少し小説を

意図せず漏れた溜息に、傍らのその人が顔を上げた。

「何か心配事でも?」
心配しかないよ、これから時代が変わるんだから。
そう言ったら彼は「心配する事ないさ。俺より未来がある君が、なんで心配するんだ」と笑った。
私は自分の未来に心配してるんじゃないんだけど、
これは私の大切な思い出の話。

出会ったのは何年か前の出来事で、私は彼にいわゆる一目惚れをした。
出会ったと言っても大きな蜘蛛の巣の隅っこで。
彼を知ってからというもの、1日の中の7万秒位は彼の事を考えてた。
青い籠の白い鳥が運ぶ呟きを見て、一喜一憂して、毎日楽しかった。
私の人生は全て彼への思いで作られてたのかも。

その1年はあっという間に過ぎて、2年目。
この大地で出会うことが出来た。好きな物の話や1年目の私の心配を話して笑いあった。
いつまでもこの時間が続いて欲しいと願ったけどそうも行かない。
離れた場所に家があると、こうも不自由なのかと不満に思った。
まるで飼い主に不満な室内飼いの猫のようだ。

彼に片思いのまま時は流れた。
そして最初の会話に戻る。
私は自分の未来の心配なんてしない。
ここに貴方が1人で残った後を心配してるのに。
出会った時から私は 好き も 愛してる もずっと言ってきた
いつになったら応えてくれるのだろう。
最後くらい応えてよ。
そう思った矢先小さな声で彼は言う

「俺も好きだよ」
なんで今言うのか聞く。
「あっちに行っても忘れないように」なんて
忘れると思ったのか。
今でもこんな好きなのに。
私は泣きながら窓から彼を見つめている。
地球が小さくなっていく。
地球?あの赤い星だよ。
昔は青かったのに
忘れてしまっていいよこんな話。

もう髄分昔の話だ

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