ほか(監督),荒木憲一ほか(脚本),2007 -2008(放映期間),『大怪獣バトル』,BS11系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),吹原幸太ほか(脚本),2020,『ウルトラマンZ』,テレビ東京系列(放映局)

特撮オリジナルビデオ

會川昇ほか(原案),鈴木清(プロデューサー),テリー・ラーセン(脚本),アンドリュー・プラウズ(監督),1990,『ウルトラマンG(グレート)』,バンダイビジュアル

小説

クラーク/著,池田真紀子/訳,2007,『幼年期の終わり』,光文社古典新訳文庫
日下部聖,『オタク王子と作家令嬢の災難』魔法のiらんど(掲載サイト)
https://maho.jp/works/15591074771453312177
2023年12月31日閲覧
日部星花,2020,『今日から死神やってみた!イケメンの言いなりにはなりません!』,講談社青い鳥文庫
日部星花,2020,『今日から死神やってみた!あなたの未練断ち切ります!』,講談社青い鳥文庫
日部星花,2021,『袋小路くんは今日もクローズドサークルにいる』,宝島社
日部星花,2023-(未完),『薄幸祓い屋少女の相棒は最凶あやかし女王〜なりゆきで御曹司と偽装婚約も始めました〜』,プリ小説
https://novel.prcm.jp/novel/Fn6z0vSK6C3ITaDOOZoY
2023年12月31日閲覧
日部星花,2022-(未完),『悪役令嬢に探偵は向いてない』,プリ小説

https://novel.prcm.jp/novel/hUGR86LAer4DnOGOCjpM

2023年12月31日閲覧

瀬戸内寂聴(訳),2007,『源氏物語』,講談社
梅原克文,2001,『サイファイ・ムーン』,集英社
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ

特撮映画

樋口真嗣(監督),庵野秀明(脚本),2022,『シン・ウルトラマン』,東宝
石ノ森章太郎(原作),庵野秀明(監督・脚本),2023,『シン・仮面ライダー』,東映
金子修介(監督),長谷川圭一ほか(脚本),2001,『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』,東宝(配給)
金子修介(監督),伊藤和典(脚本),1995,『ガメラ 大怪獣空中決戦』,東宝(配給)
金子修介(監督),伊藤和典ほか(脚本),1996,『ガメラ2 レギオン襲来』,東宝(配給)
金子修介(監督),伊藤和典ほか(脚本),1999,『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』,東宝(配給)

漫画

山田胡瓜,藤村緋二,石ノ森章太郎,庵野秀明,八手三郎,2023-,『真の安らぎはこの世になく-シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE』,集英社
岸本斉史,1999-2015,(発行期間),『NARUTO』,集英社(出版社)
鳥山明,1985-1995(発行期間),『ドラゴンボール』,集英社(出版社)
鳥山明(原作),とよたろう(作画),2016-(発行期間,未完),『ドラゴンボール超』,集英社(出版社)
かっぴー(原作),nifuni(漫画),2017-(未完),『左ききのエレン』,集英社
臼井儀人,1992-2010(発行期間),『クレヨンしんちゃん』,双葉社(出版社)
臼井儀人&UYスタジオ,2012-(発行期間,未完),『新クレヨンしんちゃん』,双葉社(出版社)
真島ヒロ,2006-2017,『FAIRY TAIL』,講談社
日部星花,一宮シア,『オタク王子とベストセラー作家令嬢の災難』,(BOOKWALKERなどに連載)



テレビアニメ

伊達勇登(監督),大和屋暁ほか(脚本),岸本斉史(原作),2002-2007(放映期間),『NARUTO 』,テレビ東京系列(放映局)
伊達勇登ほか(監督),吉田伸ほか(脚本),岸本斉史(原作),2007-2017(放映期間),『NARUTO 疾風伝』,テレビ東京系列(放映局)
臼井儀人(原作),ムトウユージ(監督),川辺美奈子ほか(脚本),1992-(未完),『クレヨンしんちゃん』,テレビ朝日
庵野秀明(監督),薩川昭夫ほか(脚本),GAINAX(原作),1995-1996(放映期間),『新世紀エヴァンゲリオン』,テレビ東京系列(放映局)

アニメ映画

髙橋渉(監督),うえのきみこ(脚本),2021,『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』,東宝
橋本昌和(監督),うえのきみこ(脚本),2022,『クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』,東宝

web

『光る君と謎解きを 源氏物語転生譚』アマゾン予約ページ
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4299048865/hnzk-22
2023年12月31日閲覧

参考文献


伊井春樹(監修),加納重文(編集),2006,『講座源氏物語研究 第二巻 源氏物語とその時代』,おうふう
神谷和宏,2015,『ウルトラマン「正義の哲学」』,朝日文庫
神谷和宏,2012,『ウルトラマンは現代日本を救えるか』,朝日新聞出版
庵野秀明(監修),2022,『シン・ウルトラマン デザインワークス』,カラー

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