これまでの記事で書き落としたことのまとめ,2023年9月30日
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注意
これらの物語の重要な展開を明かします。特に、『二重螺旋の悪魔』、『ネフィリム』にご注意ください。PG12指定の映画もあります。
特撮映画
『シン・仮面ライダー』
『仮面ライダー THE FIRST』
『仮面ライダー THE NEXT』
漫画
『真の安らぎはこの世になく シン・仮面ライダー』
『歳と魔法はキス次第』
『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』
オリジナルビデオアニメ
『ソリトンの悪魔』
小説
『二重螺旋の悪魔』
『ソリトンの悪魔』
『カムナビ』(梅原克文)
『サイファイ・ムーン』
『テュポーンの楽園』
『心臓狩り』
『ΑΩ』(小林泰三)
『ネフィリム』(小林泰三)
『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』(web小説,書籍)
はじめに
今回は、最近記事をあまり書かなかった中で蓄積した感想や考察をまとめます。
『ギフト無限ガチャ』と『AΩ』
『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』(以下『ギフト無限ガチャ』)漫画版で、魂の集合体である「ソウルドラゴン」によって、殺された「ヒューマン」の少女の魂が、その姿のモンスターになりました。
この人間のコピーが被害者でもあり周りに害をなす加害者にもなるというのは、『AΩ』を連想します。このホラー小説では、生物の遺伝子情報や記憶から劣化したコピーを作り出し、その記憶などを宿して異形に苦しむものの悪意があるとは限らない人間を生み出す「影」がいます。
また、『ギフト無限ガチャ』では加害者のシオンのコピーも作られたこと、最初はシオンが被害者だと思われていたことも気になります。
『AΩ』はこのコピーとキリスト教信者の一部が宗教的に暴走して、世界中を混乱させて行きます。
2023年9月30日閲覧
『ギフト無限ガチャ』は私が見る限り、絶対神と言われる主人公のライトによる苛烈な罰や、その部下であるエリーによる独裁が、イスラーム社会を連想させるのですが、『AΩ』のキリスト教原理主義の暴走と、何かの関連を見出せるかもしれません。
『ギフト無限ガチャ』の「天使」と「ドラゴン」と『AΩ』
幾つか考えますと、『AΩ』では特殊な素粒子である「影」に対応しようとするプラズマ生命体が死なせた人間と融合して「天使」とも呼ばれる「超人」になります。
このプラズマ生命体にとって、宇宙の大半がプラズマであることもあり、固体、液体、気体で構成された地球生命は異形の存在らしく、それへの気遣いがあまりなく、残酷な判断をしています。また、その「天使」が、「影」による恐竜などのコピーを倒したのを、「天使が竜を倒した」と宗教的に誤解されています。
イスラームの天使のイブリースは、自分は光あるいは炎で出来ているからと、土で出来た人間を敬えという神の命令に逆らって、堕天使になったそうですが、光や炎をプラズマに置き換えて、この『AΩ』のプラズマ生命体にも似ています。
『ギフト無限ガチャ』では、ヒューマンを守りたいライトが、ヒューマンを差別するエルフの召喚した「天使」や、ヒューマンの魂などを特に奪って楽しむ集合体のソウルドラゴンを、「神葬」という名を持つ槍によって倒して行くので、天使と竜が対立する聖書や『AΩ』との対比も出来るかもしれません。
『ソリトンの悪魔』と『AΩ』
ちなみに、私は小林泰三作品と梅原克文作品に注目していますが、梅原さんの『ソリトンの悪魔』と『AΩ』の比較も出来る余地があります。
それぞれ理知的な異形の生命体がいます。コンピューターやロボットのように無機質な思考で、人間が危機に陥っても助けられないところがあり、人間を変化させることで戦わせます。
しかし、『ソリトンの悪魔』の生命体は、「必要なものを提供する」と言われても、「敵」と戦うための「プログラムがない」と融通を利かせられない状態でした。『AΩ』の生命体は人間の1人としか実質的に会話出来ず、既に世界全体が混乱しているので人類が見返りを提供することも出来ず、既にその生命体による死者も出ている中で協力を頼む状況で、「君達は我々を助けてくれるのか?」、「我々に人権を認めないなら、我々も君達の人権を認めない」と交換条件付きでの冷たさに留まっています。
この辺りが微妙に異なります。
小林泰三作品『ネフィリム』と梅原克文作品の比較
小林泰三さんの小説として、『ネフィリム』も読んだのですが、これは梅原さんの『二重螺旋の悪魔』と『ソリトンの悪魔』の組み合わせとも取れる要素があります。
『二重螺旋の悪魔』の、人間を残酷に攻撃する怪物に恨みで立ち向かう主人公、その怪物と人間を融合させようとする第三者、霊長類で残酷な実験をして怪物に立ち向かうための能力を作り出すなどです。
しかし、『二重螺旋の悪魔』の怪物は、あくまで人間と別の生物で、生き延びて繁栄しようとするために戦っているに過ぎないという視点もあり、絶対悪とも言い切れませんでしたが、『ネフィリム』の怪物は人間からあえて良心を奪い取って、その知識を活用して残酷に振る舞う存在でした。そのため、残酷さは『ネフィリム』の方が上かもしれません。
『ソリトンの悪魔』では、元々人間によって暴走した未知の生命体が「悪魔」として攻撃を当たりかまわずする状態でした。それに対抗するため「変身」した人間は、やがて「悪魔」の影響で良心や、他の被害者への配慮がなくなったままその知識を用いた暴走をして、あえて「環境破壊」をしようとさえしていました。
「人間にとって悪だが、その生まれとしては当たり前のことをしている」『二重螺旋の悪魔』の怪物と、「良心を失ったが知識は残り、暴力を平気で行う人間」が登場すると言える『ネフィリム』や『ソリトンの悪魔』は、繋がりを見出せるかもしれません。
また、『ネフィリム』の怪物は自分達が増え過ぎないように加減はするものの、人間に依存した生態を持つものの、『ソリトンの悪魔』は元々人間と関係のない生態を持ち、人間が侵入したことでかえって環境破壊をすることになっています。
また、『二重螺旋の悪魔』の類人猿を用いた実験は、最後まで刑罰以外に特に悪用される場面は見当たらなかったのですが、『ネフィリム』の該当する実験はそれが無関係な人間を巻き込む可能性を示唆して終わります。
『ソリトンの悪魔』も、変身した人間が意識を取り戻したものの、その経験がやがて軍事的に悪用される可能性も考えられます。
『ソリトンの悪魔』アニメ版を観て
ちなみに、『ソリトンの悪魔』アニメ版を観たのですが、原作を読まずに展開に付いて行けるか、と迷うほどの凝縮された展開でした。
梅原さんの小説でこれだけが映像化しているのは、人間の残酷な死を描かずに済むところもあるのではないか、とも考えました。
『二重螺旋の悪魔』は怪物と人間が互いの首を斧で刎ねようとする戦争があり、『カムナビ』は人間の焼死から始まり、『サイファイ・ムーン』は人間の転落死から始まり、『心臓狩り』は人間の題名通りの暴走から始まり、『テュポーンの楽園』は人間の手首や首の切断などの描写があります。
しかし『ソリトンの悪魔』の主な展開は海難事故で、怪物も水で構成されているだけなので残酷さは薄く、アニメ版では人間の流血は僅かな傷ぐらい、遺体の描写も一瞬だけでした。
この辺りは、小説の描写を映像化する上で参考になるかもしれません。
レベルの下向きの偽装
2023年9月30日閲覧
『ギフト無限ガチャ』では、ヒューマンが「レベル」という数値の低いために差別される中、例外的に高いヒューマンが社会を変革しようとしますが、その「レベル」をごまかす手段はないのか、と私は考察したことがありました。
よく探してみますと、web原作の、現在漫画化しているドワーフ王国編で、レベルを下げる偽装はありました。しかし、上げる偽装があれば、かなり話がこじれてしまいます。
『歳と魔法はキス次第』ではそのような魔法使いのごまかしが「はったり」として効果的でしたが。
この辺りが、『ギフト無限ガチャ』で気になるところです。
「人生の全てに無駄なことなんてない」は本当か
『シン・仮面ライダー』で、人間不信の仮面ライダー第0号=緑川イチローが、人間の「魂」に当たるエネルギーのプラーナを全て「嘘のつけない」世界に連れて行こうとしていました。
仮面ライダー第1号=本郷猛はそれを説得しようとしており、自分がイチローと同じく通り魔に家族を殺された経験から「少しは分かる」と言っています。
しかし、殺人を止めるためにやむなく怪人であるオーグメントを殺しても黙とうする、「優し過ぎる」と評価される本郷は、「僕には人がよく分からないから分かるように自分を変えたい」とイチローに話しています。それをイチローは「全ては無駄なことだぞ」と返して、本郷は「人生の全てに無駄なことなんてない」と続けています。
しかし、これは論点のずれた中で、『シン・仮面ライダー』の本郷だからこそ言える台詞だとも考えられます。
そもそもイチローは、「何故世界や他人による被害者の俺やお前が変わらなければならないのだ」と言いたかった、つまり「被害者が変わるべきか」という意見の問題を、「変わるのは無駄か、成功するか」という推測の問題にすり替えているとも言えます。それへの順当な反論が出来ず、言葉の勢いで「人生の全てに無駄はない」と言ってしまったのかもしれません。
『シン・仮面ライダー』はかなり作り込まれており、最初の敵のクモオーグに本郷が立ち向かう中で必要な知識などを身に付け、次のコウモリオーグで覚悟を固め、サソリオーグについて犠牲を多数出したものの、その過程で得た毒がハチオーグ戦で役立ち、第2バッタオーグ=一文字との戦いの過程でルリ子が命を落としたものの、一文字が味方になり、ルリ子のプラーナを本郷のマスクに宿す技術が、最終的に新たな仮面ライダーを生み出しました。このように、災いも次の災いへの備えになることがある「無駄のない」展開です。
しかし、同じく仮面ライダーシリーズのリメイクである『仮面ライダー THE FIRST』では、主人公達の行動とほとんど接点のない病人2人の恋愛の描写が長く、いつの間にかその病人が敵になっていた展開になり、「恋愛描写は無駄だったのではないか?」と思わせるところもあります。この2人の主人公達との接点は、主人公が助けようとした少女と同じ病院にいた、ヒロインが救急車を呼んだ、最後に敵になった「3点」ぐらいでしたから。
『仮面ライダー THE NEXT』でも、残酷さはともかく、3人目の「仮面ライダー」である志郎がIT社長だったこと、ワインなどを飲もうとすること、主人公の本郷が高校教師として上手くいっていないこと、倒された改造人間の怨念が残って現実世界に飛び出したかのような終盤など、展開に関係あるのか分からないところもみられました。
つまり、よほど作り込まれた物語でなければ、「無駄なことなんてない」とは言えないかもしれません。というより『シン・仮面ライダー』の本郷が優し過ぎて、勢いでそう言ってしまったのかもしれません。
『シン・仮面ライダー』の映画と漫画版の繋がり
また、『シン・仮面ライダー』についてまだ分からないのは、悪役のイチロー、サソリオーグ、クモオーグの過去を示す漫画版で、彼らがまだ善良に見えることです。
確かにアウトローではあるものの、自分の組織の明らかに悪い兵器開発などを止める歯止めのきくところがあり、「うちらよりやばい奴等なんているのか」と自嘲するところもありつつ、ナチス主義者と戦うため、ある程度の良心は感じられるイチロー達が、何故無関係な人間を巻き込む、いわゆる「カタギに手を出す」状態になってしまったかまだよく分かりません。
特に漫画版のイチローは、無関係な人間が無関係な事件に巻き込まれても助けようとしており、映画で「切った、張った、は面倒だ」と部下に任せるのとはかなり異なります。
この辺りの変化は、まだ繋がりが見えません。
まとめ
あまり繋がりがなかったかもしれませんが、書きたいことを幾つか残せました。
参考にした物語
特撮映画
石ノ森章太郎(原作),庵野秀明(監督・脚本),2023,『シン・仮面ライダー』,東映
長石多可男(監督),井上敏樹(脚本),2005,『仮面ライダー THE FIRST』,東映
田﨑竜太(監督),井上敏樹(脚本),2007,『仮面ライダー THE NEXT』,東映
漫画
山田胡瓜,藤村緋二,石ノ森章太郎,庵野秀明,八手三郎,2023-,『真の安らぎはこの世になく-シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE』,集英社
船野真帆,2021-2022,『歳と魔法はキス次第』,講談社
作画/大前貴史,原作/明鏡シスイ,キャラクター原案/tef,2021-(未完),『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,講談社
オリジナルビデオアニメ
梅原克文(原作),竹内啓雄(監督),1998,『ソリトンの悪魔』,ビームエンターテインメント
小説
梅原克文,2011,『心臓狩り』,角川ホラー文庫
梅原克文,2018,『テュポーンの楽園』,KADOKAWA
梅原克文,2010,『ソリトンの悪魔』,双葉文庫
梅原克文,1999,『カムナビ』,角川書店
梅原克文,2001,『サイファイ・ムーン』,集英社
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ
小林泰三,2004,『AΩ』,角川ホラー文庫
小林泰三,2004,『ネフィリム 超吸血幻想譚』,角川書店
明鏡シスイ,『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,小説家になろう(掲載サイト)
https://ncode.syosetu.com/n9584gd/
2023年9月30日閲覧
明鏡シスイ,tef,2021-(未完),『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,ホビージャパン
参考文献
大貫隆,2014,『グノーシスの神話』,講談社学術文庫
大貫隆,2008,『グノーシス「妬み」の政治学』,岩波書店
藤巻一保,2009,『世界の天使と悪魔 図解雑学 絵と文章でわかりやすい!』,ナツメ社
林道義,1980,2007,『ユング 人と思想59』,清水書院
真野隆也,1995,『天使』,新紀元社