これまでの記事で書き落としたことのまとめ,2023年5月17日
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注意
これらの物語の重要な展開、特に結末を明かします。ご注意ください。
特撮テレビドラマ
『ウルトラマン』
特撮映画
『シン・ウルトラマン』
漫画
『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』
『真の安らぎはこの世になく シン・仮面ライダー』
『キミのお金はどこに消えるのか』
『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』
『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』
小説
『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』(web原作,書籍)
『玩具修理者』
『酔歩する男』
『ショグゴス』
『日本沈没』
『二重螺旋の悪魔』
『われはロボット』
『服を着たゾウ』(星新一)
はじめに
今回は、これまでの記事で書けなかったことをまとめますが、いつの間にか繋がったようです。
『ギフト無限ガチャ』の奴隷とゴーレムと分身
2023年5月17日閲覧
『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』(以下『ギフト無限ガチャ』)では、ファンタジー世界で人間に近い「ヒューマン」が他のエルフや獣人などに差別される中で、そのヒューマンの貧農の息子だったライトが、「平等な世界を作ろう」と各種族の集まるパーティーに呼ばれながら、ダンジョン奥地で裏切られ、生き延びる中で役に立たないと思われたギフト「無限ガチャ」という能力をダンジョン深部で使うことで、他種よりも強いヒューマンのカードを召喚して家臣とし、復讐や世界の変革を図ります。
しかし、ライト達は効率良く政治や経済の活動を行うに当たり、種族による差別は認めないとして、奴隷制度に反対しながらも、「ヒューマンは自分の王すら自分達で選べない」という不満、つまり身分の概念は認めるものの、ライトと家臣でその王女への扱いに差異があり、また、経済格差で苦しんでいたとも言えるライトの貧農としての過去に、家臣達は経済的な変革の意思がみられません。つまり、種族の平等は求めつつ、身分と財産の差は認めていると言えます。
さらに、カードによるゴーレムが不満も言わずに働くため、特に尊厳や権利の意識もなく使っています。そして、ライトの能力を複製したカードである分身にひたすらカードを出させる場面や、妹や王女の本来の仕事を分身にさせるところもあります。分身はそれに不満を抱くところがみられません。
つまるところ、種族の平等のために奴隷を認めない主張をしつつも、ゴーレムや分身を「カードのうち人ではないから」と、奴隷の代わりにしているとも取れます。
SFのロボットのような「ゴーレムが雇用を奪う」という危険性も指摘され、奴隷の代わりを生み出したところがみられます。
『ギフト無限ガチャ』と『ショグゴス』
SFで言えば、小林泰三さんの『ショグゴス』では、ある未知の海百合状生物が他の不定形生物を奴隷として、あるいは寄生対象にしているのに憤る人間の大統領が、「解放」のためにロボットで戦争を仕掛けるのですが、不定形生物は海百合状生物に奉仕するように作られているので、ひたすら海百合状生物を守るために命を落とし、ロボットとの戦いになります。そして、科学者がさりげなく指摘するように「人間がロボットにしていることが、敵のしていることと同じなのではないか」という示唆があり、大統領は下心のみられない純粋な善意の中に、その疑問に気付かない視野の狭さがあります。『玩具修理者』では、生物と無生物の定義が難しいとありますが、ロボットが徐々に生物に近付きながらも物体扱いされることで、大統領の主張も怪しくなってきます。
ライトも、純粋な善意が、実は完璧ではなく、家臣が王女を軽視するように身分の問題もあれば、家臣が悲しむけれども解決しようとしない経済問題も軽視し、ゴーレムや分身に奴隷の立場を押し付ける危険もあります。
純粋な善意はあっても完璧な善意などないのかもしれないことが、『ショグゴス』、そして『ギフト無限ガチャ』にあるかもしれません。ちなみに『ショグゴス』のモチーフであるクトゥルフ神話が、いずれ『ギフト無限ガチャ』に関わる可能性を私は予測しています。
ファンタジーとSFを繋ぐ普遍的なものを、クトゥルフ神話として見出せるかもしれません。
「強いところ」と残酷さ
また、『ギフト無限ガチャ』では、弱いヒューマンが何故かギフトという能力を持っており、一般的に強い他種にはないことが謎だとされますが、他にもヒューマンの「強いところ」が示唆されています。それは、人口です。
特に差別的なエルフ種のカイトなどが「ヒューマンは数が多い」と忌々し気に主張して、ヒューマンから生まれる「ますたー」が文明を発展させて世界を滅ぼす示唆もされていましたが、それは人口爆発による環境破壊の可能性も考えられます。他種の寿命が長いとすれば、逆に出産の速度が遅いのかもしれず、人口増加がヒューマンの強みかもしれません。
しかし、仮に人口増加が急激ならば、ヒューマンは生物学で言うr戦略の生物で、多産多死、子供を多く産む代わりに粗末に育てていた可能性があります。劇中のヒューマンのほとんどが優しく映る上に、ファンタジーで人口や出産の問題は重々しいので、違うかもしれませんが、気にはなります。
「魔王」の可能性
また、web原作で、ライトの強さを知った復讐対象の獣人のガルーは、「魔王」と内心で表現しています。そしてエルフ種が「魔王」の存在を示唆しており、ライトが警戒されて「念のために殺す」と扱われたのも、本当に危険であった可能性もあります。ライトは「僕は何の罪を犯したというのですか」、「真実次第では世界を救う善神にも滅ぼす悪神にもなる」と、自分が危険である可能性に気付いていないわけではありませんが。
人間でないからこそ模範的になる逆説
私は、物語における模範的な人物やキャラクターが、「自分が本来普通ではない」と自覚や内省をし続けているためにそう振る舞う可能性を、最近考えています。
たとえば、星新一さんの『服を着たゾウ』では、ゾウが催眠術で人間だと思い込まされて、「人間とは何だろう」と考え続け、周りに言われた通りに振る舞い社会的に成功して遊びもしない真面目な「人間」になった展開があります。
『われはロボット』原作では、「人間を守る、人間に従う、自分を守る」という優先順位のロボット三原則が有名ですが、それを忠実に守るロボットは、善良な人間と区別出来ないのではないか、という疑問が指摘されました。
『日本沈没』原作では、日本の国土が題名通りに滅ぶ中で、日本人の一部が国土を愛して残り命を落とすところもあるのですが、その中に終盤で「自分には日本人は分かりにくかった。自分は、本当は純粋の日本人ではなかった」と言い残した人間もいました。
これらは、ゾウやロボットが人間らしく振る舞うことと模範的に振る舞うことの区別の出来ない状態になったり、日本人でない人間が「日本人らしく」なるためにある種の模範を貫いたりすると言えます。
「自分がAではない」という自覚が、「Aとは何か」と考えて、周りがつい模範的な理想像ばかり伝えるのでそう振る舞ってしまうのかもしれません。
『シン・ウルトラマン』では、外星人(宇宙人)のウルトラマンが人間の神永と融合して「理解しようと試みた」ために難解な『野生の思考』や『神曲』を読んで知識を深めるものの、コーヒーを同僚に自発的に淹れるなどの、言わば「本に書いていない」模範を理解出来ておらず、「気の利かない」と言われ、「なるほど」と言う場面がありました。そして最後には、「何も分からないのが人間だと思うようになったから、人間になりたい」と願っています。
『ウルトラマン』の模範的に映るハヤタが、『怪獣使いと少年』では「人間味が感じられない」というような感想もありましたが、『シン・ウルトラマン』では、模範的過ぎてかえって人間らしさに欠ける、本に書いてあるような人間らしさしか持てないというのが、ロボットやゾウにも通じるところかもしれません。
また、『シン・ウルトラマン』のメフィラスが人間の「上位概念」になろうとして、人間の「下劣さ」などを理解出来なかったように、「上位概念には理解出来ない」ものなのかもしれません。
恋人と親への対応の違い
また、『シン・ウルトラマン』の神永に「気の利かない」と言った浅見が「それぐらいした方がモテるわよ」と言ったのも、職場内でそのような話をすること自体、人によってははばかられることであり、「本に書いてないような工夫を自発的にする」人間らしさ、ある種の清濁併せ持つところを求めているのかもしれません。
いわゆる「ちょいワル」な行動を、浅見は職場でも求める「キャラ」なのかもしれず、だからこそスーツで電動ノコギリを使い、敵から神永を救出して、結果的に誰も連れて来なかったので敵の攻撃に巻き込まずに済んだ、「野趣の勝利」とも言えるかもしれません。
また、「ちょいワル」で考えるのは、小林泰三さんの『酔歩する男』での、登場人物のある内面です。
『酔歩する男』では、死んだ恋人を生き返らせるために時間を逆行させようとする実験をした男2人の苦しみが重要ですが、その過程で恋人に会う前、両親が生きている頃に戻った男が、「人がこんな簡単に生き返って良いのでしょうか」と焦っています。何故そのように本末転倒な感情を抱き、その自覚の描写もないのか考えますと、おそらく「恋人のためなら出来ることも、親のためには出来ない」という感情があるのかもしれません。
人間は『酔歩する男』で示唆される性の問題に限らず、恋愛のためなら出来る不道徳なことを、親などの血の繋がった家族のためには出来ない、むしろそのようなところを家族に触れられたくない、一見矛盾した性質がある可能性を考えています。
『ギフト無限ガチャ』では、ライトのように、ヒューマンの弱い立場から突然強くなり、社会的に重要な活動を始めようとする中で、両親に信頼されず頭ごなしに否定されて殺した人物もいます。それは、両親を大事に思い、自分とは別に殺されたことに怒りながらも、復讐を両親に伝えずに行おうとしたライトと「ある意味同じである意味逆」です。
しかしこれも、ライトの家臣のほとんどが彼に恋愛感情を抱き、「ハーレム」のような状況になるときに、家族の描写が避けられている印象もあります。
それは、ライトの「復讐」、「ざまぁ」が、家臣の女性達と共には出来ても家族の近くではしにくい概念、『酔歩する男』にもある概念かもしれません。
「人が神を超える」、「子が親を超える」を後ろ向きに捉えた場合
2023年5月17日閲覧
『シン・仮面ライダー』の漫画版『真の安らぎはこの世になく』では、「親は自分の出来なかったことを子供に託す」という趣旨の台詞がありましたが、これは未来に変化を求めるという普遍的なテーマかもしれません。
また、多くの神話などを踏まえて、私は『シン・ウルトラマン』や『ドラゴンボール超』や『NARUTO』、『オタク王子とベストセラー作家令嬢の災難』について、「人が神を超える」、「子が親を超える」という意味合いも考えています。
さらに、自由や平等といった意味で、自分より何らかの立場や能力が上の存在に逆らう物語も多くあります。『ギフト無限ガチャ』もいずれそうなるかもしれませんし、『二重螺旋の悪魔』などもそうだと言えます。
しかし、「子が親に逆らう」、「人が神に逆らう」のと、「親が自分に出来なかったことを子供に託す」のは必ずしも一致しません。むしろ「親が自分に出来ないことを子供に押し付ける」、「将来にツケを回す」可能性もあります。
環境問題やエントロピー増大は当てはまるかもしれません。ただし、井上純一さんのような積極財政の主張では、現代日本の政府の借金、日本国債は「将来へのツケ」ではないそうです。
さらに、人間がロボットの「生みの親」だとすれば、本来自分だけで出来ること、出来るかはともかく自分達ですべきことを押し付ける怠慢さのためにロボットを働かせることも考えられます。
『シン・ウルトラマン』のウルトラマンの故郷も、生物兵器としての人間にそうしているかもしれませんし。
そして、「生みの親が出来なかったことを行う」のが肯定されるか、「押し付けられた課題を拒絶する」かは、物語によるでしょう。
そして、ライトが自ら生み出したカードの家臣に仕事を押し付けずに動くこと、『シン・ウルトラマン』のウルトラマン=神永が人間を生物兵器にさせなかったことも繋がるかもしれません。
まとめ
今回は、『ギフト無限ガチャ』の話題が多かったようです。「人が神を超える」、「出来ないことを託すか押し付けるか」といった疑問の余地もありそうです。
参考にした物語
特撮テレビドラマ
樋口祐三ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966-1967,『ウルトラマン』,TBS系列(放映局)
特撮映画
樋口真嗣(監督),庵野秀明(脚本),2022,『シン・ウルトラマン』,東宝
漫画
作画/大前貴史,原作/明鏡シスイ,キャラクター原案/tef,2021-(未完),『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,講談社
山田胡瓜,藤村緋二,石ノ森章太郎,庵野秀明,八手三郎,2023-,『真の安らぎはこの世になく-シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE』,集英社
井上純一/著,飯田泰之/監修,2018,『キミのお金はどこに消えるのか』,KADOKAWA
井上純一/著,アル・シャード/企画協力,2019,『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』,KADOKAWA
井上純一(著),アル・シャード(監修),2021,『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』,KADOKAWA
小説
明鏡シスイ,『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,小説家になろう(掲載サイト)
https://ncode.syosetu.com/n9584gd/
2023年5月17日閲覧
明鏡シスイ,tef,2021-(未完),『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,ホビージャパン
小林泰三,1999,『玩具修理者』,角川ホラー文庫(表題作,『酔歩する男』)
小林泰三,2014,『百舌鳥魔先生のアトリエ』,角川ホラー文庫(『ショグゴス』)
小松左京,2006,『日本沈没』,小学館文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ
アイザック・アシモフ/著,小尾芙佐/訳,2004,『われはロボット』,早川書房
星新一,2001,『おーい でてこーい』,講談社(『服を着たゾウ』)
参考文献
切通理作,2000,『怪獣使いと少年』,宝島社文庫