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Bioluminescence

夏の終わり、自然のおわり

関東では5月中旬から6月中旬が水生蛍の見頃だ。
蛍といえば、成虫が光りながらふわりと飛翔する風景を思い浮かべる人が多いのではなかろうか。
しかし光るのは成虫だけではなく、幼虫や蛹も光る。

日本で蛍というと、里山の小川付近に現れるゲンジボタルと、田や池に現れるヘイケボタルだろう。
いずれも幼虫が淡水に棲む貝を食べ育ち、陸に上がり土の中で蛹になる。
そして梅雨時、あるいは初夏に成虫となり飛び立つのである。

蛍は年々減っている。
餌とする貝、ゲンジボタルであればカワニナ、ヘイケボタルであればタニシが棲む水辺が減っている。
治水や宅地開発のための護岸工事によって蛹となる土手が減っている。
夜空に反射する都市の灯りや街灯や自動車の光によって、コミュニケーションに不可欠な暗い環境が減っている。

こうして撮れるのはいつまでだろうか。
高感度耐性を備えたカメラが発達するのと時を同じくして蛍が減っている。

ゲンジボタルもヘイケボタルも、人里で人間の暮らしの側に棲んでいたはずである。
今でも、郊外の公園や小川に残っているところがある。
しかし、ボランティアによる保護活動に頼って、どちらかというと人為的に残っているところが多いように思う。

公園では家族連れが見に来ることがあり、人里の自然や夏の風物詩を体感することは経験としても素晴らしい。
そういう経験をできる人、した人が、守る人になってくれればと願わずにいられない。
一方で、スマホで撮影しようとする人も多い。
フラッシュ撮影やスマホの画面の明るさが、光害と同じように光によるコミュニケーションを阻害してしまうことを憂慮する。
あなたがそれを残そうとする行為が、それを消し去る行為なのだ。

蛍は成虫になると短命だ。
パートナーを見つけるべく飛び回る間、口にするのは水だけと言われている。
世代から世代へと、自然の美しさを繋ぐべく、命を燃やしているようだ。

飛翔のピーク
Nikon D750 + Carl Zeiss Planar T*1.4 50mm ZF.2
解放F値が明るいレンズで光をぼかす
Nikon D750 + Carl Zeiss Planar T*1.4 50mm ZF.2
灯りを避けてか、藪の奥で光る個体が多い
Nikon D750 + Carl Zeiss Planar T*1.4 50mm ZF.2
運が良ければ頭の上にも
Nikon D750 + Carl Zeiss Planar T*1.4 50mm ZF.2

生物発光

Bioluminescenceという。
体内で化学反応をおこして光が生じる。

蛍は化学反応で生じたエネルギーの9割近くが光として放出される、他に例を見ない様な高効率な発光プロセスを持っているらしい。

発光を獲得し、プロセスを洗練させてきた進化の過程はどんなものだったのだろうか。

遠くへ行きたいのです。サポート頂けたら何か撮ってきます!